海のリズムに合わせて暮らす 波乗り天国シドニーの魅力
Surfing Sydney
大自然とグローバル経済が共存したこの街では、毎日サーフィンしながらプロフェッショナルなキャリアも両立できる。「以前からサーフィンに憧れていた」「単純に海が好き」「新しい試練に立ち向かいたい」…。そんな人は、シドニーに住んでいる特権を生かしてサーフィンを始めてみてはどうだろうか。
(ジャーナリスト:守屋太郎)
ほぼ毎日、波がある。それでいて、グローバルなビジネス環境で仕事も頑張れる。そんな先進国の大都市は、世界でもシドニーだけじゃないでしょうか。
サーフィンは競技スポーツである以前に、ライフスタイルの側面が大きい。波高、波長、うねり、風、潮の満ち引きといった地球のリズムに合わせて海に入ることは、サーファーにとって生活の一部である。
軟派なイメージも強いサーフィンだが、実際は、体力、スキル、メンタル、全ての面において、ハードなスポーツである。余程の運動神経の持ち主でなければ、ビーチに数回、行っただけで簡単に波に乗れるようにはならない。ゴルフのようにレッスン・プロが手取り足取り教えてくれるものでもない。リフトに乗ればゲレンデの上に行けるスノー・スポーツと違い、まずパドル(漕ぐ)する力がなければ、沖に出ることさえできない。せっかく海に行っても、湘南などでは全く波がないことも珍しくない。ある程度楽しめるレベルまでに上達するには、一定の期間、例えばひと夏、海に通い詰めることのできる時間と労力が必要になる。
広義での波乗り(サーフィン)とは、低気圧などの強風によって海上に発生した波紋が、うねりとなって岸に届き、砂州や岩棚、岬といった浅瀬に乗り上げて崩れた波に乗る、ウォーター・スポーツである。崩れかけた波の壁を右または左に走るのが基本動作だが、波頭にボードを当て込む、波の空洞(チューブ)に入る、といったさまざまな技がある。ただ、波乗りに適した地形や自然条件を備えた海岸は限られていて、どこにでもあるわけではない。
それらの点で、シドニーはサーフィンに理想的な環境に恵まれている。サーフィン目的で移住したという日本人のビジネス・パーソンはこう話す。
「毎朝サーフィンしても9時に出社できるし、真夏は8時半頃まで明るいので仕事帰りにも海に入ることができます。海から上がり、夕陽を見ながら飲むビールは最高です。ビーチの近くに住めて、1年を通して海水温の寒暖の差が小さく、ほぼ毎日、波がある。それでいて、グローバルなビジネス環境で仕事も頑張れる。そんな先進国の大都市は、世界でもシドニーだけじゃないでしょうか」
始める前にこれだけは知っておきたい
サーフィンを難しくしている最大の要因は、間違ったボード選びにある。サーフボードといっても、1メートル前後の発泡素材のボードに這って乗る「ボディーボード」、1.8メートル前後のグラスファイバー製の「ショート・ボード」、2.7メートル以上の「ロング・ボード」などさまざまだ。
しかし、短くて浮力がない上級者向けのショート・ボードから始める人が多いため、なかなか上達しない。初心者には、ショートとロングの中間くらいの長さで、浮力が高い、発泡素材製の「ソフト・ボード」をお薦めしたい。1日目は、まず体験レッスンに参加してみよう(右ページURL参照)。こうしたレッスンでは、初心者向けのソフト・ボードでまず波を捕まえ、ボードの上に立つことを教えてくれる。
初めのうちは、アウトサイド(沖)から崩れる波には乗れないので、インサイド(岸に近いエリア)でいったん崩れた白波(英語で「ホワイト・ウォーター」)に乗る練習を重ね、タイミングとコツをつかもう。岸に向かってクロールのように両腕でボードをパドル(漕ぐ)して波を捕まえ、推進力が付いたらボードの上に立ってみる。
安全対策も欠かせない。足とボードをつなぐレッグ・ロープが万が一切れても、岸まで帰れる泳力は溺死しないために不可欠だ。ビギナーは、波情報サイトでうねりの高さが1~2ft(波が崩れる時点でヒザ~コシの波高)の小波を狙おう。皮膚ガン対策の耐水性日焼け止めクリームも必須。サメの出没情報や、ブルーボトル(カツオノエボシ)の大量発生にも注意したい。
良い波に乗るには、波の高さやうねりの向き、風向き、潮の満ち引きといった海の自然のサイクルを知ることも不可欠だ。そのためには下記の2つの波情報サイトを活用したい。いずれも詳細情報は有料だが、主なビーチのリアルタイム映像などを無料で閲覧できる。
主な波情報サイト
■Surfline with Coastalwatch
Web:www.surfline.com
■Swellnet
Web:www.swellnet.com