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日豪フットボール新時代「遅咲き」第128回

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遅咲き

真価が問われる今季、更なる活躍を期す(本人提供)

 ようやく、この選手を取り上げられた。3年越しで実現した取材に本人も「やっと声が掛かった」と満面の笑みを見せてくれた。QLD州一筋6年目のシーズンを迎えるF W小野凌(29)。NPLQLD(州1部)モートンベイ・ユナイテッドの絶対的エースで、昨季は26戦21発で堂々の得点ランク4位の大活躍。NPL選抜とベスト11にも選出される充実のシーズンを過ごした。

 本人も認める超”遅咲き”の小野は、決して、華やかなキャリアを歩んできた選手ではない。東京の中高一貫校(駿台学園)でサッカーに明け暮れ、スポーツ推薦で日本体育大学(当時、関東大学2部)に入学。しかし在学中はケガに泣いた。ようやく試合出場機会を得た時には最上級生になっていた。

「不完全燃焼もあったけれど、純粋にサッカーが好きだから」と受け続けた大学卒業後のトライアルも全敗。失意の中で豪州挑戦を決意する。来豪後、トライアル初日の練習後にオファーを受けたカパラバFC(当時、BPL州3部相当)入団を即決したが、初年度はダントツの最下位。それでも「石の上にも3年」を実践、3年掛けてクラブと共にNPLの檜舞台にたどり着いた。

 昇格クラブの宿命で常に守勢を強いられたNPL1年目も7得点と気を吐き、そのオフ、クラブのレジェンド認定のライセンスとも言うべき「通算100試合出場」の金字塔の達成直前で4年所属したカパラバからモートンべイに電撃移籍。ロイス・ブラウンリー監督の3年越しの熱いラブ・コールに応えての決断だった。心機一転のNPL2年目は、監督の厚い信頼の下で攻撃に専念できた昨季はキャリアハイの大ブレイクを果たした。

 そんな男が豪州でのキャリアの全てを賭けて臨む、今季のNP L開幕が迫る。昨季を上回る大暴れで更なる遅咲きの大輪の花を咲かせて、「NPLファイナル」、そして、その先のタイトルとまだ見ぬ高みに到達できるのか。今季もNPQLDから目が離せそうにない。

このコラムの著者

植松久隆(タカ植松)

植松久隆(タカ植松)

ライター、コラムニスト。タカのつぶやき「今回の取材、彼ほど理路整然と語るフットボーラーはそういないと感心させられた。自己分析や振り返りがきちんとできるのは、日頃からしっかり目的意識を持ちプレーしている証左。その意識の高さが彼の強み。こういう選手は応援したくなる」





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