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【PR】起業家特集 2020/doq Pty Ltd 作野善教さん

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起業家特集 2020

doq Pty Ltd
作野善教さん

2009年の創業以来、日本の政府機関や地方自治体、日系企業のイベントやプロモーションなど、数々のマーケティング事業を手掛け、躍進を続ける在豪日系マーケティング会社ドック。10年目の節目を迎えた2019年には、シドニー・デザイン・アワードの「インテリア・デザイン──コワーキング&スタジオ・スペース部門」で銀賞を受賞、エスニック・ビジネス・アワード2019ではスモール・ビジネス部門のファイナリストに選出されるなど、輝かしい功績を残した。年々業務の拡大を続ける同社の強みはどこにあるのか。代表の作野善教さんに話を聞いた。

●プロフィル 立命館大学卒業後、外資系広告代理店ビーコン・コミュニケーションズに就職。大手アメリカ製品・ブランドの日本市場におけるマーケティング戦略の企画立案及び実施管理を担う。その後、アメリカの大手総合広告代理店レオバーネットのシカゴ本社において大手アメリカ製品・ブランドのグローバル市場展開におけるマーケティング戦略立案、ブランド・アーキテクチャー及びクリエイティブ・キャンペーンの開発をグローバル・アカウント・スーパーバイザーとして遂行。2009年1月にクロスカルチャー・マーケティング・コンサルティング会社doq Pty Ltdをシドニーで創業。2011年、NSW大学Executive MBAを取得。18年11月には、Hyper Island Singapore (スウェーデン本校)で、デジタル分野で世界屈指の修士課程として定評のあるDigital Media Managementコースを修了。14年にはクロスカルチャー・マーケティング・エキスパートとして TEDxTitechに登壇し、以後日豪の大学や様々な企業イベントでのキーノート・スピーカーとして活躍(www.yoshinorisakuno.com)。

信頼が何よりも大切
欧米豪での経験を武器に日本の魅力を世界に伝えたい

2019年NSWエキスポート・アワードにおいて、3年連続でファイナリストに選出されたドックのメンバー
2019年NSWエキスポート・アワードにおいて、3年連続でファイナリストに選出されたドックのメンバー

──現在、オーストラリアを拠点に日本と世界をつなぐビジネスをされていますが、世界を視野に活動しようと考えたきっかけは何だったのでしょう。

立命館大学経営学部在学中に参加した吉本興業のインターンシップ・プログラムが1つのきっかけでした。業務内容は、外国人アーティストの来日公演を手伝うというものだったのですが「日本と世界をつなぐ」面白さを肌で感じました。その後、外資系広告代理店ビーコン・コミュニケーションズ、アメリカの大手総合広告代理店レオバーネットにてヨーロッパのクライアントを担当し、出張で世界中を駆け巡りながらグローバル市場を舞台に仕事をしてきましたが2009年1月、オーストラリアへの移住をきっかけに日本と世界をつなぐクロスカルチャー・マーケティング・コンサルティング会社ドックを創業しました。

──そもそもオーストラリアに移住し、起業へと至った経緯はどのようなものだったのですか。

2009年1月に米国シカゴで勤めていた外資系広告代理店を退職して職なし、コネなし、金なしでオーストラリアに移住しました。移住の理由はひと言で言うと「家族愛」です。妻がオーストラリア育ちで彼女の家族もパースに住んでいるため、いつか豪州に戻りたいと考えていたので、私はそれに付いて来たという経緯です。

起業自体は中学生の時から目標の1つとなっていました。思春期かつ反抗期で将来に対して不安を抱えていた時に、中学校の恩師に「で、作野は結局何になりたいの?」と聞かれたんです。その時すごくかっこいい車が横を通ったので「あの車に乗りたい」と答えたところ、「じゃあ、経営者になりなさい。そのためには、経営学を学んで会社を立ち上げればいい」と言われました。今思うと、その先生の言葉通りに生きたからこそ経営者へと辿り着いのだと思います。

──起業に際し、ご自身の強みをどのように捉え、どのようなビジネス展開を思い描きましたか。

グローバル市場で培ってきた経験を強みに、日系組織の海外市場進出、及び外資系企業の日本市場進出におけるマーケティングを全面的にサポートすることを目指しました。以来、観光、食や映画などの文化、ライフスタイル製品、教育の分野において、スタートアップ・中小企業から大手民間企業・政府機関まで、多岐にわたってクロスカルチャー・マーケティング事業のお手伝いをして参りました。

