10月0.6%増 市場予測上回る
オーストラリアではここにきて、物価高と高金利による生活費高騰で伸び悩んでいた個人消費に底打ち感が出ている。インフレの沈静化と所得税減税第3弾(7月施行)で消費者の懐が暖かくなり、1年で一番支出が活発になるクリスマスに向けて、財布の紐を緩めているようだ。
オーストラリア統計局(ABS)が2日発表したところによると、10月の小売売上高は367億270万豪ドル(季節調整済み=約3兆6,000億円)と前月比で0.6%増加し、市場予測の0.4%(ロイター通信)を上回った。8月(0.7%増)、9月(0.1%増)に続いて3カ月連続のプラスとなった。前年同月比では3.4%増だった。
小売売上高は、国内総生産(GDP)の約半分を占める個人消費を示す景気指標の1つ。消費が堅調に推移していることが確認されたことで、中央銀行の豪準備銀(RBA)の利下げがさらに遠のいたとの見方が出ている。
公共放送ABC(電子版)によると、オーストラリアの資産運用会社「IFMインベスターズ」のアレックス・ジョイナー首席エコノミストは、X(旧ツイッター)に「小売売上高は年間で人口成長率を上回るペースで増加している」と指摘した。
オーストラリアでは人口増を上回るスピードで成長しなければ、1人当たりの伸びは実質的にマイナスとなる。ABSによると、コロナ禍後の移民急増を背景に、人口増加率は23年12月末時点で前年比2.45%増、今年3月末時点で同2.32%と歴史的な高水準を記録している。
その上でジョイナー氏は「労働市場が比較的タイト(労働需要が供給に対してひっ迫している様子)な中でこの傾向が続けば、RBAはインフレ上昇を懸念して利下げを先延ばしするだろう」と述べた。
ロイター通信によると、4大銀行の1つ「ナショナル・オーストラリア銀」(NAB)のエコノミスト、タパス・ストリックランド氏も「(消費の)下振れリスクは明らかに軽減された。サービス部門のインフレが高すぎる局面で、RBAが利下げを急がないとの見通しが強まった」と指摘した。
RBAは23年11月以降の1年間、政策金利を4.35%で据え置いている。日本を除く世界の主要国の中銀は金融緩和に傾いているが、オーストラリアは雇用が力強く景気も底堅いため、早期利下げに慎重な姿勢だ。ロイターによると、RBAが12月9〜10日の年内最後の会合で利下げに踏み切る可能性はほぼゼロとなった。利下げ開始は、来年最初の会合が開かれる2月の可能性も低まり、「来年5月以降」が市場のコンセンサスとなっている。
■ソース
“Retail sales rise for third straight month” Media Release(ABS)
Australia’s retail sales firm for 3 months as consumer mood brightens(Reuters)
Retail sales improvement may stifle RBA’s ability to cut rates(ABC News)