CBDから西方へ約4キロと、市内中心部から比較的近距離に位置するサバーブであるニュータウン。少し古めいたビンテージかつ独特な雰囲気を持つその街には、食、アート、音楽といったエンターテインメントなどさまざまな文化が共存する。多面的な魅力を持つ同地について紹介する。(文=山内亮治)
セントラル駅から西方へ約4キロとCBDから比較的近距離に位置するニュータウン(Newtown)。東西にわたって約2キロほど伸びるキング・ストリートを中心に、そこから支流のように枝分かれするエンモア・ロードと併せそれらの通り沿いには食やアートなど600以上ものさまざまな種類の店舗が軒を連ね、映画館、劇場といった施設も立ち並ぶ。多種多様な文化がビンテージな雰囲気の中に共存する光景は、CBDと比べるとまさに異空間だ。
同地における人びとの本格的な定住が始まったのは19世紀初期。街の名前は、1832年にジョン、マーガレット・ウェブスター夫妻が開いた食料雑貨店の店名「ニュー・タウン・ストア」に由来する。世界恐慌で地域の発展は一度大きく衰退するが、戦後、住宅価格が市内と比べ相対的に低かったことからヨーロッパ系の移民が移り住み始めると、街は大きな変貌を遂げた。
1960年代から70年代にかけては、シドニー大学の敷地の拡大やヒッピー文化の繁栄を機に、同地は学生街となっただけでなく、“ボヘミアンの中心地”としての名声も得た。特に、自然への回帰に価値を置くヒッピー文化によって栄えた街ということもあってか、今なおナチュラル志向の人がこの地には多いとされる。その代表的存在が、71年より営業を続けるオーガニック・ショップ「ドクター・アース(Dr. Earth)」だ。
こうしたオーガニックにも関連し、街の特徴を端的に表すキーワードに挙げられるのが、やはり「食」だ。キング・ストリートは別名「イート・ストリート(Eat Street)」と呼ばれるほど、多国籍なレストラン、パブ、カフェが立ち並ぶ。次ページで取り上げた店舗も参考に同地における食の旅を楽しんでみてはどうだろう。
アート、音楽といったカルチャーもニュータウンを楽しむ上で欠かせない存在。表通りだけでなく裏通りにも無数にあるグラフィティーは、それらを見るだけでもこの街に来る者を飽きさせない。また、オーストラリアを代表するロック・バンド「AC/DC」生誕の地でもあるニュータウンは音楽の街としての一面も持つ。ボブ・ディランやローリング・ストーンズなど数々の大物アーティストが公演した「エンモア・シアター」もあるため、音楽からこの街を知っていくというアプローチも面白いかもしれない。
アクセス:【電車】最寄り駅はニュータウン駅。セントラル駅から3駅(7~8分)【バス】CBDからシドニー・バスのルート番号422(コガラ方面)、423(キングスグローブ方面)、426(マリックビル方面)、428(ブロートン方面)
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アズキ・ベーカリー
Japanese Artisan Bakery AZUKI
数量限定! クリスマス・ケーキの予約受付中
2017年9月、ニュータウンにオープンした「アズキ・ベーカリー」では、昨年も大好評を博したクリスマス・ケーキの予約が既に始まっている。イチゴ、抹茶、チョコレートから選ぶことができ、サイズも直径15cm($50)、18cm($57)、21cm($64)の3種類が取りそろえられている。パティシエ歴10年のゆみさんが作る同店のケーキは、しっとりしたソフトなスポンジに甘さ控えめのクリーム、そして可愛らしい見た目が特徴で、日本人のみならず、さまざまな国の人たちからも支持されている。ケーキは数量限定のため、早めの予約をお勧めする。
職人歴18年の店主が作るパンも見逃せない! カレーパンやメロンパン、明太子フランスなど日本発のパンから、本格的なクロワッサン、チャコール・セサミのサワードウなどの欧風パンが多数そろっている。
■住所:Shop3, 63-71 Enmore Rd., Newtown
■Tel: (02)8542-9317
■Web: www.azukibakery.com.au
■営業時間:水~日9AM~7PM、月・火休
■クリスマス営業時間:12月24日(月)9AM~5PM、25日(火)9AM~3PM、26(水)~2019年1月11日(金)まで休、1月12日(土)から通常営業
■Email: azuki.bakery@gmail.com
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ティー・トータラー
T TOTALER
LOVE LOCAL LOVE LOOSE LEAF TEA
同店は2012年、シドニーでアンバーとポール夫妻よって設立された。彼らは30カ国以上のお茶を研究し、現在はオーストラリア産にこだわった商品を提供している。ニュータウンとシティーに2店舗構え、店内はとてもお洒落で、ディスプレイされている何十種類ものオーストラリア産茶葉を見ることができる。中でもティー・ホット・チョコレートが人気で、香り豊かなフレンチ・アールグレイ茶葉とダーク・カカオ、低G.Iココナツ砂糖で作られているという。体に良く、視覚でも楽しめる1杯をぜひ飲みに行ってみてはいかがだろうか。
■住所:【ニュータウン店】555a King St., Newtow、【シティー店】26a, Ground Level, The Galeries, 500 George St.,Sydney
■Tel: (02)9221-1627
■営業日時:【ニュータウン店】土・日11AM~5PM、【シティー店】月~水・金8:30AM~6PM、木8:30AM~7:30PM、土10AM~6PM、日11AM~5PM
■Web: www.ttotalertea.com