──その後、16年4月にはドック・ジャパン、17年7月にはdドックを立ち上げています。

事業を広げていく中でより手厚くクライアント・サポートし、また豪州企業や外資系企業の日本参入をサポートするには日本にも拠点が必要と考え、ドック・ジャパンを立ち上げました。それに加え、昨今マーケティングにおいて、顧客を中心に考えるデジタル・マインドセットやデジタル・イノベーションの重要性が更に一層高まっているため、クロスカルチャーなデジタル・ソリューションに特化したdドックを立ち上げたという経緯になります。

「インテリア・デザイン──コワーキング&スタジオ・スペース部門」で銀賞を受賞したオフィス
「インテリア・デザイン──コワーキング&スタジオ・スペース部門」で銀賞を受賞したオフィス

創業時の苦労

──起業時、及び起業後にはいろいろと苦労や困難があったと推察します。それをどのように乗り越え、また、今の成功につながげることができたと思われますか。

まず直面した苦労と言えばお金ですよね。創業時というのは全く収入がないんです。自分の貯金を切り崩しながら生活しているので、怖くてコーヒー1杯すら買えなかったんですね。そこで、少しでも安くおいしくコーヒーを飲めるように、コーヒー・マシンを買ってそれを大事に使っていました。そんな状況が2年近く続きました。

そして、ある程度会社が成長し出した頃、初めて数千万円規模の大きめのプロモーション事業を受注しました。しかし、その規模の仕事を受けるためには、当然、その事業をデリバーするための仕入れのコストが掛かります。そこで直面したのがやはりお金です。仕事を終えて納品しないことにはお金は入ってきませんが、納品するための仕入れ代がないのです。過去に取引もない会社で信用もないので仕入れ代も必ず前払いしなければなりません。そこで僕がやったのが、自分と妻の預金を切り崩し、更に、当時持っていたパーソナルのクレジット・カード3枚の全ての枠を使って1,000万円以上の資金をかき集めるということでした。

──ここでおっしゃっている「仕入れ」というのは、メディアでの露出枠を買うというようなイメージですか。

プロモーションのために、オーストラリアの大手紙メディアの枠を10数ページ分購入しました。先方のベテラン担当者には「40年ここで仕事をしてきたけど、メディアをパーソナル・クレジットで買ったのはお前だけだ」と笑われました。

──クレジットカードを使うと利息もかなりの額になりそうですね。

完納するまではぎりぎりの生活でした。更にその間、僕の信用をギリギリまで使い切ってお金を借りているので、もう他に金策の手がないわけです。ですから綱渡りでしたね。ただ、よほど大きな失敗をしない限りは絶対にお金が入って来ることは分かっていたので、きちんと確実に納品することに意識を集中しました。

──かなりストレスを感じる状況だったと思います。

そうですね。ただ、ここは僕の強みでもあると思うのですが絶対に諦めないという信条でやっていました。昔から何ごとにおいて誰にも負けないくらいの好奇心と冒険心を持っています。やったことがないことはやってみないと気が済まない性格なんです。プライベートでは、オートバイで日本を縦断したり、アメリカを車で1周したり、メキシコを縦断したり、ヨーロッパをバックパッカーとして周ったり、パタゴニアの雪山に登ったりもしました。

ビジネス面においても、経営の知識やフレームワークの虜になった時には起業しながらMBAを取得したり、より高いレベルのデジタル・ソリューションを創出できる知識を付けるためにシンガポールの大学院にシドニーから1年間、3週間に1回のペースで飛行機で通学していました。昔からギブ・アップが大嫌いなので、ビジネスにおいても唯一の競合はいつも自分自身だと考えています。今後、ビジネスがうまくいかない時が来るとしたら、市場や競合ではなく、自分自身に負けた時なんだろうなと想像しています。

──経営者として、ストレスへの対処法などできるアドバイスはありますか。

仕事と同じくらい情熱を掛けることを持つことですかね。私の場合は幼少の頃からサッカーを続けており、現在も社会人1部リーグ(35歳以上)で現役選手としてプレーしています。平日もランチ・タイムに週2回、平日夜と週末に1回ずつプレーして、合計週3~4回はプレーし続けています。フィールドに立つと人種や社会的地位が一切関係なくなります。あの感覚が大好きですね。あとは週2回、ビクラム・ヨガの教室に通っています。40度の暑いスタジオで90分間バス・タオルがびっしょりと濡れるまで汗をかきながらプラクティスに励むことで、メンタルを安定させより良い意思決定ができるコンディション作りに役立てています。

