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世界最大級のLGBTQIA+イベント「シドニー・マルディグラ」に日本人2団体が参加─日本の大学生が潜入インタビュー!

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インタビューに応じてくれた「ジェンダー・フリー・ジャパニーズ」と「NPO法人カラフルチェンジラボ」の皆さん(撮影:日豪プレス)

 2月25日、シドニーのオックスフォード・ストリートで行われた世界最大規模のLGBTQIA+の祭典、マルディグラ・パレード。45周年を迎えた同イベントだが、新型コロナウイルスの影響により街頭でのパレードの開催は3年ぶりとなった。そして今回、イベント史上2度目、そして100人と最大規模の日本人団体の参加がかなった。日本人団体として参加した「ジェンダー・フリー・ジャパニーズ」の山田綾香さん、山田晃暉さん、「NPO法人カラフルチェンジラボ」の三浦暢久さん、妹尾太一さんに日豪プレスのインターンシップ・プログラムに参加している大学生3人が話を伺った。

(取材:鈴木新世、森重佳菜、山内岳登)

ジェンダー・フリー・ジャパニーズ

 ジェンダー・フリー・ジャパニーズは、FTM(Female to Male)というトランスジェンダーの山田晃暉(こうき)さんとストレート女性の山田綾香さんカップルが代表を務める団体で、オーストラリアを拠点に活動している。日本で同性婚が認められ、誰もが結婚できる世界になって欲しいという思いから立ち上げたという。

 今回2度目のパレード参加となった同団体は、3年前に初めてマルディグラ・パレードを見た際に、街が一体となって行われていたことに感動したことをきっかけに発足。日本人としての初参加を果たした。綾香さんは「日本には排他的な考えを持つ人が多いことから、多様性が認められにくい風潮がある一方、オーストラリアでは『個性的で良いね』と言われたり、逆に何も言われないなど、良い意味でも悪い意味でも気にしないですね」と語る。日豪間における多様性を受け入れる姿勢の違いが顕著に表れていると考えているそうだ。

 晃暉さんは「僕は生物学上は女性として生まれましたが、男性の性別を選びました。日本では、手術をすれば戸籍上の性別を変えられるため、カミングアウトしなくても良い環境の中、男性として働いていました。そんな中、彼女がずっとオーストラリアに来たいと言っていたこともあり、ワーキング・ホリデーで一緒に来ました。マルディグラを見たり、いろいろな人と関わることによって、僕の中の価値観がどんどん変わり、今ではオープンにして、こうしてマルディグラに日本人フロートを立ち上げるまでに至りました。僕みたいに、マルディグラによって影響を受ける人はたくさんいると思います。そのような人々が増えていったらいいなと思います」と話す。

「隣で彼を見てきましたが、日本にいる時の彼と、こっちに来てからの彼は全然違います。今はすごく輝いているんです」と綾香さんは涙ぐみながら口にする。

 今後も活動を通じて、LGBTQIA+を身近に感じ理解して支援してくれる人を増やしたいと考える同団体。

「1人ひとりの個性を否定するのではなく、尊重する考え方を広めていきたい」(綾香さん)

 最後にそう意気込みを語ってくれた。

©︎toboji. com

パレードに参加したジェンダー・フリー・ジャパニーズの皆さん

NPO法人カラフルチェンジラボ

 NPO法人カラフルチェンジラボは、主にLGBTQIA+のカップルが幸せになれる環境を目指し、福岡県福岡市で啓発活動や企業研修を行っている団体で、「九州レインボープライド」という福岡市の博多~天神間を歩くパレードも主催している。

 2019年にシドニー・ゲイ・アンド・レズビアン合唱団と交流した際、シドニー・マルディグラについて知り、同年から2年連続で現地でパレードを観覧。その後参加を希望したが、直後にコロナ禍に突入してしまい、タイミングを逃してしまうが、今年シドニーの街頭でのパレードが復活するとの情報を得て参加を決意したそうだ。

