労組と州政府の労使紛争が泥沼化
オーストラリア東部シドニー周辺の広範囲の州営交通機関で21日から、非接触型ICカード「オパール・カード」の読み取り機が停止する可能性が出ている。鉄道・路面電車・バス・フェリーの従業員で組織する労働組合(RTBU)が実施する無期限の労働争議の一環。ニューズ・コーポレーション系各紙の電子版が報じている。
労組が読み取り機の停止を強行すれば、乗客は無料で交通機関を利用できる。RTBUニュー・サウス・ウェールズ(NSW)州支部のアレックス・クラーセンズ書記長は13日、組合員に宛てた声明で「(カードを)タップできないので、罰金を支払う必要がない。(無賃乗車を取り締まる)交通係員も罰金を課さない」と説明した。
だが、一連の労使紛争をめぐり、労組と州政府の対立は激化しており、解決の糸口は見えない。
RTBUはこれまで、外国製鉄道車両の安全性向上、賃上げ、待遇改善などを州政府に求め、繰り返しストを行ってきた。8月末には、シドニーの鉄道車両の約7割を運休するストを強行したばかり。今回、オパール・カードの読み取り機を停止することで州政府の収入に打撃を与え、膠着状態に陥っている交渉を有利に進める狙いがある。
これに対し、NSW州のデービッド・エリオット交通相は「労組は(ドミニク・ペロテ)州首相と私を個人攻撃しているが、(読み取り機停止で失われる)資金は私のポケットマネーから出ているのではない」として、州政府の収入減少は納税者に跳ね返ると指摘。その上で交通相は「労組は交通機関の金を垂れ流している。我々に投資(待遇改善の資金)をお願いしている人たちがやることではないだろう」と労組の姿勢を糾弾した。