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オーストラリアの裁判手続き – 身近な法律問題

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法律は何となく難しいもの――そう思ってはいませんか?しかし法律は私たちの日常生活と切っても切り離せないもの。このコラムでは毎月、身の回りで起こるさまざまな出来事を取り上げ、弁護士が分かりやすく解説を行います。

第47回:オーストラリアの裁判手続き

「宣誓供述書(Affidavit Statutory Declaration)」とは

通常、オーストラリアの裁判手続では「Affidavit」と呼ばれる書類の作成が必要になりますが、日本では馴染みのない手続きになるため、クライアントからAffidavitのプロセスについて質問されることがよくあります。

Affidavitとは、インターネットで検索すると“宣誓供述書”と訳されることが多く、かく言う私も宣誓供述書という単語を用いているのですが、その漢字の意味が示すよう署名者が自身の供述内容について宣誓している書類のことを言います。

裁判では訴状や答弁書、申請書などの書類を提出しますが、その際に当事者の主張のベースとなる書類として宣誓供述書を提出します。この宣誓供述書はクライアント本人が内容を確認し、供述内容について真実であることを宣誓した書類を裁判所に証拠として提出することになります。

この宣誓のプロセスについては、ハリウッド映画の裁判などで出てくる聖書の上に片手を置いて、神に誓って嘘偽りがないことを確認するプロセスをイメージして頂くと分かりやすいでしょう。日本の裁判でも、証人が証言する際には「良心に従って、真実を述べ、何事も隠さず、偽りを述べない」ことを誓いますが、オーストラリアではAffidavitの作成段階でもこのプロセスを行います。

ちなみに、参考までにオーストラリアの宣誓時に用いられる一般的なフレーズは以下の通りです。“I swear that the evidence that I shall give, shall be the truth, the whole truth and nothing but the truth, so help me God.”

オーストラリアの裁判所における宣誓は欧米のシステムを踏襲しており、宗教が日常生活で大きなウエイトを占めていた時代の名残から「神に誓って真実を述べることを約束する」という宗教的な契約の形となっていますが、それくらい正式かつ厳かで重い取り決めだということです。

なお、聖書を読んだことのない人や、無宗教の人が神に誓って真実であることを約束すると言っても、そこに合理性は感じられない点はオーストラリアの裁判所も理解しており、近年ではイスラム教の方はコーランに従ってアッラーに誓い、無宗教の人は神に誓うのではなく裁判所に誓うシステムになっています。

このようにAffidavitは厳格な意味を持つ書類ですので、当然ながらAffidavitの不正には厳格なペナルティーが定められており、Affidavitを作成する際は内容が真実であることを確認の上で署名する必要があります。詳しくは下記URLをご参照ください。

■Affidavitについて
Web: kklaw.com.au/archives/affidavit.html


弁護士:神林佳吾
(神林佳吾法律事務所代表)

1980年東京生まれ。95年渡豪、2004年クイーンズランド大学経営学部・法学部、同大学大学院司法修習課程修了後、弁護士登録。以後14年以上にわたって訴訟を中心に応対

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