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日本式の引越しサービスはシドニーに存在する!? 

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 昨今の家賃急上昇や不動産価格高騰により、引越しを検討する人も多いのではないだろうか。日豪プレス本誌7月号では、「スペシャリストに聞く!オーストラリア最新不動産事情 2023」を特集。 

オーストラリアで夢のマイホーム! そして投資物件見極めのコツは? 

 その不動産特集にちなみ、今回は、日豪プレスのチーム・メンバーが実際に経験した「リアルな引越し体験記」をお届けする。 

概要
  • 家族構成:4人家族(小学生の子ども2人) 
  • 旧居:シドニー(Lower North Shore)にある一軒家(3BR/2Bath+Study+Entertainment room) 
  • 新居:旧居から約1キロ離れた場所にある一軒家に引越し(4BR/3Bath+Entertainment room)  
  • プラン:梱包から開梱まで全てお任せパックを依頼  
  • 引越業者のスタッフ:計6人  
  • 所要時間:1日目(午前8時〜午後3時30分)、2日目(午前8時〜午後2時)の計13時間30分 

見積もり 

 今回、引越し予定日の約6週間前に日系企業3社、ローカル企業1社、計4社にウェブサイトから見積もりを依頼した。 

 まずは、その直後に日系A社から回答があり、コロナの影響で現在は国内の引越しサービスを停止していると電話で丁寧に連絡を頂いた。日系A社の引越し対応の評判を聞いていたため残念ではあったが、コロナの影響により特にワーキング・ホリデーや留学生を主体とした労働人員不足が生じていること、また問い合わせ直後に丁寧な対応をして頂いたため、気持ちよく「それは仕方ないですね」と納得。しかし、いずれにしても引越しを決行しなければならないため、期待していたA社の選択肢がなくなったことに少し焦りを感じながら日系B社に電話をした。 

 電話で引越し予定日を伝えた際「国内引越しサービスは現在も実施しておりますので、ウェブフォームから家具や荷物の量を入力してください」と言われ、少しホッと安心しながら指示に従いフォームを入念に記入。しかし、後日になり日系B社からメールで「この時期は海外引越し対応の繁忙期にあたり国内の引越し予約は受け付けていない」との連絡があり愕然となる。 

 最初の電話であえて入念に確認した内容とは回答が異なるため、悔しい気持ちがこみあげる中ふと我に立ち返り、いずれにしても引越しは信頼できる会社にお願いするのが一番だという思いで気持ちを切り替え、残りの2社の対応を待つことに。 

 そんな状況の中、ちょうどタイミングよく日系C社から、見積もりを取りに自宅までお越し下さると連絡を頂いた。こちらの希望するスケジュールを伝えた後、社長自らが見積もりと下見に来てくださり、2、3日後には明瞭な内容の見積もりがメールで送られてきた。内容や金額の確認を数回した際のやり取りも、常に明瞭かつ誠意を感じることができ、自分の心の中ではC社に決める。 

 ちなみに、もう1社問い合わせたローカル企業からは、こちらが問い合わせてから1週間後にメールで「1時間$XXX、3人で時間が掛かった分だけ」のようなとても大まかな見積もり連絡があり、作業に要する時間自体でいくらにでもなりますよという、上限もなくあまりにもざっくりとした見積もりであったため「これはないな、さすがオーストラリア(笑)」とあっさり諦める。ウェブサイトの体裁はとても良かったのだが、オーストラリアでありがちな外面をよく見せることが上手な典型的な例であった。 

 結局、今回はC社「River Express Pty Ltd」にお願いすることに決める。引越し業社の選定は、やはり見積もりを依頼する際の対応で見極めることが最も大事である。その時の対応から感じられる姿勢、印象、信頼、つまり引越しという大きな作業を信頼できるチームと一緒になって取り組むことができるかを見極める。そして最終的には予算に応じた金額で、どの会社にお願いするかが決まるということを改めて実感した。 





引越し作業 

 今回は梱包から開梱まで全てお任せの「丸投げプラン」でお願いした。River Express 社に決めてから自分たちで行う準備は特にない。強いて言えば、家族を率いた大きな引越しへの心の準備ぐらいであろうか。 

 引越しは2日間を想定。1日目は2つの子ども部屋、リビング、マスター・ベッドルーム、2つのバスルームの荷物の梱包から移動、開梱まで。2日目はキッチンと倉庫、アウトドア・アイテム、そして残った荷物全ての梱包、移動、開梱を予定。 

【1日目】 

 午前8時に作業をスタート。さすが日系の会社、時間はしっかりと守る。ちょうど8時に引越し現場に入られるようスタンバイ。たとえ少し早く着いていたとしても、朝の子どもの学校の用意などで格闘しているこちらの状況に気を使われているのか、午前8時になるまで外の車で待っているのを見た。オーストラリアでの生活、特にトレーディーの人たちにおいては時間にルーズであることにこちらも慣れているため、日本のような時間厳守な行動にまずは感動。 

