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2020年2月 ニュース/総合

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出航する「HMASトゥウーンバ」を見送る海軍兵の家族=1月13日、WA州ガーデン島の海軍基地(Photo: Royal Australian Navy)
出航する「HMASトゥウーンバ」を見送る海軍兵の家族=1月13日、WA州ガーデン島の海軍基地(Photo: Royal Australian Navy)

有志連合参加の豪艦が出航

190人乗せホルムズ海峡へ

豪海軍兵190人を乗せたフリゲート艦「HMASトゥウーンバ」が1月13日、軍事的な緊張が高まっている中東ホルムズ海峡に向けて、パース南方ガーデン島の西部艦隊基地を出航した。米主導の有志連合「海洋安全保障イニシアティブ」に参加し、民間船舶の安全な航行を支援する。

リンダ・レイノルズ国防相は、出航前の式典で「テロや海賊を抑止して航行の自由を保障し、中東の安全な海上交通の確保に努める。今回の派遣は我が国の安全保障と経済にとって不可欠であり、極めて重要だ」と訓示した。豪海軍の中東での作戦参加は1990年以来、68回目。派遣期間は半年間で、7月の帰還を予定している。

ホルムズ海峡周辺の緊張が増す中で、レイノルズ国防相は13日の会見で、現時点での増派の可能性を否定した。ジョナサン・ミード艦隊司令はイラン側が挑発した場合の対応について「我々は緊張の緩和を目指し、自制を心掛けている。だが、必要があれば我々の身を守る用意はできている」と語った。

ホルムズ海峡では昨年、タンカーへの攻撃や拿捕が相次いだ。米トランプ政権は有志連合への参加を友好国に呼び掛け、豪州は昨年8月に参加を明らかにしていた。

米国とイランの緊張はここにきて一段と高まっている。米国が駐留するイラクでは昨年12月末、親イラン派と見られる勢力による米国への攻撃が相次いだ。米国はイラク国内で1月3日、対米攻撃の首謀者と位置付けるイラン革命防衛隊のソレイマニ司令官を殺害した。これに対してイランは8日、イラクの米軍基地に向けて弾道ミサイルを発射して報復した。


豪準備銀(RBA)のフィリップ・ロウ総裁
豪準備銀(RBA)のフィリップ・ロウ総裁

2月再利下げの可能性
市場予測は58%

中央銀行の豪準備銀(RBA)が2月4日に開く2020年最初の理事会で、政策金利を0.25ポイント引き下げて史上最低の0.5%とする可能性が上昇している。金利政策変更の市場予測を示す豪証券取引所(ASX)の「RBA金利インディケーター」(1月22日時点)は、利下げが58%、据え置きが42%だった。利下げ予測は1週間前の13日の47%から11ポイント上昇した。

4大銀行のエコノミストもすべて0.25ポイントの利下げを想定しているが、据え置きを予測する声も多い。1月20日付の経済紙「オーストラリアン・フィナンシャル・レビュー」は、森林火災による一時的な経済への打撃はあるものの、雇用情勢の改善や順調な小売、住宅価格の反転、株価の上昇といったプラス要因を背景に、2月の利下げは見送られる公算が高いとの見方を紹介した。

豪投資顧問会社ラミナー・キャピタルのエコノミスト、スティーブン・ロバーツ氏は同紙に「RBAが再利下げの理由を見つけるのは難しいだろう。良い指標の行方を見守りたいと考えるのではないか」と指摘した。

RBAは16年8月以降約3年近く政策金利を1.5%に据え置いていたが、足踏みする景気を下支えするため19年6月、7月、10月に3度の利下げを行い、0.75%まで引き下げた。

2月に金利を据え置いたとしても、遅かれ早かれ0.25%程度まで引き下げる可能性がある。金利をそこまで下げれば景気刺激効果はほとんどなくなるため、さらに景気が低迷した場合、RBAは今年、国債の大量購入を含む「量的緩和」(QE)に踏み込まざるを得なくなるとの見方も浮上している。


