生きたまま寄贈すれば、人命救う抗毒素の製造に役立つ
噛まれると死に至ることもある毒グモ「ファンネルウェブ・スパイダー」(ジョウゴグモ科のクモの総称)の捕獲例が、オーストラリア東部シドニー周辺で増えている。公共放送ABC(電子版)によると、合計12匹のファンネルウェブ・スパイダーが最近、シドニー北郊ホークスベリー市の施設に投函された。毒グモの活動が活発化している可能性があるという。
シドニーや北方のセントラル・コースト、ニューキャッスルの獣医や病院、市役所などには、市民が捕まえた毒グモを投函できる施設がある。寄贈された毒グモは、シドニー北方にある動物園「オーストラリア・レプタイル・パーク」に送られ、噛まれた人の体内の毒を中和する「抗毒素」の原料に使用される。
シドニーの自然史博物館「オーストラリア博物館」によると、数種類あるファンネルウェブ・スパイダーの中でも特に「シドニー・ファンネルウェブ・スパイダー」のオスは猛毒を持っている。シドニー市民の間では都市伝説として恐れられており、実際にこれまで13人の死亡例が報告されている。しかし、1981年に抗毒素の製造が始まって以来、死者は1人も出ていないという。
「安全に捕まえて寄贈して」と専門家
オーストラリア・レプタイル・パークの運営部長を務めるビリー・コレットさんはABCラジオに語ったところによると、毒グモの寄贈数は例年、繁殖期の春から夏にかけてピークを迎えるが、今年は天候不順のためか冬になって捕獲が増えている。ただ、同園は国内で必要な抗毒素の製造に十分な量の毒を確保しなければならないため、毒グモの寄贈が増えているのはありがたいという。
同園は約500匹のオスの毒グモを飼育。1週間に一度、毒を「収穫」して、抗毒素を製造している。コレットさんは、毒グモを見つけたら安全に捕獲して、市の施設などの投函するよう呼びかけている。動きが遅くておとなしいので、捕獲は簡単だという。
「空き瓶やコップをクモの上に被せ、その下に紙かプラスチックをスライドさせて裏返し、逃げないようにフタを閉めます。(クモが呼吸できるように)フタにいくつか穴を開け、少しだけ水分を入れておきましょう」(コレットさん)
■ソース
Funnel-web spiders unusally active in Sydney boost Australian Reptile Park anti-venom stock(ABC News)
Funnel-web Spiders(Australian Museum)