政界こぼれ話人物編 その230
ザリー・ステガール連邦下院議員
Zali Steggall
無所属のザリー・ステガール(Zali Steggall)連邦下院議員は1974年4月16日にシドニーのマンリーで誕生している(45歳)。父親は事務弁護士で母親は医師という、富裕な家庭であった。しかもスポーツ一家でもあり、父方の祖父はラグビー・ユニオンの豪州代表に選ばれ、父親の方もラグビー・リーグで相当なレベルに達していたし、また兄はスノーボードの冬季オリンピック代表選手であった。
一家はステガールが幼少のころから10年間ほど、フランスに居住している。そこでステガールはスキーに夢中となり、当地のジュニア大会で優秀な成績を収めている。スキー競技への情熱は豪州への帰国後も続き、弱冠17歳の時に豪州代表として冬季オリンピックに出場。結局、連続4大会にわたって代表となっている。しかも98年の長野オリンピックでは、回転滑降競技で銅メダルに、翌年の世界選手権では見事金メダルに輝いている。ちなみにステガールは、冬季オリンピックの個人競技でメダルを獲得した初の豪州選手である。
スキー競技界からは2002年に引退したが、競技生活を続けながらグリフィス大学よりコミュニケーション・メディア学科の学士号を、その後法学士号も取得して、家族問題やスポーツ分野を専門とする法廷弁護士となっている。政界入りは19年5月の連邦選挙で、地元マンリーのワリンガ下院選挙区から無所属候補として出馬し、初当選を果たしている。
ステガールは新人議員で、しかも大政党に属していない、いわゆる「クロス・ベンチャー」に過ぎないわけだが、そのステガールが注目されたのには2つの理由がある。まず上述したように、ステガールが冬季オリンピックのヒロインであったことだ。しかも単に有名なだけの「タレント」候補ではなく、知性も備えた文武両道型の人物であることも大きい。ただ、より大きな理由は、出馬したワリンガ選挙区が、1922年に創設されて以降、一貫して保守党が保持していた選挙区であったこと、さらに94年以降に連続して保持していたのが、自由党のアボット元首相であったからだ。新人で無所属のステガールが、大政党の超大物である現役政治家を破ったのである。
思想、信条だが、自由党内でも強硬右派であったアボットとは対極に位置し、ステガールは極めて進歩的な人物である。とりわけ関心を抱いているのは地球温暖化問題で、19年選挙でも同問題を前面に掲げて、「隠れ懐疑派」のアボットを徹底的に攻撃し、これが相当な効果を上げている。人柄だが、弁は立つし、また頂点を極めたスポーツ選手であっただけに、ステガールには「華」があると言える。同じくオリンピック選手であった前夫との間に2人の男の子がいる。両者共に再婚しているが、残念ながら両夫婦間の関係は相当に緊張したものである。