白熱!! 2020年
全豪オープン観戦ガイド
2020年グランド・スラム(以下、GS)の第1戦、全豪オープンは、メルボルン市内、ヤラ川河畔のメルボルン・パークで1月20日(月)から2月2日(日)まで行われる。前回優勝者の大阪なおみは連勝を果たすのか。全豪オープンの見どころを紹介する。(世界ランクは2019年12月2日付)
(文・写真=板屋雅博)
全豪オープンニュース速報
ディフェンディング・チャンピオンである大坂なおみ(世界ランク3位、22歳)が連続優勝を遂げるか!
全仏でGS初優勝した地元オーストラリアの新鋭アシュリー・バーティ(1位、23歳)が優勝するか?昨年の全豪覇者対地元のスーパー・スターの対決は、準決勝または決勝での対決となるが、実現すれば一番の見どころであり、世界が注目する試合になるだろう。男子では全豪と全英を制したジョコビッチ、全仏と全米で優勝したナダル、人気No.1のフェデラー、ATPファイナルで優勝したチチパスなど、ビッグ3対新鋭の戦いが見逃せない。以下に注目選手を紹介する。
大坂なおみ
一昨年の全米で初優勝を遂げ、日本人として男女を通じて初のGSチャンピオンとなった。続く昨年の全豪でも優勝しGS2連勝を飾った。大坂と言えば、時速200キロを超える高速サーブでパワーの選手と思われているが、サービス・エース、リターン・エース、ウィナー、ブレークの数が全豪出場選手の中でNo.1であり、バランスが取れたオールラウンダーに変身してきた。ハイチ出身の父から受け継いだ強靭でしなやかな体を生かしたサーブ、ストロークは大坂の強い武器である。GS参戦5年目を迎え、年齢は22歳と若いが経験的には十分で、精神面も安定してきた。スピードを抑えて中央や左右へのボールの打ち分け、ダウン・ザ・ライン(ストレートにサイド・ラインを狙うこと)、相手コートのエンド・ラインぎりぎりに深い球を打つなど自在にコントロールできるようになった。常夏の米国マイアミを拠点にしていて、暑い気候に慣れている大坂が、真夏の全豪で連覇する可能性は十分にある。
筆者は、昨年全豪の試合開始前に大坂なおみと会話をしたが、側にいたサーシャ・バイン・コーチと大坂の間に何か違和感を感じた。全豪の後、サーシャとのコーチ契約を解消し、ジャーメイン・ジェンキンスがコーチに就任したが、その後半年間は、スランプに陥った。結局、ジェンキンス・コーチも9月に解任。父のレオナルド・フランソワがコーチに就任すると、精神面で落ち着き、テニスも復調してきた。東レ・パンパシフィック・オープンで初優勝し、生まれ故郷の大阪で錦を飾った。続くチャイナ・オープンでも、世界ランク1位のアッシュ・バーティを破り優勝。WTA(Women‘s Tennis Association)ツアー5勝目を挙げた。日本人選手が2大会連続で優勝するのは史上初のことであり、スランプからの復活を印象付けた。WTAファイナルは右肩の負傷のため途中欠場して、シーズンを終えた。
アシュリー・バーティ
クイーンズランド州出身の24歳。昨年急成長して、年初のシドニー国際(470P)で2年連続準優勝、全豪はベスト8、マイアミ大会(1,000P)で初優勝して初めてトップ10入りした。全仏オープンは勢いに乗ってGS初優勝を果たした。バーミンガム大会(470P)でも優勝し、自身初の世界ランク1位を達成。チャイナ・オープン(1,000P)では決勝に進んだが、大坂に敗れて準優勝。初出場となったWTAファイナルズ(1,500P)は、初優勝を飾った。2位のカロリーナ・プリスコバを2,000Pほど引き離してダントツの年間最終順位を1位で終えた。豪州女子選手としては、2012年にサマンサ・ストーサーが全米オープンで優勝して以来のGS優勝であり、2人目の世界ランク1位を記録。久しぶりにGS優勝と世界No.1の選手が出て、オーストラリア国民が沸く中、前年覇者大坂との対決が期待されている。大坂との対戦成績は、1勝2敗。
女子シングルス
ベテラン勢では、シモーナ・ハレプ(ルーマニア、28歳、4位)が全仏で優勝。安定した実力を持つカロリーナ・プリスコバ(チェコ、27歳、2位)、新鋭では全米でGS初優勝した19歳のビアンカ・アンドレースク(カナダ、5位)が注目される。セリーナ・ウィリアムズ(米、38歳)は10位であるが、全英と全米で決勝まで進出するなど爆発力は変わらず、怖い存在である。