日本とオーストラリアの考え方の違いとそれがもたらす法改正への影響

「日本で同性婚を認める法改正が施行されない要因として、同性間のカップルへの認識が極端に欠けていることが最も大きい」と話す三浦暢久さんは話す。三浦さんは30歳の時にゲイであることを隠さず生きることを決めカミングアウトをした同団体の理事だ。

 日本国憲法第二十四条第一項で「婚姻は、両性の合意のみに基づいて成立し、夫婦が同等の権利を有することを基本として、相互の協力により、維持されなければならない」と規定されているように、同性間のカップルを家族としてみなさないという事実、そしてそれを良しとする雰囲気が日本にはまだ強く残っているという。

 三浦さんには、今年で13年目を迎える同性のパートナーがいるが、同性婚が認められていない現在、老後など今後の人生に不安も付きまとうという。

「オーストラリアには先住民のアボリジニがいることや、移民国家であることから、さまざまなマイノリティーを受け入れ尊重し、多様性を重んじる文化が強い傾向にあります。対して日本は単一民族であるがゆえ、同一性を重んじる傾向があると思います」(三浦さん)

 日本固有の伝統や文化を守り続けている要因の1つにその国民性があることは事実だろうが、同性婚問題をはじめ、個人の幸せや自由という面に目を向けると、それは必ずしも良いものではなくなってしまう。

 LGBTQIA+のカップルも、男女間のカップルと同様の生活を当然のようにしていかなければならない。NPO法人カラフルチェンジラボの活動目的は、理解・賛成してくれる味方を増やし続け、シドニーのように多様性を重んじる雰囲気を日本国内にあふれさせるようにすることだという。

オーストラリアでは早い段階で同性婚を認める法改正が施行

 オーストラリアは、2017年に全土で同性婚を正式に合法化した。この背景にはマルディグラの長い歴史が関わっている。マルディグラは元々、同性愛の権利獲得を目的とし、1978年7月に初めて開催された。現在では、誰もが祝福されるイベントの象徴となっているが、当時は同性愛への偏見が強かったという。人びとが自由と権利を求めてデモ行進を続けた努力が実を結び、45年以上の歳月を掛けて法の改正が認められたのだ。

 多様性を重んじるオーストラリアの文化は、こうした歴史の積み重ねにより成り立っている。今回フロートとして参加した妹尾太一さんは「こうした努力の結実がマルディグラではこれまで45年掛かったのかもしれない。日本でもできることから少しずつやっていく必要があると思います」と話す。

 三浦さんも「シドニー・マルティグラ・パレードに出場したことが今後どのような影響を生み出すか、楽しみです。また、こうしてメディアに取り上げて頂くことも何かしらの意味があると感じています」と続ける。

 日本人フロートには約20人の大学生も参加。彼らが今回の体験を日本に持ち帰り、その経験を自分の周りに語ることが、LGBTQIA+への理解や賛成の輪を広げる一因となるのではないだろうか。

左から妹尾太一さん、三浦暢久さん、山田綾香さん、山田晃暉さん
パレードの様子

パレードの様子

パレードを鑑賞し取材を終えて

 パレードの規模は、私たちの想像をはるかに超えていた。街の建物や道路が虹色に染まり、企業や警察が協賛し、歩道が観客でふさがれてしまうほどのにぎわい。日本では見たことのない景色が広がっていた。

 パレードが始まると、参加者は自由な格好で自身を表現して楽しんでいた。自分をオープンにし生き生きとしている姿はとても輝いていた。その場にいる全員の情熱に圧倒されると同時に、楽しそうに交流する彼らを見て、多様性を受け入れることの重要性を強く感じた。

 また、マスメディアの存在意義についても考えることができた。インタビューさせて頂いた際、メディアに取り上げられることで何かしらの良い影響があるはずだというコメントを頂き、それこそがマスメディアの存在意義だと感じた。誰かが伝えたいことや、誰かに知って欲しいことが、日豪プレスを介して多くの人に届くことを願う。

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