第12回 KVB資産運用
市場心理と為替の関係
皆さん、前日のニュースで見たレートが良かったので両替に行こうと思っていたら、思いの外レートが悪くなっていたという経験をされたことはありませんか?
これまでこのコラムをお読みになった方であれば、経済データやニュースによって為替が短期的に変動することはお分かりかと思います。豪ドルと日本円のペアを例に取れば、豪州の失業率や日本の短観など両国に関わる経済データは豪州時間及び日本時間の日中に発表されます。これらが夜に発表されることはありません。私たちが眠っている間に何が豪ドル・円の相場を動かしているのでしょうか。
下のグラフを見てください。これは、米国の株式の代表的な指標である、S&P500と豪ドル・円の今年の3月から10月までの値動きを、それぞれ折れ線グラフ(前者がオレンジ、後者が青)にプロットしたものです。なお、S&P500は3,500ドルくらい、豪ドル・円は75円くらいとなっており、それぞれ尺度が異なるため、2つの値動きの関係性を示すために標準化というデータの加工を行っています。グラフを見ると、2つの値動きがほぼぴたりと重なっていることが分かります。
米国株市場は時価総額で世界最大の市場です。株価には将来の経済に対する市場参加者の期待が表れています。つまり、米国株市場の動きは世界の金融市場が将来の経済についてどう感じているかを示していると言えます。このような市場参加者の心理を市場センチメントと言いますが、米国株市場は市場センチメントのバロメータと考えることができます。豪ドルは、グラフからも分かるように市場センチメントが良好な場合に買われる傾向にあります。豪州経済と直接関わりがないようなニュースでも将来の世界経済に対して悲観させるニュースであれば豪ドルは売られるのです。今度、朝レートが前日の夕方よりも悪くなっていたら、米国の株式相場のニュースをチェックしてみてください。
このコラムの著者
KVB Global Markets:山田 悟
KVBGlobalMarkets日本部門ヘッド/チーフ・カスタマー・ディーラー アジアを中心に金融サービスを展開するKVBGlobalMarketsで15年にわたり為替カスタマー・ディーラーとして日本人顧客を中心に外国送金や国際決済、外貨調達の支援を行っている