本好きにとって、トレンドに取り残されてしまうのはつらいところ。本連載では、シドニーCBDに店を構え、KINOと親しまれるオーストラリア紀伊国屋書店協力の下、トレンド・キーワードと共に読み逃せない話題の3冊と、日本のトレンドをキャッチするための最新ランキングをご紹介していきます。
春の訪れを感じる季節です。場所によっては桜も見られますので、ちょっと足を運んでお花見というのもいいですね。そんな今月にお勧めしたい本は「コミック・エッセイ」。コミック・エッセイとは基本的にノンフィクションですが、エッセイ漫画の体裁を用いたフィクション作品もあったりして、いろいろな作風を楽しむことができます。ハードルが低く気軽に手に取ることができるので、本格的な春の到来の前に読書の旅に出掛けてみてはいかがでしょう。
今、売れている本は? ベストセラー・ランキング(2021年7月4日~10日)
■文庫ベストセラー
1 | 梅花下駄 | 佐伯泰英 | 文藝春秋 |
2 | 昨日がなければ明日もない | 宮部みゆき | 文藝春秋 |
3 | 出紋と花かんざし | 佐伯泰英 | 光文社 |
4 | 要訣 | 上田秀人 | 講談社 |
5 | いのちの停車場 | 南杏子 | 幻冬舎 |
■新書ベストセラー
1 | スマホ脳 | アンデシュ・ハンセン/久山葉子 | 新潮社 |
2 | 老いる意味 | 森村誠一 | 中央公論新社 |
3 | 人新世の「資本論」 | 斎藤幸平 | 集英社 |
4 | どうしても頑張れない人たち | 宮口幸治 | 新潮社 |
5 | 生物はなぜ死ぬのか | 小林武彦 | 講談社 |
今週のトレンド・キーワード「コミック・エッセイ」
芸人・漫画家の矢部太郎の新作
『ぼくのお父さん』
矢部太郎
新潮社(価格:A$25.69<価格:A$23.12>)
ぼくの「お父さん」は絵本作家。40年前の東京・東村山を舞台に、普遍的でノスタルジックな心温まるストーリー。子どもを見守りながら、同じ目線で共に遊ぶ。常識にとらわれず、のびのびと子どもと向き合い、時に親自身も成長していくエピソードは今の子育て世代にこそ届けたい家族の姿。
田んぼもお風呂もアミューズメント!?
『日本びいきのハ-フっ子と里帰り』
小倉マコ/アベナオミ
イ-スト・プレス(価格:A$23.12<会員価格:A$20.81>)
カナダ在住、1男1女のハーフっ子が4年ぶりに訪れた大好きな日本! おじいちゃん、おばあちゃんとのうれしい再会や、不思議で楽しいジャパンに大騒ぎ。カルチャー・ギャップを感じながら、日本の何気ない日常を思い切り楽しむ彼らと一緒に、里帰りの喜びと“日本ならでは”を再確認できる1冊。
お手軽自転車旅の入門書
『おりたたみ自転車はじめました』
星井さえこ
KADOKAWA(価格:A$35.70<会員価格:A$32.13>)
車体を折り畳んでコンパクトにできる小さくて可愛い自転車。電車に乗せれば日本全国どこでもサイクリングが楽しめる! 主人公さえこがそんな折り畳み自転車の魅力に気付き、さまざまな場所を旅するコミック・エッセイ。風を切って走る爽快感を感じられる、自転車旅ならではの魅力が満載!
ランキングからPick up!
『昨日がなければ明日もない』
宮部みゆき/文藝春秋
若い主婦が自殺未遂をして音信不通となった。その裏で起きていた陰惨な事件とは?(「絶対零度」)。近所に住む主婦の依頼で出掛けた結婚披露宴で、杉村は思わぬ事態に遭遇する(「華燭」)。ある奔放な女性が持ち込んできた、「子どもの命がかかっている」問題とは?(表題作)。探偵vsちょっと困った女たちの事件簿。
KINOKUNIYA便り
いよいよ待ち遠しい春の到来が近づいてきましたね。季節のワイルド・フラワーを楽しめるのもオーストラリアの大きな魅力です。目や耳で五感をフルに使って春を満喫したいものです。さて今月はコミック・エッセイの紹介です。身近に感じるものや思いもよらぬ所まで連れて行かれるものなど、手軽に読めつつ、いろいろな感情を呼び起こされる出合いもありそう。まだまだ肌寒い日の読書にはお薦めです。