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オーストラリアで唯一!? 日本クオリティの高級食パンを提供するAKIPAN店主にインタビュー、そのとんでもないこだわりに驚愕

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日豪プレス・インターンシップ・プログラム取材記事①

AKIPANのオーナー・小野一秋さん

 シドニー中心部に程近いピアモント(Pyrmont)に位置し、ライトレール「The Star駅」から徒歩7分の所にあるパン屋「AKIPAN」。オーナーは、プロカメラマンとしてさまざまなシーンで活躍している日本人の小野一秋さんだ。本記事では、日豪プレスにインターン生として在籍した3人の大学生が、小野さんにインタビュー。食パンへのこだわりや、思いなどをインタビューしつつ同店の人気の秘密に迫っていく
(文・写真=小巻花菜子、杉山明土、小林穀亮)

店のウィンドウから見える位置に焼き上がった食パンが並ぶ

食パン店をシドニーにオープンした理由

 小野さんが高級食パン屋「AKIPAN」を出店したのは2024年2月のこと。大手自動車メーカーの広告写真を撮影するなどカメラマンとして活躍し、当地では、元日本代表サッカー選手であり実業家の本田圭佑氏がメルボルン・ビクトリーに在籍時代に1年間専属カメラマンも務めた経験も持つ。プロのカメラマンとして活躍する傍ら、食パン店を営む理由について伺った。

ベーカリーやカフェ文化が根付いているオーストラリアで食パン専門店を始めたのはなぜですか。

 日本の文化をオーストラリアに紹介したいと思ったのが1つのきっかけです。オーストラリアではパンといえば、ハード系のパンであるサワードウなどがメインで売られています。そのため、年配の人や移民のアジア系の人たちは、手に入れやすいサワードウを食べますが、一方で、実は柔らかいパンが恋しいと言っている人も少なくありません。柔らかいパンは世界中にありますが、日本の柔らかいパンというのは、日本で独自に進化したもので、一種の「文化」であると私は考えました。それがオーストラリアで食パンを作るまでに至った思いですね。また、付け加えると、シドニーでは、チャイニーズやコリアンを始めとしたアジア系の方々が、砂糖やクリームが入っている、日本でいう菓子パンに相当するパンを作り、日本語表記で「食パン」として売っています。もちろん商品としては良いのでしょうが、それを日本語で「食パン」としているのは違うなと。そういったことも鑑みて、間違いのない物を届けるため、本来の日本の食パン作りを始めたという側面もあります。

小野さんこだわりの食パン

小野さんが作る食パンのこだわりについて聞かせてください。

 日本の道具と日本の粉を使って、日本のパン作りをシドニーで再現している点です。オーストラリアでは、およそ5〜6年ぐらい前から、日本の食パンが認知され始めましたが、多くの店で販売されている食パンは、オーストラリアの粉で作られているため、私からすると本物ではありません。要するに味が違うのです。形は食パンでも、日本人が認識している食パンではありません。そこで私は粉を日本から輸入し、自分なりのレシピで日本の食パンを日本の作り方で再現することにこだわりました。

店内の様子

食パン店を営んでいる上で感じる、やりがいについて教えてください。

 当店では、食パンだけでなく、コーヒーや他のメニューも提供し、カフェとして楽しんで頂いております。20代のころ、将来的に東京の青山に1つぐらい自分のカフェを持てたら良いなと思っていましたが、今、シドニーのダーリング・ハーバーのすぐ近くに自分のカフェを持つことができました。ここには、例えば10年以上会っていない人など、いろいろな人が来てくれて、そういう意味でも店舗を構える価値はあったと思っています。食パン店を始めて、これまでとは違った景色が見えるようになりました。例えば、オーストラリアの有名シェフやパティシエなどがこっそり訪れてくれたりもします。しかしそれに気付くのはインスタグラムなどを見るなど、あとからということも少なくありません。そういう発見も楽しいです。日本人の有名シェフも訪れてくださるなど、うちの食パンがおいしいから来てくれているわけで、そういう点からもやりがいを感じます。

日本とオーストラリア、両国で働いた経験のある小野さんが思う海外で働く良さは何ですか。

 「日本は狭い」とよく言われますが、それは土地だけのことではないと思います。何より、人間関係が狭い、と言えるのではないでしょうか。日本では皆さんご存知の通り、すごく周りの目を気にする人が多いです。それは決して悪いことだけではないけれど、そこに時間を取られているのはもったいないです。オーストラリアにいると、そういった細かいことは気にならなくなります。ある意味、いい加減な面もある国の中で、すごく丁寧な仕事をするからこそ、受け入れられたりする面もあるのだと思います。

取材を終えて

 今回、AKIPANのオーナーである小野さんにインタビューをしてみて、カフェの競争率が非常に高いオーストラリアで生き残るために、常にお客さんを呼び続ける工夫として、定期的に新しいメニューを出したり、季節にあったメニューを考えて提供してたり、日本のパン作りをシドニーで再現するために日本の道具や材料にこだわって食パンを作っていることを知った。インタビューを通じて、小野さんの食パンに対する思いや、食パンを作る上でのこだわりについて理解することができた。(小巻花菜子)

 今回の取材を通して、小野さんが材料から道具、メニューや盛り付け方法など細部にまでこだわることによってオーストラリアの地で店を成功させることができたのだと感じた。実際にAKIPANの食パンを食べてみると、現地の他の物と比べて柔らかく、もちもちでとてもおいしかった。コーヒーや他のメニューもすごくおいしかったので、気になる人は、ぜひ足を運んでみて欲しい。(杉山明土)

 小野さんが日本の食パンに強いプライドと情熱を持って商品として開発し、それをビジネスとして継続していく意気込みを生で感じられたことはとても新鮮で興味深い体験だった。今後の自分の人生に良い影響を与えることは間違いないと感じた。また、小野さん自身が自由な価値観を持っており、自身の人生を全力で生きている姿を見て、私も心を動かされた。個人的に、小野さんの今後の活動について興味が湧いたので、日本に帰ってからも調べてみようと思う。(小林穀亮)

※同記事は、8月26日から2週間にわたり、日豪プレスのインターンシップ・プログラムに参加した東京経済大学の学生6人が、シドニーの日系企業や店舗を取材しインタビューを行ったもので、下記より他の記事も確認できる。





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