個人・法人を問わず、タックス・リターンやビジネス決算、起業支援・相談などをサポートしてくれる会計事務所。特にオーストラリアの会計年度が変わる7月は、頼れる会計士を身近な存在にしておきたい。年々変わる税制や法令は、その都度対応していくことが難しく、知らなかったでは済まされない問題が起こる恐れもあるため、専門家への相談が必要だ。本特集では、オーストラリアを拠点とし日本人会計士が在籍する6つの会計事務所をご紹介。それぞれの会計事務所について、そして専門家として心掛けていることなどをインタビューで聞いた。
イージー・タックス・ソリューションズ
Ezy Tax Solutions
QLD州ケアンズに拠点を置き、豪州国内外に税務・会計サービスを提供する会計事務所「イージー・タックス・ソリューションズ」。同国の税務会計士業界を変えるという強い使命感と共に2013年から業務を開始した同社は、起業家、ビジネスを始め、永住者から学生、ワーホリ・メーカーまでさまざまな利用者から高い評価を受けている。代表・賀谷祥平氏が語るイージー・タックス・ソリューションズの強みとは。
- オーストラリアの税務に特化した高い専門性による事業展開
- ビジネス税務、分かりやすいコンサルティングが強み
- ITシステムも活用した迅速・丁寧・安いサービス
――貴社設立の経緯と経営理念についてお教えください。
元々は2003年にオーストラリアで騎手デビューを果たし、騎手としてレースに出る傍ら趣味のような形で公認会計士の勉強を始めました。その中で会計事務所で働かせて頂く機会があり、多くの会計事務所が会計士の無知の代償としてお客様に時間課金で必要以上に料金を請求しており、更に日本人でなかなか良い公認会計士がいないという現実に直面しました。もっとしっかりした会計士がオーストラリアには必要、何とかしなくてはいけないと思ったことが弊社設立のきっかけです。弊社は、在豪日本人にとってそうした税務・会計上のマイナスな状況を打破することを使命に掲げ、13年に始まりました。
公認会計士として活動を始めた当初は、日本語での情報だけでなく、お客様目線での情報を発信している会計事務所自体が少ない状況でした。気軽に利用できる会計事務所として、もっと多くの人に一見難しそうなオーストラリアの税務やビジネスの情報に身近に触れられる機会を設けたいと考えたことが、弊社の理念となりました。
加えて、弊社はオーストラリアの税務に特化することで高い専門性を維持しながら事業を展開しております。他の専門分野には不必要に手を出しません。これは、オーストラリアの税務会計士業界を変えたいという使命感から来る事業スタイルであって、その使命感に基づいた経営こそ弊社の強みではないかと考えています。
――貴社の組織体制とそれによる利用者側のメリットはどのようになっていますか。
弊社の組織は、2000年にフランスで開催されたフリーダイビング・ワールド・カップで日本代表だった小口彰と競馬騎手である賀谷祥平の2人の正会計士を始めとした、生粋の日本人チームです。弊社では、ダブル・アカウンタント・レビュー・システム(Double Accountant’s Review System)で2人の正会計士が相互チェック、BAS(事業活動報告)エージェントがデータ・チェックなどをバックアップしています。このように個々による担当制を設けず、複数で業務に取り掛かる体制は、業務上のミスを排するだけでなく、作業分担による効率化とサービスの低価格化につながります。
オーストラリアの会計事務所には、1人で経営している所や、有資格者が1人しかおらずジュニア・スタッフなど誰かが行った業務を軽くチェックするだけといった所が多いです。どんなに仕事ができる人であってもヒューマン・エラー、ケアレス・ミスを防ぐことはできません。また、オーストラリアで税理士になることは特に難しいわけではないため、知識量の隔たりが人によって大きいという問題もあります。結果的に、間違った知識のまま業務を行っても修正する人がおらず、何年やっても業務を正しく理解していないという状況が起こりかねませんし、実際にそういう会計事務所もあります。
