人口増加に住宅や水、エネルギーは対応できるの?
オーストラリア統計局(ABS)によると、同国の人口は50年後、最大で約8割近く増えて4,590万人に達する可能性があるという。しかし、オーストラリアも主要先進国に共通する現象である少子高齢化から逃れることは難しい。今後50年間の人口増加は、移民の安定的な受け入れが続くことが前提となる。
オーストラリアの①人口増加数は、国内の出生者数から死亡者数を引いた②「自然増」と、海外から移住する人の数から海外へ移住する人の数を引いた③「移民純増数」の合計値(②+③=①)で求められる。このうち自然増は、最も楽観的な「高位」シナリオの場合でも71年に10万4,510人増と22年の12万5397人増を下回る。「中位」では71年に4万2,992人減、最も悲観的な「低位」では同11万8,139人減と、いずれも死亡者数が出生者数を上回ると見られている。
また、移民を一切受け入れないと仮定したシナリオでは、自然増の減少により、2036年をピークに人口減少に転じると推計している。現実的にはあり得ない話だが、移民政策を大転換して受け入れをストップした場合、すでに人口減に陥っている日本や韓国、中国などと同じ運命を辿ることになる。
経済大国の一角を占める存在に?
仮にオーストラリアの人口が50年後、4,500万人以上に達したとすれば、現在(21年)のスペイン(4,749万人)やアルゼンチン(4,528万人)、ウクライナ(4,353万人=いずれも英オックスフォード大のデータベース、アワ・ワールド・イン・データ調べ)と肩を並べる規模となる。
また、日本の将来推計人口(令和5年)によると、現時点で1億2,615万人の総人口は70年に8,700万人(中位)と約7割減ると予測されている。オーストラリアの人口は半世紀後、日本の半分程度まで拡大する可能性がある。
オーストラリアの経済成長が今後も先進国の平均を上回る高水準を持続し、世界でも指折りの1人当たり国内総生産(GDP)を維持したと仮定すれば、世界の経済大国の一角を占める存在にのし上がるかもしれない。
ただ、人口増に対応した住宅建設やインフラ整備は不可欠と言える。現状でもコロナ禍後に一気に移民が増えたことを背景に、住宅の供給不足や家賃の高騰が社会問題化している。乾燥した気候条件から水資源は慢性的に不足しており、大量にエネルギーを使用する海水淡水化プラントの増設が必要になるかもしれない。再エネ移行に伴う電力の安定供給も課題となる。大都市圏では混雑や渋滞も増えており、主要先進国と比較して遅れている交通網の整備も加速させる必要がある。長期的な国家建設のビジョンが必要となる。
■ソース
Population Projections, Australia(Australian Bureau of Statistics)
Population 2021(Our World in Data)
日本の将来推計人口 令和5年推計(国立社会保障・人口問題研究所)