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日豪フットボール新時代(NAT)第116回「不透明」

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第116回 不透明
文・植松久隆 Text: Taka Uematsu

おどろおどろしいウイルスの写真と共にやってきた「フットボール禁令」のお達し
おどろおどろしいウイルスの写真と共にやってきた「フットボール禁令」のお達し

今、豪州国内でフットボールが日常的に蹴られるのは、プロ・リーグのAリーグとそのトレーニング、あとは校庭や裏庭、公園などいわゆる非公式の場所だけ。現在、豪州国内のセミプロからアマチュアのクラブ、そしてグラスルーツのフットボールの全ての試合と練習が4月14日まで禁止されている。

3月に入って、カチっと何かのスイッチが入ったように事態の深刻度が一気に加速した新型コロナウイルス禍。先月もフットボール界に及び始めた影響に触れたが、この1カ月の凄まじい変化は、ここでは到底書ききれない。無理に一言で表せば、豪州フットボール界は「仮死」状態にあると書くと穏当を欠くだろうか。

もはや、今回の騒ぎは人類にとって未知の予測不可能なレベルに入ったからこその公衆衛生的観点から講じられた「フットボール禁令」だと「頭」では理解している。しかし、「心」では、大人はともかく、子どもたちから大好きなフットボールを完全に奪うのは、「やり過ぎ」と感じる自分がいるのも否定しない。専門家でもなんでもない私には、正直分からないが、二転三転した結果に国内フットボールの勧進元であるFFAの判断に各地のフットボール協会が足並みをそろえての一斉「自粛」には、やるせなさしか感じない。大人以上に子どもたちはもどかしさを感じていることだろう。

世界を見渡すと、ワールド・カップに続く規模の欧州選手権は中止が決まった。めでたく男女そろっての出場権を得たオリンピックでのフットボールの先行きも不透明だ。現時点でオリンピックが予定通り行われるかすら、はっきりしない。水面下では、延期、最悪中止ということも含めてのシュミレーションが行われているだろうが、この先が見通せない状況は、選手のモチベーションにも大きく影響することは必至。Aリーグも、シーズンの佳境とそのクライマックスたるファイナル・シリーズを無観客で行うことを強いられる。いや、全日程を消化できるかさえも分からない。この未曾有の騒ぎの中で今まで誰も経験のないことへの対応を迫られるているのだ。

そんな混沌の中でも、とにかく読者には自宅の庭でも公園でも、どこでも構わないからボールを蹴り続けてほしい。いつかは必ず、フットボール・グラウンドに笑顔は戻るはず。それを信じて、ボールを高く、強く、弾ませ続けてほしい。“Football will never die”、そう信じるしかない。


【うえまつのひとり言】
豪州各地のローカル・サッカー・シーンは、開幕直後の最悪のタイミングで中断となってしまった。今年もNSW州、QLD州、VIC州を中心にいろいろなレベルでの日本人選手の活躍が期待され、実際消化されていたラウンドでも活躍が見られた。早く、彼らが思い切ってプレーできる日が戻ってきますように。

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