通期決算は増収増益
オーストラリア在住者に馴染み深いホームセンター「バニングス」や格安量販店「Kマート」など小売から資源、肥料まで幅広い事業を手がける複合企業「ウェスファーマーズ」(本社西オーストラリア州パース)は25日、2022/23年度(22年7月〜23年6月)の通期決算を発表した。小売と資源部門の好調を追い風に増収増益となった。
売上高は435億5,000万豪ドルと前年度比で18.2%増加した。これは医療品卸最大手「オーストラリアン・ファーマシューティカル・インダストリーズ」(API)を買収した影響が大きい。買収の一時的要因を除いた売上高は、382億3,800万豪ドルと7.4%増だった。
利子税引き前利益(EBIT)は38億6,300万豪ドル(6.3%増)、税引き後最終利益は24億6,500万豪ドル(4.8%増)。1株当たり利益(EPS)は217.8豪セントと前年度の207.8豪セントから増えた。
オーストラリアの知られざる巨大企業
オーストラリアに住んでいて、ウェスファーマーズの社名やロゴを普段、目にすることはほとんどないが、同社は普段からよく利用する小売チェーンの多くを傘下に収めている。オーストラリアとニュージーランドでバニングス513店舗、Kマートと同業のターゲット合計449店舗、オーストラリアで事務用品チェーン「オフィスワークス」166店舗、ドラッグストア「プライスライン」390店舗(フランチャイズを含む)を運営している。
スーパー大手「コールズ」も100%所有していたが、18年に手放した。今年4月には最後まで保有していた2.8%の株式を売却しているが、コールズのポイントプログラム「フライバイズ」の権益は依然として50%保持している。
大手小売チェーンのほかにも、化学品、資源エネルギー、肥料、産業用安全用品、医療品卸売、オンライン販売など幅広い事業を手がけ、オーストラリアで上場しているコングロマリット(複合企業)としては最大規模を誇る。
Kマートの利益は5割以上急増
部門別の業績を見ると、バニングスは売上高が185億3,900万豪ドル(4.4%増)、EBITが22億3,000万豪ドル(1.2%増)。Kマート(同業ターゲットを含む)は106億3,500万豪ドル(16.5%増)、EBITが7億6,900万豪ドル(52.3%増)と、前年度の上期まで続いたコロナ禍のロックダウン(都市封鎖)の反動で売上高、利益ともに大幅に伸びた。同じ理由から、オフィスワークスも売上高が33億5,700万豪ドル(5.9%増)、EBITが2億豪ドル(10.5%増)と好調だった。
「化学品・資源・肥料」は売上高が33億600万豪ドル(8.7%増)、EBITが6億6,900万豪ドル(23.9%増)。アンモニアの国際価格上昇が貢献したほか、西オーストラリア州の鉱業企業からの化学品の需要も伸びた。
一方、プライスラインなどのヘルス部門は、APIの買収により、売上高が53億1,200万豪ドルと前年度の12億4,000万豪ドルから急増した。
リチウム初出荷へ EVブームの波に乗れるか
同社は決算書で、小売部門の見通しについて「生産性向上の取り組みと規模のメリット、購買力を背景に、取引状況に合わせて価格を調整できる」と述べ、激しいインフレを背景とした消費者の節約志向には柔軟に対応できるとの自信を示した。
法人向け事業については、資源価格の下落やガス価格の上昇を背景に「23/24年度の化学・資源・肥料事業は大幅に落ち込む」と予測した。その一方で、23/24年度下期(24年前半)にリシア鉱石(リチウムを含む原石)の出荷が始まる予定であることから、「近年、投資を進めてきたリチウム事業が、初めて業績に寄与する」と期待を表明した。
オーストラリアは世界最大のリチウム生産国で、埋蔵量も2位を誇る。リチウムは、普及が急拡大している電気自動車(EV)のリチウムイオン電池原料として需要が高まっているため、国内では次々と新規プロジェクトが立ち上がっている。ウェスファーマーズも複数のリチウム事業に投資しており、今後の事業の柱になるか注目される。
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