第6回 為替相場は予想できる?
為替市場の値動きを予想するのは、他の市場と比べても大変難しいと言われています。最新のAI技術を用いても、影響する要素があまりに多過ぎるため正確に予測するのは困難だと考えられています。
ニュースを見ると、金融機関のアナリストやストラテジストと呼ばれる人たちが将来の市場の値動きを予想していますが、常に正確に言い当てているわけではありません。一方で、FX(外国為替証拠金取引)でコンスタントに利益を上げ、それで生活している個人投資家も数多くいます。では、このような個人投資家は、金融機関のアナリストよりも予想能力に優れているのでしょうか。
実は、アナリストと個人投資家では見ている値動きの期間が異なります。一般的に、アナリストが数カ月以上の中長期の予想をする一方、個人投資家は数分から数日という極めて短期の為替を予想してトレードをしています。長期になればなるほど、不確定要素が増えるため当然予測は難しくなります。中長期の為替の値動きを予想する場合、金利やインフレ率、失業率などの経済の状態を示すデータ(ファンダメンタルズ)が重視されます。このようなデータを基に市場を分析することをファンダメンタル分析と言います。
一方、個人トレーダーは為替の値動きそのものを重視します。過去から現在までの値動きをチャートと呼ばれるグラフにしたものを利用して為替の値動きを分析します。例えば、今は上昇しているけれど、以前この価格に到達すると下落し始めたので、今度もこの辺りで下落に転じるだろうという予想をします。これをテクニカル分析と呼びます。
特に値動きに影響を与えるようなニュースがなく相場が静かな日でも、トレーダーたちはわずかな値動きを狙って取引をしています。数カ月の値動きを示したチャートで見るとほとんど動きがないように見える日でも、拡大鏡で見るようにその日の値動きだけを分刻みに細かく示したチャートで見てみると、価格がジグザグに動いていることが分かります。
ここで見られる値動きは、ファンダメンタルズではなく、トレーダーたちの思惑を反映したものとなります。つまり、ここから価格が上がると予想するトレーダーと下がると予想するトレーダーの攻防が読み取れるのです。
KVB Global Markets
取締役日本部門ヘッドチーフFXカスタマー・ディーラー
山田悟