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第20回グローバル·キャピタル·コンフィデンス調査について

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税務&会計 REVIEW

EYパートナー/ジャパン・ビジネス・サービス
グローバルJBSリーダー 菊井隆正

プロフィル◎EYパートナー/グローバルJBSリーダー。JBSは、世界4大会計事務所の1つEYのグローバル・ネットワークであり、日本企業の海外事業展開をサポートしている。在豪暦は20年を超え、常に監査、会計、税務から投資まで広範囲にわたる最新情報を提供することで、グローバルで活躍する日系企業に貢献できるよう努めている

第20回グローバル·キャピタル·コンフィデンス調査(アジア太平洋版)について

EYが世界中の有力企業の経営陣(72カ国約20業種の経営陣1,600人以上が対象)に対して半年ごとに実施している「キャピタル・コンフィデンス調査」の最新結果が発表されました。今月号では、アジア太平洋地域にフォーカスをした調査結果をご紹介します。

十数年前の世界的な金融危機以来、アジア太平洋地域における世界経済の展望が変化し続けていることは、ほぼ疑いようのない事実です。これらの市場において、経済政策と財政政策には大幅な乖離(かいり)が見られ、テクノロジーにより誘発される分裂が更に激しさを増しています。アジア太平洋地域は企業にとって継続的な成長のために最も推奨できる場所の1つであると考えられる一方で、例えば中国のように成熟に向かっている経済地域であるという現実と向き合う必要があります。

また、米国と中国の間の貿易摩擦など、世界の経済や地政学的競争による影響に対する懸念が高まっています。今後、アジア太平洋地域の市場やビジネスは、この貿易摩擦がどうなっていくかによって大きく左右されるため、この地域の成長に引き続き注意していく必要があります。

このような背景を踏まえ、今回の調査に回答したアジア太平洋地域の経営者(以下、回答者)の意見をまとめました。

ここ数カ月の動向を観察した結果、あるパターンが明確になり、市場が変化していることが確認できました。すなわち、経済の変化に対してより良いビジネス・ポジションを目指すための攻めの意思決定を行っていることです。観察できた主なパターンは下記の通りです。

  • 性急で積極的な株主は、より統制の取れた攻めの運用をCEOや会社の経営陣に求めている。
  • それにより、より多くの定期的なポートフォリオ・レビューが行われるようになった。
  • 企業が、業績の思わしくない事業やコアではない事業を手放して資本をうまく利用する準備を整えるにつれて、売却による資本のリサイクルが勢いを増している。

成長に特化したビジネスが大きくイニシアチブを取っているというわけです。更には、ビジネスを成長させ、規模を集約する機会が、この地域で急務となったことはこれまでありませんでした。この機会は、投資家にも企業にも等しく自らの資本を有効活用し、事業の新規開拓の見通しを形にするための絶好のチャンスであります。

保守的なアジア太平洋地域の経営者

回答者の87%(前年度62%)が世界及び地域の経済が発展すると予測しており、回答者のマインドが大きく改善されていることを示しています。ただし、この数値は、全世界の回答93%には及びません。

回答者の97%が、市場における企業の収益は増加する、または現状維持であると予測しており、6カ月前と変わりませんでした。また、68%(全世界:76%)が、自身の収益成長の観点から、来年度成長率は6%から15%になると予測しました。アジア太平洋地域の経営者は比較的慎重な見方をしていますが、これは、米国と中国の間の貿易摩擦による影響が未だ不透明であることや、中国経済の成熟した成長がアジア太平洋地域に重大な影響を及ぼす可能性を懸念しているためです。

アジア太平洋地域の経営者は経済の展望に対してより楽観的な見方を好みますが、そのリスクも念頭に置いており、33%が景気後退のリスクを彼らの成長計画に対する主な脅威であると述べています。その他の相互に相関するリスクとして、サプライチェーンの分裂(23%)及び地政学的な不安定さ(21%)がビジネスの成長に重大なリスクをもたらすと考えられます。企業は、これらの相関する問題が自らの成長アジェンダにどのような影響を及ぼすかを評価しなければなりません。素早い決断力を鍛えたり、必要に応じて素早く切り替える能力を持つことがこういったリスクを緩和するための鍵となるのです。

