オーストラリア東部ニューサウスウェールズ州で
オーストラリア東部ニューサウスウェールズ州環境省の報告書によると、州内に生息しているカンガルーの数は推定963万4,900頭と2022年と比べて225万頭減少(18.9%減)した。州環境省は毎年、航空機によるサンプル調査でカンガルーの頭数を推算し、商業的な狩猟で間引きできる頭数の上限を決めている。22年の推定生息数に基づく23年の狩猟枠は185万228頭だったが、23年は頭数が2割近く減少したことから狩猟枠は148万4,072頭に抑えた。
公共放送ABC(電子版)によると、州環境省の広報担当者は「地域によっては、洪水が(カンガルーの餌となる)草の生育に打撃を与えたため、間接的に生息数の減少につながった可能性がある。直接的に洪水で(流されて)命を落とした個体も一定数いただろう」とコメントした。
カンガルーは、国章の意匠にも用いられているオーストラリアを象徴する動物だが、農業生産者にとっては大切な畑を荒らす害獣だ。代表的なオオカンガルー(英名:イースタン・グレイ・カンガルー)やアカカンガルー(英名:レッド・カンガルー)といった一般的な種は、生息数が多く絶滅の危険が低い。このため、州政府の管理の下で、毎年決められた狩猟枠の範囲内で銃殺されている。肉は食用、革はカバンや靴などに利用される。
ただ、カンガルーの狩猟については、動物愛護の立場から「非人道的だ」という意見がある。母親のカンガルーが銃で撃たれて死亡すれば、育児嚢(腹の袋)に入った子どものカンガルーが取り残され、餓死してしまうからだ。
ABCによると、「オーストラリア・カンガルー協会」のニッキー・サタビー会長は、カンガルーの頭数が急減しているのは、洪水よりも商業的な狩猟による影響が大きいと主張している。
「報告書は非常に気がかりな数字を示していますが、驚くべきことではありません。私たちは長年にわたって警告してきました。いくつかの地域では、狩猟を停止したところもありますが、ほとんどの地域では狩猟が続けられており、(カンガルー頭数の)急減につながったことは明白です」(サタビー会長)
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