オーストラリアの市場とドックの強み

会社が求める人材に関するフレームワークを説明する作野さん
会社が求める人材に関するフレームワークを説明する作野さん

──オーストラリアの市場をどのように捉えていますか。

オーストラリアに移住した理由は家族がきっかけなので、オーストラリアを選んで起業したわけではないのですが、非常に面白い市場だと思います。オーストラリアは先進国の中でも移民一世による多文化、多民族で形成された言わば世界市場の縮図だと思います。しかも欧米市場と比べると参入コストや情勢リスクも低く、マーケティングやイノベーションの観点で考えると理想的なトライアル市場です。

例えばマクドナルドのマックカフェ、テスラのパワー・ウォール・バッテリー、シティバンクのスマホ・アプリケーション等、グローバル企業がオーストラリア市場でコンセプトの実装テストを行い他市場に展開するという例は後を絶ちません。その流れに目を付けてオーストラリアを日本企業や日本の製品が欧米に進出する前のトライ&エラーができる市場として捉えて、前職で培った新規製品やサービスのマーケティング戦略や実施管理を手掛けることで、世界市場に進出する日系企業に大きなインパクトを与えることができると考えました。

──ビジネスが大きくなってくると社員のマネジメントの苦労も出てくるのではないでしょうか。

従業員の視点から言えば、人生の3分の1くらいの時間を会社に費やすわけです。ですから、社員が会社に投資してくれるに値するやりがい、報酬、機会をきちんと提供できるのかという点が重要になります。ただ、人間は十人十色です。個人の状況も違うし、求めるやりがい、価値感も違います。そこをきちんと理解し、その人に会社というエコシステムを使って、機会ややりがいをカスタムできるかという点が非常にチャレンジングです。

人によって、その会社にいる目的は違うので、そこを間違えると長続きしないし、パフォーマンスも上がりません。会社が成長する時期に、そうしたエコシステム作るにはどうしたらいいかと、けっこう悩んで考えました。去る者追わず、来るもの拒まずという姿勢でやっていた時期もあったのですが、やはりそれだと戦略性が全くないし、体力勝負でボリューム・ベースになってしまいます。そうすると働いてる人たちはすり減っていきます。今はもっと戦略的に、やらないことを決めるようにしています。やらないことを決め出すと、逆にやることがすごくクリアになってきちんと集中できるし、スキルも上げることができます。そういう循環に変わり始めたのはこの2年間くらいですかね。「人」というのは組織にとってやはりすごく難しい課題で、決してシンプルにはいかないですね。

──現在は社員20人ほどと伺っていますが、人数が増えてくると1人ひとりを直接ケアすることは厳しくなります。そうなると、どのようなチームを作るかという課題が出てきます。

以前読んだ雑誌で、チームとして1人がまとめられるのは6人までが適正という話を聞いたことがあります。そのため、僕がミドル・マネジャーに対してやっていることをミドル・マネジャーが下のスタッフに対してきちんとできるかがキーだと思います。日々、トライ・アンド・エラーですね。

──社員にはどのようなことをメッセージとして伝えていますか。

社員には最高のプロフェッショナリズムに対して最大の柔軟性を与えることを心掛けています。従来のマネジメント方法のような「管理」で社員のパフォーマンスを最大化することはもう無理です。特に多国籍や比較的若い社員には「管理される」という言葉の概念すらないでしょう。いかに生き甲斐と思える機会を作り出し、それに向かってプロとして誰よりも深く考え、ベスト・チームを組んで全力で取り組むか。それが重要だと考えます。そうするために重要なことは、最大限の柔軟性を与えることだと考えます。弊社の最も優秀な社員の1人はサーフィンが大好きなので、波が良い日は会社に来なくて良いと話しています。でもサーフィンが終わってからその社員が手掛ける企画や仕事は本当にすばらしく、最高のプロフェッショナリズムを提供してくれます。

また我々はマーケティングのプロフェッショナル集団です。消費者や市場がどのように動いていくのか、洞察力を常に最大化させなければいけません。オフィスにこもってコンピューターの前に座っていてもそんなことはできるわけがありません。どの事業においてもマーケティングに関わる限り、いかに新しい世界に飛び込んで、そこにいる人々と触れ合い、学びを得るかが重要です。例えば、弊社は毎週金曜日午後4時にオフィスをクローズします。4時以降は友人や自分のネットワークの人びととキャッチアップをしたり、習い事をしたり、とにかく外で何が起こっているのかを学ぶ機会を創るよう促しています。