外部要因によって促される定期的な評価やポートフォリオの再構築

世界的な景気後退やかつてないペースで進められる分裂によって生じうる影響に立ち向かうため、現在四半期ごとにポートフォリオの見直しを行っていると回答した経営者は、6カ月前の23%から著しく増加し、57%となりました。彼らは、ポートフォリオの見直しを頻繁に行うことによって、資本のリサイクルの機会を見つけ、より賢く資本の割り当てを行えることを期待しているのです。興味深いのは、コアでないあるいは業績の振るわない事業や資産を明確にし、速やかに売却することがいかに重要かという認識が高まってきていることです。

79%の回答者が、行動派株主からプレッシャーを受けることで継続的にポートフォリオの見直しを行うようになったと回答しており、これがより頻繁にポートフォリオの実績を見直したり、統制を図ったりする別の理由となっています。

経済のファンダメンタルズや行動派株主によって駆り立てられるM&Aへの意欲

回答者の半数以上(51%)が、今後1年間M&Aの可能性を追求するつもりであると回答しており、この割合は、ここ10年間の平均である42%をはるかに超えています。この統計は、経営者たちが自分たちのビジネスを成長させる方法を習得し始めており、より長いタームでの経済ファンダメンタルズにフォーカスしている一方で、地政学ノイズをフィルターにかけていることを示しています。

株主の行動が買収に拍車を掛ける役割を担っていると考えられます。51%の回答者が、行動派株主により更なる成長や事業拡大のための買収を強く求められていると回答しており、世界の経営者(37%)より多い経営者が買収を求めるシグナルを経験したことがあると回答しています。回答者はM&Aの市場が続くことを確信しています。アジア太平洋地域のM&A市場は向こう1年間堅調であると予測している割合は84%で、2年前の53%から大きな伸びを示しました。

回答者が今後1年間で買収が進むと予測したトップ3の分野は、自動車及び輸送(72%)、テクノロジー(61%)、及び金融サービス(59%)です。これらの分野は全て技術革新によって大きくディスラプトされており、これらの分野の企業は顧客の需要に合わせてM&Aを行い、革新的な製品を提供するかあるいは新しいビジネス・モデルによって競争力を維持しています。

経営者は国内だけでなく海外にも目を向けており、回答者の72%(全世界:67%)が向こう1年間で国境を越えたM&A活動を行っていくと回答しました。経営者たちは海外の資産に次第に魅力を見出しており、アジア太平洋地域の企業にとってのトップ5の投資先は、中国、オーストラリア、日本、インド、そして米国です。

運営資金の一部を資本に回すことでレジリエンスを強化

回答者のほぼ半数(46%)が、間接費や管理費を減らすことによって企業の収益性やキャッシュ・フローの回復力を構築するつもりであると回答しました。管理費に焦点を絞った手法は、81%の回答者が、来年にかけて行う売却に向けての最大の引き金として運営モデルの合理化を行う必要があると回答しました。一例としては、多くの企業が生産プロセスや日常的特定の管理業務の向上のため、技術、自動化、及び人工知能(AI)を採用しています。

将来の成長を見据えた運営戦略の再編成

ポートフォリオの見直し強化に経営者が焦点を当てているため、アジア太平洋地域の企業は、リサイクルのために資本に余裕を持たせることによって、コア・ビジネスの成長のための統合のチャンスに投資を行っています。このためバランス・シートの負債を減少させることができるのです。今までにない合併への意欲が、より長期でのこの地域における経済ファンダメンタルズにおいて根本的な自信を表しており、これによって、企業は常に変化する市場に応じて立ち位置を変えることができるようになりました。

この将来を見据えた取り組みによって、この地域の企業の間に賢い運用決定のために必要な秩序が作られると同時に、継続的に健全なM&A市場が維持されるでしょう。

※この記事は出版時の時点で適用される一般的な情報を掲載しており、アドバイスを目的としたものではありません。


EYジャパン・ビジネス・サービスのウェブサイトはこちらから
www.ey.com/AU/en/JapanBusinessServices

コンタクト

菊井隆正(ナショナル)
(02)9248-5986
Email: takamasa.kikui@au.ey.com

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