錦織圭
日本期待の錦織圭(13位)だが、遂に30歳の大台に乗った。昨年1月のブリスベン国際(250P)では、決勝でメドベージェフに勝利し、2016年のメンフィス・オープン以来3年ぶりにATP(Association of Tennis Professionals)ツアーで優勝した。全豪オープンでは、3年ぶり4度目のベスト8進出を果たし、世界ランクは7位に上昇。初参戦となったABNアムロ世界テニス・トーナメント(500P)では準決勝まで進出し、フェデラーを抜き6位に浮上。バルセロナ(500P)でも準決勝まで進出。全仏オープンでは、昨年の全英から4大会連続のベスト8進出となり、GS5大会連続ベスト8以上という快挙を成し遂げた。
全英以降は、右上腕部の損傷のために精彩を欠き、ウエスタン・アンド・サザン・オープンで西岡良仁との日本人対決に敗れ、全米でも豪州の新鋭デミノーとの初対戦で敗退した。全米以降、残りのシーズンを全休した。約9年続いたダンテ・ボッティーニとのコーチ契約を解消し、10月には右ひじの手術を受けた。最新ランキングでは13位に後退。トップ10から陥落したことで、全豪では4回戦でビッグ3と対戦する可能性がある。昨年後半は、思い切って全休を取り、右ひじの状態もかなり回復している。テニス自体の調子は悪くないので、組み合わせによって上位進出は十分に可能性がある。全豪には、マイケル・チャン・コーチの体制で挑む。
錦織選手は日豪プレス紙面記事掲載後に残念ながら2020年全豪オープンの欠場が発表された。同選手は「私のチームと考えた結果、最高峰のゲームに参加するための万全の状態には無いと判断しました。全豪オープンは私の好きな大会であり、非常に大きな決断でした。できるだけ早くコートに戻るために、チームの皆さんと全力を尽くしていきます。皆さんの応援に感謝しています。」とのコメントを残している。
男子シングルス
昨年は、ノバク・ジョコビッチ(セルビア、3位、32歳)が全豪と全英、ラファエル・ナダル(スペイン、33歳、1位)が全仏と全米と2人でGS優勝を分け合った。
ロジャー・フェデラー(スイス、37歳、3位)は、3年ぶりにGS未勝利に終わったが、ドバイ(500P)、マイアミ(1000P)、ハレ(250P)で優勝、全英では準優勝と活躍してランク3位に入った。
3強の戦いだが、昨年の全豪の決勝でジョコビッチ対ナダルでジョコビッチの勝利に、全仏準決勝では、ナダル対フェデラーでナダルの勝利、全英準決勝では、ナダル対フェデラーでフェデラーの勝利、全英決勝ではジョコビッチ対フェデラーとなり、最終セット、タイ・ブレークでジョコビッチの勝利と激闘を続けた。
新鋭では、ツアー・ファイナルで初優勝したステファノス・チチパス(ギリシャ、6位、21歳)、ダニール・メドベデフ(ロシア、5位、23歳)、ドミニク・ティエム(オーストリア、4位、24歳)、アレクサンダー・ズベレフ(ドイツ、7位、22歳)が注目である。
日本人男子選手
西岡良仁(69位、24歳)は、BNPパリバ・オープンでベスト16、初の全仏2回戦進出、ウエスタン・アンド・サザン・オープン(1,000P)2回戦で錦織圭との日本人対決で勝利し、自身初のトップ10選手からの勝利。3回戦でアレックス・デミノーを下し、錦織圭、杉田祐一に次いで日本人として3番目にマスターズでベスト8に進出した。
内山靖崇(78位、27歳)もATP下部大会の寧波(ねいは)チャレンジャー(125P)で優勝して、念願のトップ100入りを決めた。
杉田雄一、ダニエル太郎、伊藤竜馬は予選出場予定。
16歳の望月慎太郎は、全英ジュニアで日本男子として史上初のGSシングルス優勝の快挙を達成し、ジュニア世界ランキング1位となった。近い将来、全豪などの世界の舞台に立つ期待の新星である。
日本人女子選手
土井美咲(82位、28歳)が本戦出場予定だが、日比野菜緒(103位、25歳)、奈良くるみ(143位27歳)、日比万葉(171位、23歳)は予選出場予定。
オージー選手
