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炭素ゼロの燃料電池機、2024年初飛行目指す オーストラリアのスタートアップ 

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26年には19人乗り民間機で商業飛行計画

動力試験中の実験機(Photo: iMOVE)

 オーストラリアの航空スタートアップ企業「ストラリス・エアクラフト」(本社ブリスベン)は2024年、温室効果ガスを排出しない水素エネルギー由来の燃料電池で飛ぶ小型プロペラ機の初飛行を目指して開発を進めている。20日付のニュースサイト「ビジネス・ニュース・オーストラリア」が伝えている。

 ストラリスは現在、クイーンズランド工科大(QUT)、連邦政府傘下の交通研究開発機関「アイムーブ共同研究センター」の協力を得て、小型単発機「ビーチクラフト・ボナンザA36」のエンジンを燃料電池に換装し、地上で動力試験を行っている。

 初号機の試験飛行が成功すれば、26年に初の民間商業飛行を行う計画だ。より機体の大きい19人乗りの双発プロペラ機「ビーチクラフト1900」を燃料電池機に改修し、航続距離800キロ、最高速度時速500キロの性能を目指している。米国とオーストラリアの航空当局から補足認定証明(STC=航空機の大幅な改修に伴う追加的な型式証明)を取得した上で、クイーンズランド州北部の地域航空会社「スカイトランス」がローンチカスタマー(新型機の初の顧客)となり、ブリスベンーグラッドストーン間に就航させるとしている。

 さらに、まったく新しい50人乗りの双発機を開発し、30年に就航させる構想も描いている。航続距離3,000キロ、最高速度時速580キロを想定している。もし実現した場合、シドニー〜ブリスベン、シドニー〜メルボルンといったドル箱路線(それぞれおおむね900〜1,000キロ)への投入が可能かもしれない。

固定翼機の脱炭素化にイノベーション起こせるか

 航空燃料を燃焼させてエンジンを駆動させる従来型の航空機と異なり、水素エネルギー由来の燃料電池機には飛行中に温室効果ガスを排出しないというメリットがある。水素を酸素と反応させて燃料電池で作った電力でモーターを回すためだ。

 石炭など化石燃料を改質した水素では、精製時に温室効果ガスが発生する。だが、太陽光や風力などの再生エネルギーのみで作った「グリーン水素」を使用すれば、サプライチェーン全工程で排出量を理論上ゼロにできる。

 航空機の脱炭素化の選択肢としては、バッテリー電動機と燃料電池機の2つがある。バッテリーに貯めた電力で飛ぶ電動機は、地上を走るバッテリー電気自動車(BEV)と異なり、バッテリーを増やせば増やすほど重量が増えて航続距離が伸ばせないというジレンマがある。数人乗りで短距離用の電動回転翼機「空飛ぶ車」の開発は進んでいるものの、一定の距離を多人数を乗せて飛ぶ固定翼機の電動化は技術的に難しいのが現状だ。それだけに、ストラリスの燃料電池機開発が成功した場合、小型固定翼機の脱炭素化に技術革新を起こす可能性がある。

 一方、水素を高密度の液体で維持するには摂氏マイナス253度以下に保つ必要があり、液体水素を使用するストラリスの機体は、冷却コストや技術面の課題をどう克服するのかが注目される。

 なお、市販されている燃料電池自動車のトヨタ・ミライは、大気圧の700倍に圧縮した気体の水素を特殊なタンクに充填し、ガソリン車と比べて遜色のない充填時間と航続距離を実現している。ただ、水素ステーションの設置が進んでいないため、充電時間が長く航続距離も比較的短いBEVと比べ、燃料電池車の普及は著しく遅れている。

■ソース

Stralis Aircraft plans maiden flight in 2024 for aircraft retrofitted with hydrogen system(Business News Australia)

Stralis Aircraft Website





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