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コシウスコ国立公園の野生馬害獣化問題再燃

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公園自然保護原則と開拓時代郷愁派が激突

 オーストラリアは世界的にも人口の都市集中化の進んだ国であり、農牧の経験もない人口が大多数を占めている。しかし、アメリカの牧場とカウボーイのように馬に乗ったストックマンや開拓時代の農夫の姿がオーストラリア文化の源泉のような幻想を誘っている。

 ニューサウスウェールズ州南部の山岳地帯コシウスコ国立公園には膨大な数の野生化した馬が棲息しており、国立公園管理者は地域の自然を荒らす害獣として野生馬の駆除を検討してきたが、一方で、馬に乗って原野を自由に走り回るロマンチシズムに取り付かれた人々が野生馬駆除に反対しており、しばしばオンラインでの嫌がらせ、財産に対する乱暴狼藉、殺害脅迫にまで発展している。

 コシウスコ国立公園で40年間自然保護官を務めてきたポール・ハーディ氏は、このハイ・カントリーと呼ばれる山岳高地の野生馬を巡る論争が暴力事件に発展するところを何度も見てきた。ハーディ氏は、「脅しも、『お前を痛めつけてやる』から『お前の子供がどこの学校に通っているか知っている。子供らを捕まえるのはわけない』というような調子に変わるというのは尋常ではない」と語っている。

 ハーディ氏は、「山岳コミュニティが完全に分裂している。友人や隣人同士が口も利かなくなったり、脅迫するようになり、あるいは議論を避けるようになっている。コシウスコ国立公園の独特な自然を守ることが完全に無政府状態になってしまっている。どうかしてしまっている」と語っている。

 学者は、馬の数は毎年20%ずつ増えていると推定しており、エコロジスト、自然保護官らと共に、「地域の在来植物動物を守るためには大規模な野生馬駆除をしなければならない」と主張している。学者の研究論文は明確であり、常に一貫性があり、しかも査読を受けているが、乗馬にオーストラリア文化の原点を見たがる人々は地元政治家にも働きかけ、事実上、何年にもわたってコシウスコ国立公園内の野生馬駆除を妨害し続けてきた。

 彼らは、野生馬の環境破壊の証拠を否定し、野生馬頭数が急増しているという頭数調査を拒否し、学者らを「ウソつき」「腐敗」と罵倒している。さらには現在14,000頭とみられる地域の野生馬を11,000頭以上駆除しようとする政府の計画にも反対し、「公園内の馬は3,000頭しかいない」と主張している。

 さらに、野生馬駆除を主張する者に対して、オンラインで暴力的な嫌がらせをしたり、財産破壊、殺害脅迫、さらには国立公園野生局職員に対して暴力的な態度を取るため、局では警備を強化し、職員のカウンセリングまで行わなければならなくなっている。
■ソース
The battle over Australia’s brumbies intensifies in a clash of culture, colonialism and conservation

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