シドニー出身のアレックス・デミノー(18位、18歳)が昨年の全豪の前哨戦、シドニー国際(250P)でATPツアー初優勝を飾り、アトランタ大会(250P)では2勝目を挙げた。全米オープンでは錦織圭に勝利するなど、自身初めてのGSでベスト16へ進出し、世界ランクを18位まで上げて、豪州選手ではトップに立った。
ニック・キリオス(30位、24歳)は、暴言など問題行動を何度も起こして、ランク70位台まで落とした。メキシコ・オープン(500P)ではアレクサンダー・ズベレフに勝利、シティ・オープン(500P)ではダニール・メドベージェフを破りツアー5勝目、6勝目を挙げて、ランクを30位まで戻している。
女子では、GS優勝経験者のサマンサ・ストーサー(98位、35歳)は、昨年の全豪ダブルスで中国の張帥と組んで初優勝を飾り存在感を示した。アイラ・トムヤノヴィッツ(51位、26歳)も本戦出場予定。
車いす部門
国枝慎吾(2位、35歳)は、全豪準決勝、全仏準決勝、全英決勝、全米1回戦と振るわず、無冠に終わったが、楽天オープンでシングルスとダブルスで初代チャンピオンとなるなど復調しており、全豪での活躍が期待される。
上地結衣(2位、25歳)は全豪、全仏、全米で決勝に進出したが、全てディーデ・デフロート(オランダ、1位、22歳)に敗れた。全米ではデフロート対策の結果も出ており、オリンピックに向けて調整が進んでいる。
全豪オープンの楽しみ方
■ 日程
対戦組み合わせ(ドロー)は開幕直前に発表され、初日と2日目で男女全選手が登場する。予選は1月14日(火)から18日(土)にかけて行われ、入場は無料。18日には、子ども向けキッズ・デーが開催される。気温が時に40度を超えることもあるので水分補給、帽子、サングラス、日焼け止めは忘れずに。夜は冷える日もあるので、防寒着も準備しよう。試合経過、会場、練習場所などがリアル・タイムに分かる全豪オープン公式アプリは必携。
■ 会場
メルボルン・パークには、ロッド・レーバー・アリーナ(1万5,000人)とマーガレット・コート・アリーナ(7,500人)の2つのセンター・コートと一般コートのハイセンス・アリーナ(1万500人)の開閉式の屋根付きコートがある。ショー・コートと呼ばれる観客席を備えた大型コートなど野外コートが全部で22面あり、一部は選手の練習用に使われる。会場にはビデオ・カメラ、大型望遠レンズ、大きな旗、ガラス瓶などは持ち込めない。
■ ロッド・レーバー・アリーナ・ガイド付きツアー
全豪オープン期間中にメディア・センターやプレーヤー・センター、歴代優勝者の写真が並ぶ通路、選手控室、選手インタビュー・ホールなど一般観客が入れない場所に入るツアーがある。詳しくは全豪オープンのウェブサイト参照。
■ 催事場
ハイセンス・アリーナ側のグランドスラム・オーバル催事場には娯楽テントや、ライブ・バンド演奏のビア・ホール、飲食店など催し物や屋台がたくさん出ている。ガーデン・スクエアでは選手によるサイン会も開かれる。錦織、大坂などトップ選手も登場する。ロッド・レーバー・アリーナの隣にショップがあり全豪会場でしか買えないロゴ入り特選グッズが販売されている。選手のラケットのチューンナップ・ショップを見学するコーナーもある。
■ アクセス
会場のメルボルン・パークまでは、トラム、電車、バスなどの交通がありトラムは無料。フリンダース駅から歩いて10分ほどでヤラ川の散策を兼ねて歩くのも快適である。
■ チケット
一般券(グランド・パス: $49~)は、2つのセンター・コート以外は全て入れる。午後5時以降に入れるチケットや、週末2日間券、5日券、家族4人券など多種の入場券がある。ロッド・レーバー・アリーナの入場券は$78から。一般券は会場でも買えるが初日と2日目は、長蛇の列となるので、ネットで事前購入か、フェデレーション・スクエアで事前購入するのがお勧め。
■ Australian Open
会場:Melbourne & Olympic Parks(Batman Ave., Melbourne)
日程:1月20日(月)~2月2日(日)
Web: australianopen.com
文・写真=イタさん(板屋雅博)
日豪プレスのジャーナリスト、フォトグラファー、駐日代表
東京の神田神保町で叶屋不動産(http://kano-ya.biz)を経営