クイーンズランド州の食肉処理場2カ所解禁
オーストラリア連邦政府は3日、中国がオーストラリア産牛肉に対する輸入規制を完全に撤廃したと発表した。中国が最後まで輸入を禁止していた食肉処理場2カ所からの出荷を解禁した。これで、主なオーストラリア産品に対して中国が課してきた経済制裁は約4年ぶりに終了した。
オーストラリアのスコット・モリソン首相(当時)は2020年、新型コロナウイルスの発生源に関する独立調査を行うよう中国政府に要求。中国側はこれに激しく反発し、石炭や牛肉、大麦、ワイン、イセエビなど8品目のオーストラリア産一次産品に高関税をかけたり、通関を停止したりした。「オーストラリアいじめ」とも揶揄された事実上の経済制裁だった。
しかし、オーストラリアの政権交代(22年)を機に豪中関係の緊張が緩和したのに伴い、中国はこれまでに石炭、大麦、ワイン、イセエビなどの輸入を再開してきた。牛肉については5月に8カ所の食肉処理場からの輸入禁止を解除。制裁対象は北東部クイーンズランド州にある食肉処理場2カ所が残るのみとなっていた。
対オーストラリア経済制裁は失敗
中国はオーストラリア産の鉄鉱石など自国の経済成長に不可欠な商品は輸入を継続しつつ、輸入先を他国・地域に振り替えることが可能な8品目を戦略的に選び、制裁対象とした。ただ、コロナ禍後のインフレや資源価格の高騰を背景に、オーストラリアからの対中輸出額はむしろ伸びた。中国への依存度が高かったワインやイセエビは確かに影響を受けたが、オーストラリア経済全体への打撃は軽微で、中国の狙いは失敗に終わった格好だ。
連邦政府によると、オーストラリア産牛肉の対中輸出額(2023-24年度)は約22億豪ドルに達した。中国は1位米国に次いで2番目に大きい牛肉の輸出市場となっており、輸入規制の完全解除でさらに追い風を受ける見通しだ。
アンソニー・アルバニージー首相は声明で「オーストラリアの輸出業者や生産者にとって素晴らしいニュースだ。(22年の選挙で)私たち(労働党)が勝利して以来の(対中)貿易の正常化に向けた働きかけが実を結んだ」と成果を強調した。
■ソース
Final Chinese trade impediments on red meat establishments lifted(Prime Minister of Australia)