また、弊社ではクラウドITシステムを採用することで、スタッフがいつ、どこにいてもインターネット環境さえあれば働ける体制を整えており、迅速な対応を可能にしています。真夜中にタックス・リターンを申請して、夜のうちに返信をくれる会計事務所は他にはないでしょう。このクラウドITシステムは事務所でデータを管理するのと違い、弊社のセキュリティー強化にも一役買っています。
――事業に関しては、個人税務並びにビジネス税務、会計業務、起業相談・支援と広くカバーされていると伺っていますが、中でも強みとしている事業分野は何ですか。また取り扱い頻度の高いサービスには何がありますか。
起業家、永住者、学生、駐在員、ワーキング・ホリデー・メーカー、投資家、日本在住の方などから幅広くお問い合わせを頂いております。
税務の全てを専門としていますが、特にビジネス税務を専門にしております。これは、正会計士2人とも会計士、税理士資格だけでなくMBA(Master of Business Administration/経営学修士)保持者ということもあり、ビジネスに関する知識、洞察を使いながら税金だけでなく、俯瞰的な視点を持ってビジネス全体を見ることができるためです。また、顧客の多くがローカルのため、日本人のお客様だけだと出合わない複雑な案件にも対応できます。
ただ、それ以上に弊社の一番の強みは「コンサルティング力」です。会計・税務だけを行える会計士は多いのですが、AIが台頭する時代が訪れると税務・会計業務自体に会計士が必要なくなっていくでしょう。そうした状況になったとしても、人の情熱や分かりやすさの関わってくるコンサルティング力や創造性は、これからの会計士にも必須であるという認識の下、それも強みとしながらサービスを行っております。
――貴社が取得している世界基準の品質管理システム「ISO9001 Quality Management System」(以下、ISO9001)は、提供するサービスにどのような良い効果をもたらしているのでしょうか。
ISO9001については、1年に1回、内部監査(Internal Audit)を行い、毎年同品質管理システムの監査にパスする必要があります。そのため、内部監査やISO9001の監査で指摘される箇所、対策する箇所などが業務改善を助け、内部統制(Internal Control)やお客様に提供するサービスなど、いろいろな面で生かされていきます。
――貴社のサービスに対して、利用者からはどのような評価を受けていますか。
利用者の皆様の声を客観的にお聞ききするべく、弊社のサービスに対する評価に関しては第三者機関にお客様のフィードバック依頼をしており、現在のところ10段階中9.2という高い評価を頂いています。ただ、弊社の方針は「お客様は神様です」ではなく、情報が商品である士業へのリスペクトがない失礼なお客様には業務をお断りさせて頂くこともあり、評価数値が1ということも多くあります。よく頂く評価の言葉としては、「迅速」「分かりやすい」「前の会計士は教えてくれなかった」「丁寧」「安い」などが挙げられます。
――今後利用者のために強化していきたい分野、サービスにおける展望などをお教えください。
今も行っているお客様と我々の双方にとって楽な業務方法を、今後更に強化していくつもりです。
それは、弊社の仕事が減ることでサービス料金も下がる、お客様とのWin-Winの関係を重要視しているからです。何も知らずに自分で間違った方法でタックス・リターン申請などを行い、会計士の作業量が増え、お客様も高い料金を取られるといった悪循環がはびこっているのが、残念ながらオーストラリアにおける税務・会計の実情です。そのため、弊社ではお客様にアドバイスし、先回りして間違いを防ぐ対策を取ることでお互いの手間を減らすことを目指しております。
また、日本人会計事務所様など協力して頂ける方がいましたら待望論の多い他都市での支店開設、シドニーやメルボルンなど他都市への訪問、セミナーの機会を増やすことが今後の展望でしょうか。そうして、オーストラリア各地の日系社会に住む皆様の力になれたらと思っています。
Ezy Tax Solutions Pty. Ltd.
■Web: www.ezytaxonline.com.au、www.ezytaxsolutions.com.au