第4回 為替はどうして動くの?(その2)
前回は長期的な為替の値動きに影響を与える要素についてお話をしました。今回は、短期・中期的な市場変動をもたらす要因について見てみましょう。
為替市場では、輸出入業者や海外旅行者など、支払いのために外貨を両替する参加者と、価格の変動から利益を得ることを目的に外貨を売り買いしている参加者がいます。後者は、主に銀行・証券会社などの機関投資家やFXをする個人トレーダーたちですが、市場での取引の大半は彼らによるものです。
これらのプレーヤーは短期で利益(あるいは損失)を確定させることが多いため、ニュースなどのイベントに反応して短期的に市場を動かします。それでは、どのようなイベントが相場に影響を与えるのかを見てみましょう。
- 経済のニュース
テレビや新聞、インターネットなどのメディアでは、経済の動きを毎日ニュースとして伝えています。経済ニュースの中でも、特に景気を伝えるニュースに為替は敏感に反応します。失業率、インフレ動向、GDP成長率のニュースが代表的なものです。また、銀行の貸出金利の元となる政策金利に関するニュースも短期的に為替に影響を与えます。例えば、政策金利を決定する中央銀行の総裁が将来の景気に悲観的な発言をしたというニュースが市場に伝わると、将来の金利の引き下げが予想され、その通貨が売られることがあります。
- 地政学上のニュース
これは特定の地域で発生した、政治的、軍事的あるいは社会的な問題を扱ったニュースを言います。現在であれば、米国と中国の貿易摩擦、英国のEU離脱問題が市場が注目する主な地政学リスクとなっています。これらの問題の進展がニュースで伝わると為替は敏感に反応する傾向にあります。
- 他の市場の動き
株式市場、金や原油などの商品市場、金利市場など他の市場の動向が為替相場に影響を与えます。例えば、豪ドルはその産業構造から資源通貨と市場に見られており、原油価格の影響を受けることがよく観察されています。
ニュースが相場を突発的に動かす場合、たいていは時間の経過と共に相場はある程度元に戻りますが、それが中長期的な方向性に影響を与える場合もあります。
KVB Global Markets
取締役日本部門ヘッドチーフFXカスタマー・ディーラー
山田悟