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新・豪リークス/「SJIS出身投手が大リーグ球団と契約」

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現在TBSのシドニー通信員を務める筆者が、オーストラリアの“ホット”な話題を独自の視点で分析する。あっと驚く“裏情報”や“暴露(リーク)情報”も!?

第28回 〔豪州野球事情〕「SJIS出身投手が大リーグ球団と契約」

日本人の母を持ち、シドニー日本人国際学校(以下、SJIS)にも通っていたジョシュ・ゲスナー投手が6月12日、メジャー・リーグのフィリーズと契約したと各メディアが報じた。契約後、シドニーの自宅に1週間だけ里帰りした彼を緊急取材した。

◇フィリーズと120万豪ドルで契約

ィリーズと120万豪ドルで契約したジョシュ・ゲスナー投手(アクアティック・ボールパーク、6月19日、筆者撮影)
フィリーズと120万豪ドルで契約したジョシュ・ゲスナー投手(アクアティック・ボールパーク、6月19日、筆者撮影)

シドニー北部フレンチズ・フォレストにある野球場。観客席などはないが、青々とした天然芝が敷き詰められ、両翼330フィート(約100m)、センター・フェンスまでは364フィート(約112m)の広さのグラウンドは、まさに“メジャー規格”。このメイン球場の隣には、四隅にバック・ネットとピッチャー・マウンドが設けられた広大な“第2球場”がある。ここでは、毎週末のようにTボールと呼ばれる小さな子どもたちのゲームや、ハイ・スクールの生徒から一般の大人がプレーする硬式野球の試合が行われ、にぎわいを見せる。

6月19日、平日の午後3時過ぎとあって人影もまばらなこの球場に、1人の体格の良い若者が自転車でさっそうと現れた。赤地に白い文字で“P”と書かれた野球帽をかぶり、少しあどけなさは残るものの、精悍(せいかん)で整った顔付きのこの青年が、1週間ほど前に米メジャー・リーグの球団、フィラデルフィア・フィリーズと契約したジョシュ・飛勇(ヒュー)・ゲスナー投手(19)だ。両親が米国滞在中に生まれたためアメリカ国籍を所持しているが、今回はドラフト外のいわば“外国人枠”での契約。契約金は約120万豪ドル(約9,200万円)で、高校を卒業したばかりで18歳(契約当時)のほぼ無名選手としては破格と言える。しかもフィリーズは、米テュレーン大への進学予定だったゲスナー選手に、大学での学費も提示したという。

身長185センチ・体重94キロ、Max155キロの速球とスライダーが武器のゲスナー投手に、自宅も近く、小さいころから投げ親しんでいたというピッチャー・マウンドからの投球を見させてもらった。5割程度の力で投げても軽く135キロ以上は出ているようで、練習パートナーとしてグラウンドに駆けつけた元チームメイトのジョー・スティーブンス君(18)のミットに収まる音からも、90キロを超える体重が十分に乗った球の重さを感じられた。ストレートと同じフォームから繰り出されるスライダーも高速で、打者の手元でグイッと変化する。

メジャー・リーグのスカウト、マット・スターク氏は「技術や能力が未知数の選手を見極めるのは難しいが、ゲスナー選手は、野球に対する姿勢やコミットメント、倫理観、体力、研究心など、チームが求める全てを兼ね備えているように見える」と米メディアのインタビューに答えた。

◇シドニー日本人国際学校でも喜びの声

インタビューに答えるゲスナー投手と母・多恵さん(左)(シドニー日本人国際学校、6月17日、筆者撮影)
インタビューに答えるゲスナー投手と母・多恵さん(左)(シドニー日本人国際学校、6月17日、筆者撮影)
横浜DeNAベイスターズとの提携を伝える豪プロ野球チーム、キャンベラ・キャバルリーの広告
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このゲスナー投手、実は今年で創立50周年を迎えたSJISに小学校6年生まで通っていた。大学入学準備のため既に滞在していたアメリカでフィリーズとの契約を決め、1週間だけ里帰りしていたゲスナー投手が、6月17日、母親の多恵さん(47)と共に母校を訪れた。キンディ・クラスと小学校6年生のクラス担任だった恩師も卒業文集を持参して、成長した教え子を出迎えた。

「彼は真面目で勉強もよくできた。いろいろと気配りができたし、周りに優しく接する児童でした」(小6時担任デッドマン先生)

シドニー日本人国際学校の井川信也校長は「卒業生でメジャー・リーグを目指している先輩がいると1カ月ほど前の全校集会で紹介したばかりでしたから、本当に驚いています。日本人学校で学んだことを生かして、日本人としての誇りと精神を持ち、世界に羽ばたいて欲しいですね」と激励した。

◇目標はダルビッシュ有選手

練習を終えたゲスナー投手に幾つか質問をすると、流暢(りゅうちょう)な日本語でしっかり答えてくれた。

――契約が決まって今の気持ちは?

「興奮しています。ずっと大学に行こうと思っていましたが、プロの道を選択できてすごくうれしいですね。こういう機会は二度とないと思って決めました」

――野球を始めたきっかけは?

「小さいころはサッカーをやっていましたが、小学校2年生の時、1年間だけ愛知県の春日井市に住んで、家の隣の公園で行われていた草野球をしたのがきっかけです。子どものころは、おじいさんとよく試合を観に行った中日ドラゴンズの選手になりたかったんです」

――オーストラリアの野球のレベルは?

「ABL(豪州プロ野球リーグ)は結構レベルが高く、アメリカのマイナー・リーグのレベルに相当すると思います。シドニーのプロ・チームなどでプレーしたお陰で、アメリカのスカウトが来てくれました」

――好きな選手と今後の目標は?

「ダルビッシュ選手です。ものすごい変化球を投げますし、三振も多い投手なので。メジャーに昇格できたら、三振を取れる投手になりたいと思います」

また、母親の多恵さんは「決断に関しては、100%息子に任せた。でも、まさかこんなに早くプロになるとは思っていなかったのが本音」と語り、「スポーツを通して、皆さんに勇気や希望を与えて欲しいなと思います」と答えてくれた。

◇東京五輪出場の可能性も

ラグビーやサッカーに比べ、オーストラリアの野球人気はそれほどでもないが、現在100人を超える同国の選手がアメリカのプロ・リーグや大学でプレーするなど、選手のレベルは決して低くない。

また、日本のプロ野球チームがABLのチームと提携し、シーズン・オフに若手有望選手を送り込んでくるケースも増えている。

今回、好条件でフィリーズと契約したゲスナー選手。日本国籍も所持していていることから、来年の東京五輪に日本代表として出場する可能性もある。オーストラリア国内の野球人気を後押しする意味でも、世界最高峰の舞台での活躍を期待したい。


飯島浩樹(いいじま・ひろき)
TBSシドニー通信員、FCA-豪・南太平洋外国記者協会会長、豪州かりゆし会会長、やまなし大使など。2019年5月、小説『奇跡の島~木曜島物語』を出版

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