■Email: brewing@ttotalertea.com
■利用可能カード:VISA、MASTER、AMEX、EFTPOS
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ザ・パイ・ティン
The Pie Tin
新鮮素材を使用した手作りパイの専門店
同店のこだわりは、豊富な種類のパイを毎日店内で手作りすること。手作りのパイには新鮮な材料が用られていて、1つひとつ丁寧に焼かれている。オレオ・クッキー・パイやクリーム・パイ、家庭風アメリカン・スイート・パンプキン・パイやホイップ・ライム・パイなど、多くのデザート・パイがショーケースに並べられ、訪れる客をわくわくさせる。また、デザート・パイだけでなく、クラシックなミート・パイや牛肉のブリスケット、バター・チキン、ほんのり甘いローストダック・パイなどが日替わりで登場。多種多様なパイの中から、お気に入りを見つけよう。
■住所:1A Brown St., Newtown
■Tel: (02)9519-7880
■Web: www.thepietin.com.au
■Email: cafe@thepietin.com.au
■営業日時:月~水10AM~8PM、木~土10AM~10PM、日11AM~6PM
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レンティル・アズ・エニシング
Lentil As Anything
おいしく社会貢献ができるレストラン
メルボルンにも3店舗を構える全品日替わりによるビーガン・メニューを提供するレストラン。同店の他のレストランとの最大の違いは、提供される料理・飲み物に値段が設定されていないこと。長期失業者や求職者、ボート・ピープル難民などの社会的弱者への支援を目的に、客の任意による金額を寄付する、または店でボランティアとして働くことで飲食代を賄う仕組みとなっている。まさに、おいしく社会貢献ができるレストランと言えるだろう。また、同店では毎月開催される瞑想や詩の朗読会といったイベントも楽しむことができる。
■住所:391 King St., Newtown
■Tel: (02)8283-5580
■Web: www.lentilasanything.com/newton
■Email: sydmanager@lentilasanything.com
■営業時間:【ブランチ】土・日10AM~3PM、【ランチ】毎日10AM~3PM、【ディナー】毎日6PM~9PM
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1989アーケード・バー
1989 Arcade Bar
お酒と共にレトロなゲームを楽しもう
キング・ストリート沿い、シドニー大学至近に位置する同店は、店名にある通り、十数年以上も前の「アーケード・ゲーム」(業務用ゲーム機)が多数設置された昔懐かしい雰囲気を感じさせるバー&レストラン。店内に足を踏み入れると、過去にタイムスリップしたような不思議な感覚を味わえるだろう。業務用ゲーム機以外にも、テレビ・ゲームやボード・ゲームも用意されており、不定期ではあるがゲーム・トーナメントといったイベントが開催されることも。新たな遊び仲間との出会いなども期待しながら同店に足を運んでみてはどうだろう。
■住所:22 King St., Newtown
■Tel: (02)9516-5581
■Web: 1989.com.au
■Email: hey@1989.com.au
■営業時間:月~水・日5PM~11PM、木~土5PM~0AM
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ライジング・サン・ワークショップ
Rising Sun Workshop
バイク好きオーナーの異色のレストラン
バイク好きのオーナーが、2016年にオープンさせたバイクのワークショップ・スペースにカフェ・スタイルのレストランを併設したユニークなコンセプトのカフェ・レストラン。昨今、ランチ・タイムに提供されるラーメンが日本人の間で話題に上り、その味を求めるリピーターが多いという。ランチ以外にも、ディナーには日本食を始め世界各国のテイストを積極的に取り入れたメニューが並ぶ。また、オーナーが厳選し提供するクラフト・ビールなど魅力的なドリンクも用意されている。バラエティー溢れるメニューをお酒と共に楽しんでみてはどうだろう。
■住所:1c Whateley St., Newtown
■Tel: (02)9500-3891
■Web: www.risingsunworkshop.com
■営業時間:【カフェ】毎日8AM~4PM、【アフタヌーン・ディナー】水~土4PM~10PM
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ヤング・ヘンリーズ
Young Henrys
サバーブが誇るブリュワリー
ニュータウン駅からエンモア・ロードを西方へ10分ほど進んだ所に位置する、サバーブ名を冠したビール「ヤング・ヘンリーズ・ニュータウナー」でおなじみのビール醸造所。同所内にはバー・スペースも用意され、常時6~8種類のビール及びサイダーがフレッシュな状態で楽しめる。また、週末にはフード屋台がバーに併設される形で出店しているため、プレートやラップ系のランチをビールと共に楽しむといった過ごし方も良いだろう。同所は、週末の午後は特に混雑するため、店内テーブル席を確保するには早めに行くことをお勧めする。
■住所:76 Wilford St., Newtown
■Tel: (02)9519-0048
■Web: www.younghenrys.com/tasting-bar/newtown
■営業時間:毎日12PM~7PM