2020年へ向けて不動産動向を先読みする
不動産 in QLD
ゴールドコースト編
人口増加に伴い高騰してしまったシドニーやメルボルンの不動産価格と比較すると、ゴールドコーストの不動産は、まだまだ値ごろ感があり、暮らしやすい気候とウォーター・フロントや海に近い魅力的な環境も相まって、海外やクイーンズランド州内外からのバイヤーを呼び込んでいる。しかし、世界経済の停滞に付する海外資本の撤退などで、建設中止などのネガテイブな面があることも隠せない。そこで、不動産売買のプロの意見を基に、現在の不動産状況を把握しながら、2020年に向けてのチャンスをモノにするための知識とその展望を探る。
取材協力・記事監修:OPIC 海外不動産情報センター代表取締役 髙田裕司氏
物件購入までの手順と役立つ不動産用語
では実際にバイヤーの物件探しから決算(セトルメント)までの一連の流れを見てみよう。ローンを組むと仮定した場合の主な手順は次の通りである。実際に見聞きする不動産売買の専門用語は難しく、少しでもスムーズにセトルメントを迎えるための役立つ用語解説も下記にまとめている。
注目のエリアとお薦め物件
ゴールドコーストで注目のエリアは、ブロードビーチから南へ下るビーチ沿いのエリアだ。中でも洒落たレストランやカフェが多いマーメイド・ビーチやパーム・ビーチは、ここ数年開発が盛んに進んでいる。南北に通じる国道2号線が通り、高速道路やゴールドコーストの出入口となるクーランガッタ国際空港からも近い利便性が買われ、ローカルのバイヤーから人気が高いエリアだ。物件は強気の価格設定で、戸数が比較的少ない中層分譲物件が多いが、1フロアに1~2世帯の好立地・高級小型物件も増えている。また、サウスポートから北へ上がるトラム沿線エリアも、交通の便が良く学校、病院などの公共施設も充実しているため、今後有望とされているエリアだ。
海外もしくは他州からのバイヤーへのお薦め投資物件としては、ブロードビーチにあるスター・カジノ&ホテルに建設中の2本目のタワー「EPSILONザ・スターレジデンス」で、現在販売中である。低層階はホテル仕様、20~63階までが住居用で1ベッドルームから3ベッドルームまでの設定がある。FIRB承認済みで価格帯は50万ドルから1.8ミリオン・ドルで売られている。ホテル付帯のカジノ、エンターテインメント、レストランはもちろん、巨大ショッピング・センターやブロードビーチにも至近距離なので、豪華なリゾート・ライフを実現できる物件だ。海外からのバイヤーはもちろん、意外にも国内からのバイヤーも多いという。
その他のお薦め物件は、ラブラドールに建設中の「MARINE QUARTER」。ブロード・ウォーターを見渡せる絶景を望める公園内に立地し、リゾート設備を完備した28階建て1フロア4~5戸で構成されている。若干トラムの駅から離れるが、オーシャン・ビューで82㎡の2ベッドが50万ドル台、140㎡の3ベッドが1.3ミリオン・ドルからと抑えた価格設定になっている。
不動産購入の好材料がそろい追い風が吹いている今、5~10年後を見据えて、2020年は不動産購入を検討するベスト・タイミングと言えるかもしれない。
参考サイト
■Australian Bureau of Statistics: abs.gov.au/ausstats/abs@.nsf/Latestproducts/3101.0Main%20Features2Mar%202019?opendocument&tabname=Summary&prodno=3101.0&issue=Mar%202019&num=&view
■Core Logic Home Value Index (ABC News): abc.net.au/news/2019-11-01/house-price-rebound-accelerates-in-october/11661400
■Foreign Investment Review Board: firb.gov.au/residential-real-estate
■Australian Taxation Office: ato.gov.au/General/Foreign-investment-in-Australia/Annual-vacancy-fee
■物件購入までの主な流れ
1.リサーチ/情報収集
どの場所にどんな物件を購入するか、ローンの種類やどの金融機関で選ぶか、契約に当たっての弁護士、家屋査定をどの業者へ依頼するかなど、情報を集め検討する。
2.プレ・アプルーバル準備
いくら借り入れることができて、いくら支払いをしていくのか、ローンを組むための事前の仮審査を行う
3.物件探し/バイヤーズ・エージェント
インターネットなどを使って探し、オープン・ハウスに積極的に参加する。バイヤーズ・エージェントを利用する場合、希望する条件を伝え物件を紹介してもらう。
4.交渉
購入依頼のオファーを出して値段交渉や買い主側の条件を提示する。
5.契約準備
弁護士を選任する。交渉が成立すると売り主と買い主の弁護士が契約条件を確認して内容を詰める。
6.契約
条件付きの購入契約書を交わし、手付金を支払う。この契約日からセトルメントまで通常1~2カ月かかる。
7.ローンの申請
モーゲージ・ブローカーや銀行へローンの申請を行い、家屋査定が行われ融資額が決定する。
8.インスペクション/プレ・セトルメント
専門業者に依頼して、建物の不具合や問題、白アリの被害がないかをチェックする。
9.セトルメント
物件に不具合がなく、ローンの手続きも問題なければ、残りの金額を弁護士の信託口座へ振り込み決済を行う。弁護士により物件の所有権が売主から買主に譲渡され、後日、登記変更手続きが完了する。
10.引渡し
決済が完了して、物件と鍵が引き渡される。
セトルメントまでに役立つ用語解説
不動産売り主のこと。
ローンを借り入れる予定の場合に、金融機関からいくら借り入れることが可能かどうかの指標を示すもので金融機関が発行する。収入や生活費など経済状態を証明する証拠書類が必要となる。3カ月間のみ効力を持ち、その額を借りることができるという保障はない。
契約を結ぶ前に、購入したい物件について、さまざまな方向から事前の調査を行うこと。
不動産の価値を査定すること。資格を持ったバリュアー(Valuer)不動産鑑定士が執り行う。
物件購入を決定する前に、資格を持った専門の調査士へ依頼して、物件の構造上の問題や白アリ、水漏れなどの欠陥がないかの調査をすること。
売主が物件の所有権を持っているかどうか、物件に法的制限が掛かっていないかなどの確認を行うためのもの。弁護士およびコンベイアンサーに依頼する。
不動産売買に関わる、法律の手続きから不動産代金の受け渡し、最終のセトルメントまで代理人として契約の手続きを行う人。弁護士も同様の仕事を受け持つが、費用が弁護士よりも安い。
買い手側が条件付きで物件の購入希望を申し出ること。売り手がこの条件を了承した時点で、条件に沿って購入を進めることができる。
いったん売買契約書にサインをした後でも、キャンセルできる数日の期間。契約書内容や州によって規定が異なる。オークションの場合はクーリング・オフはない。
クーリング・オフの期間後に契約が執行されるため、もしもローンが組めなかったなどファイナンスが成立しなかった場合に備えて、ファイナンスの条件を契約書に盛り込むことを指す。
売買契約書。購入価格やセトルメントの日時、クーリング・オフや修理必要箇所、確約されている設備や物件の備品などが明記されている。内容を見直したり用語を理解するために弁護士などに依頼することが望ましい。
不動産の所在地、所有権を証明する法的書類。物件の引渡しの際に必要とされる。