半永久的に潜航できる「海の忍者」
豪米英の首脳が14日に発表した攻撃型原子力潜水艦のオーストラリア配備計画。共同声明は「オーカス(豪米英の安保枠組み)の最初の大規模なイニシアチブとして、オーストラリアが通常型兵器を搭載した原子力潜水艦を調達することを米英が支援する」と述べ、オーストラリア海軍の原潜が核兵器を搭載しないことを強調した。(解説:ジャーナリスト・守屋太郎)
核不拡散条約(NPT)で核兵器保有が認められている米国、英国など国連安保理常任理事国5カ国と異なり、オーストラリアは日本などと同様に同条約で核兵器の保有が禁じられている。調達する原潜のミサイルや魚雷などの兵装を通常兵器に限定することで、核不拡散体制を遵守する姿勢を強くにじませた。
それでも、オーストラリアの安保政策にとって、原潜保有が歴史的なターニングポイントになることは間違いない。原潜保有国としてオーストラリアは世界7カ国目、核兵器を持たない国家としては唯一の存在となり、強い抑止力を手に入れることができるからだ。
高い技術を必要とし、高価な原潜を保有しているのは現在、米国、ロシア、中国、英国、フランスと、インド(NPT未加盟)の合計6カ国に限られる。いずれも核兵器を保有する「スーパーパワー」(超大国)だ。オーストラリアは核兵器を保有しない「ミドルパワー」(中堅国)で唯一、攻撃型原潜という特別な戦闘能力を持つことになる。
探知難しい「究極のステルス兵器」
解像度の高い軍事衛星やレーダー技術が発達した現代においても、海中は電波が届かないため、深く潜航しながら敵地に近づく潜水艦を見つけるのは簡単ではない。高性能な対潜哨戒機やソナーを用いても空や海上から完全に補足することは難しい。潜水艦が「究極のステルス(隠密)兵器」と言われるゆえんだ。
とりわけ、原子炉を動力源とする原潜は、酸素補給のために浮上する必要がないため、長期間潜航したまま行動できる。定期的に浮上しなければいけない通常動力型潜水艦と比べ、秘匿性が高く、抑止力ははるかに大きい。
例えば、オーストラリアが導入を決めた米原潜「バージニア級」の原子炉の核燃料棒の寿命は、耐久年数と同じ33年とされる。つまり、現実には食料補給や保守点検のための寄港は必要であるものの、理論的には核燃料が尽きるまで半永久的に潜り続けることができるのだ。
「オーストラリア原潜配備の意味とは?② 南西太平洋の抑止力強化は期待できるがコストは莫大」に続く
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