 スタッフは社長を含め計6人、全て日本人だ。皆さん若くてさわやかな体育会系。マネジャーもとても誠実でしっかりされており、チーム内の指示系統も明瞭。普段の生活において英語にはほとんど不自由しないが、それでも日本語で細かいニュアンスをお伝えできることはありがたい。日本文化特有の家で靴を脱ぐことに関しても、快諾頂く。この部分はいつもローカルの人と交渉をしなければいけない。彼らは足の安全を確保するために作業中は靴を履くことを主張し、それは十分に理解はできるが、やはり土足で家に上がられることに日本人は抵抗を感じる。 

 8時からスタートダッシュをかけるかのように、ものすごいスピードで子ども部屋からアタック。作業開始1時間後には2つの部屋の梱包と家具の移動をほぼ終了。こちらがついていけないくらいの早さで行われるスピードでの作業にびっくり。これは良いチームだ。 

 1日目の荷物の梱包と移動は、中型のトラック2台、バン1台、梱包にはプラスチックの大きなかごと衣類を収納できるボックスを使用し、ダンボールは小物を除いてほぼ使われなかった。なるほど、これはいい。不要なゴミも出ないし後でダンボールを開梱したり処理するストレスもほぼ不要。むしろダンボールに梱包することで、余分な作業工程とストレスが増えるのではという気付きを得る。 

 瞬く間に自宅が空っぽになるのを寂しさとうれしさの葛藤を感じて眺めながら、やはり引越しは、できれば他人にお任せするのが良いと納得。自分で引越し作業をすると、思い出や思い入れのある自宅を離れる作業となり、感傷に浸りながら作業のスピードも遅くなり心身共に疲れてしまう。第三者にお任せすれば、そのエモーショナルな部分が作業に与える影響はなく淡々と作業をこなしてくれる。これには十分な価値を感じる。 

 当初の予定では旧居で最後の夜を過ごす予定であったが、あまりにも作業が順調に進み、転居先の方が家らしい状態になったため、新居で夜を過ごすことに変更。ベッドのマットレスをどちらの家に置くかなど細かい調整が生じたが、その変更対応にもRiver Express社には快く対応して頂けた。 

 1日目の作業は、午後3時30分に終了。作業状態を一通りスタッフと一緒に確認頂き、ゴミ1つ残さず現場を去られた。 





【2日目】 

 2日目の荷物の梱包と移動は、中型のトラック1台、バン1台。1日目と同じ6人のメンバーで行われた。前日と同様午前8時ちょうどにスタート。この時点で既にチームとして信頼がある程度できているため、2日目の作業に関する簡単なブリーフをした後は大半の作業をお任せすることができた。おかげで、こちらは溜まっていた自分の仕事に集中できることに。 

 やはり引越しもプロジェクトであり、チーム間の信頼が重要であると改めて認識する。マイクロ・マネジメントをするのではなく、どの部分をお任せし、同時に自分がこだわる絶対にお願いしたいことは明確にお伝えする。明確なコミュニケーションと双方間からの信頼が重要であることは間違いない。それができることで、依頼主と引越し業社双方がお互いに気持ちよく作業に集中できる。 

 基本的にはスタッフの方々にお任せしながら、作業の途中で新居に持って行くべき物とそうでない物など分からなければ逐一確認してくれる点もとてもありがたい。任せられた部分と確認が必要な部分を、業務経験から上手に判断をして作業をしている印象を受けた。瞬く間に作業は進み、開始後約3時間で旧居の荷物は全てトラックに積まれた。 

 新居に家具を入れる際は、床に傷が付かないようにするパッドを家具の脚の裏に1つひとつ丁寧に付けて頂いたり、木の家具の脚の裏に黒カビが生えている所に薬を付けて丁寧に拭き取ってくれたり、ただ単に家具と荷物を運ぶだけではなく、我々が新居で綺麗に気持ちよく住めるように考えて作業をしてくれていることも大変ありがたいと感じた。 

 2日間ともランチタイムをまたいでの作業であったため、空腹を避けて作業に集中して頂けるように、ほんの気持ち程度であるがお腹の足しになるようなカツパンやお茶を人数分用意した。日本で引越しをする場合、祝儀や寿司を出すような習慣があるエリアもあるようだが、ここはオーストラリア。そういったチップ的なサービスは見積もの額に入っているという認識で良いだろう。ただし、作業をしてくれている人たちもランチタイムにはお腹が空くし喉も渇くので、何かしら用意する方が気持ちよく作業を進めてくれるだろうと考える。 





 2日目の作業は1日目よりも更に早く午後2時には終了。あとは新居で自分たちで開墾されたアイテムの整理をするのみという作業段階までしっかりとサポートをして頂けた。 

 日本国内で噂に聞くような、梱包前に棚や物の置かれ方の写真を撮って、その通りに新居の棚に陳列するというサービスは、今回そもそも依頼も期待もしていなかった。しかし、日本人チームならではの丁寧さ、気配り、清潔さは確かに付加価値として感じることができる。本記事のタイトルでもある「日本式の引越しサービスはシドニーに存在する!?」に改めて立ち返り、筆者の経験から「シドニーには日本式の引越しサービスは存在する」と言える。 





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