社員との関係において常々心掛けている事は、彼らのために私自身を常に「Available」にすることです。日々の事業は社員がリーダーシップをとり推進してくれていますが、やはり行き詰まったり難題にぶつかることは避けられません。そういった時にすぐに相談や話ができる関係性を大事にしています。また社員が私に相談する際には、常に「提案で終わる」ように促しています。事業の状況を鑑みて「このオプションが最もベストな選択肢であり、その理由は……」というように、考えを必ず社員から私に提案してもらい、その提案に対して私が考えを足す、もしくは議論を行います。それで双方が納得した方法を会社としてコミットしてアクションを起こすことを目指しています。

まさに今は産業革命の時代

──市場はどんどん変化しますが、貴社では時代の変化にどのように対応していますか。

スモール・ビジネスの経営者としてはこの時代の変化をチャンスとして見ています。今はこれまで当たり前に良しとされてきたサービスや製品が覆される世の中です。その当たり前を覆しているのが我々のようなスタート・アップであったりスモール・ビジネスです。こんなに面白い産業革命の時代に、仕事でもある程度の知見と経験がある40代のビジネスマンとして戦うことができて本当にラッキーだと思いますし、毎日わくわくしてたまりません。チームの皆には変化に対応できるメンタルと体幹を鍛えるよう促しています。

──日系コミュニティー内での貴社の立ち位置と、それを踏まえ経営において優先していることについて教えてください。

弊社は日系コミュニティーとローカルコミュニティーの橋渡し的な立ち位置にいると思っています。我々のクライアントは日系企業がほとんですが、社内の3割、あるいは共に事業を運営するメディア会社やベンダー・パートナーは全てローカル企業です。これが日本のサービス・レベルを提供しながらローカルに本質的に根付いたアウトプットを出す秘訣です。

──今後の展望、貴社の目標を教えてください。

企業の強みは常に目に見えないものだと思います。目に見えているものというのは、分かりやすくて分析されやすいですし、ものすごいスピードでコピーされます。そのため、企業として差別化していくためには、目に見えないもの、例えば企業文化であったり、人が持ってる感情、人が持っているスキルこそが重要です。特に弊社のようにプロダクトがなく、サービスで運営してるビジネスでは、資産はラップトップとモバイル、オフィスくらいしかありません。ですから重要なのは人なのです。日本人であれば海外での経験が何かしらあって、物事を見る時にちゃんと日本側、オーストラリア側、双方の観点、2つ以上の観点から考えたり、見る事ができる人が重要です。

たとえ異なる業種や業界で働いていた人でも、我々と共感できるビジョンを持ち、いろいろと面白いことに取り組んできた人も重要です。そういう人びとをきちんと魅了できるようなプラットフォームがドックという会社でありたいなと思ってます。

また、今後の人生でやりたい仕事は2つあります。1つは、シドニーにジャパン・タウンを作りたいということです。フィジカルとデジタルを最大化し、伝統と新しい文化が交じり合うことで面白い化学反応を起こすことを期待しています。ローカルの人びとと日本人がお互いに楽しみながら、永続的に日本とオーストラリアがつながるプラットフォームを構築したいと考えています。

もう1つは、次は起業家としてアメリカに挑戦したいです。アメリカには1度目は留学生として、2度目はサラリーマンとして挑戦しましたが、サラリーマン時代に自分の実力でも、現地の企業相手に価値を提供することができるという手応えを感じた頃にオーストラリア移住になったのでやり残した感が否めません。前回はアメリカ企業の社員として挑戦したわけですが、次は日本の起業家として挑戦して、日本のすばらしさをしっかりとアメリカの人びとにも理解して頂けるような取り組みをしたいと考えています。

──最後に、起業を目指す方へのアドバイスをお願いします。

ニッチの中での勝者になることを目指されると良いのではないでしょうか。絞り込んだインダストリーの中でポール・ポジションを築くようなことを繰り返していくと、いつの間にか、大きな池の中の大きな魚になれると思います。ですが、最初はやはり小切りにしたカテゴリーの中できちんと勝利を取っていくというプロセスを踏む方が僕はいいかなと思います。フェイスブックだって最初はハーバード大学のものすごく限られたコミュニティーの中で、学生同士がつながるプラットフォームでした。

また、もう1つはやはり信頼が重要です。信頼は目に見えない貨幣だと思うんです。信頼がないと、絶対に仕事が来ませんし、金策もできず、そもそも人が働いてくれません。お金を追う以前にまずは信頼を作ること。僕は常に信頼が一番大事だと思っています。

doq Pty Ltd
代表・作野善教(さくのよしのり)

■住所:Suite 89, 26-32 Pirrama Rd., Pyrmont NSW
■Tel: (02)8084-0043
■Web: www.thedoq.com

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