4年連続で最多の販売台数を記録した小型トラック「トヨタ・ハイラックス」
4年連続で最多の販売台数を記録した小型トラック「トヨタ・ハイラックス」

新車販売、前年比7.8%減

SUVはシェア45%に拡大

景気減速を背景に、国内の新車販売が低調に推移している。連邦自動車工業会(FCAI)が1月6日に発表した統計によると、2019年の新車販売台数は106万2,867台と前年比で7.8%減少し、11年以来8年ぶりの低水準を記録した。

タイプ別では、スポーツ多目的車(SUV)が更にシェアを拡大する一方、セダンやハッチバックなどの従来型乗用車の退潮傾向が続いている。SUVの割合は全体の45.5%を占め、前年比で2.5ポイント上昇した。SUVと共に人気の高い小型トラックなどの「軽量商用車」は21.2%(0.6%下落)だった。一方、乗用車は3.1ポイント下落して29.7%まで落ち込んだ。

車名別では、豪英語で「ユート」(Ute)と呼ばれる小型トラックが上位を占めた。トヨタ自動車のユート「ハイラックス」(47,649台)が首位、米フォードの同「レンジャー」(4万960台)が2位をそれぞれ維持した。3位はトヨタの小型乗用車「カローラ」(3万468台)、4位は韓国現代自動車の同「i30」(2万8,378台)。5位も三菱自動車のユート「トリトン」(2万5,819台)だった。

トヨタは17年連続首位

メーカー別シェアでは、トヨタ(19.4%)とマツダ(9.2%)の日本勢2社が1位、2位を維持した。3位以下も、現代(8.1%)、三菱(7.8%)、フォード(6.0%)と前年と変わらなかった。

トヨタ・オーストラリアによると、同社は17年連続でシェア1位となった。トヨタ車がトップ・セールスを記録するのは23回目。ハイラックスは4年連続で首位をキープした。

FCAIのトニー・ウェバー代表は、低調な新車販売の要因について「豪州経済の厳しい状況、貸し出しの厳格化、為替レートの変動、低調な賃金の伸び」などを挙げた。

豪州では移民受け入れを背景に人口が増加しているにもかかわらず、このところ新車販売が減少し続けている。景気減速に加えて、都市部で自動車所有の需要自体が縮小している可能性がある。その背景には、米ウーバー・テクノロジーズなどの配車アプリや、必要な時だけ車を利用できるカー・シェアリングの浸透があると見られる。


オーストラリア人旅行者に人気が高い北海道・ニセコのスキー場
オーストラリア人旅行者に人気が高い北海道・ニセコのスキー場

訪日豪州人数、初の60万人超え

前年比12.9%増――JNTO推計値

オーストラリア人の訪日者数が引き続き右肩上がりに拡大している。日本政府観光局(JNTO)が1月17日に発表した2019年の訪日外客数に関する統計(推計値)によると、オーストラリアからの外客数は62万1,800人と前年比で12.9%増加した。昨年に続いて過去最高を更新し、初めて60万人の大台を超えた。国・地域別では、中国、韓国、台湾、香港、米国、タイに次いで7番目に多かった。

18年12月のシドニー―関空線(カンタス航空)や19年9月のパース―成田線(全日空)の就航で座席供給量が拡大した。日本でのラグビー・ワールド・カップの開催を背景に日本への関心が高まったこともあり、3月以外のすべての月で過去最高を更新した。

20年も3月末以降、羽田空港と豪州を結ぶ航空各社の新路線が就航することから、引き続き順調な伸びが期待される。

なお、世界全体の訪日外客数は2.2%増の3,188万2,100人と小幅な伸びにとどまった。日韓関係の悪化を背景に、韓国が25.9%減と急激に落ち込んだことが響いた。日本政府は東京五輪・パラリンピックが開かれる20年に訪日客4,000万人を目指す目標を掲げている。


ニュース解説

森林火災、東部で猛威

29人死亡、家屋2,800戸以上焼失

豪州の東部から南東部に至る広大な地域で、大規模な森林火災が猛威を振るっている。これまでに少なくとも29人が死亡したと見られ、被害は今後増える可能性がある。1月中旬にようやく「恵みの雨」が降り、火の勢いは小康状態となったが、予断を許さない状況はしばらく続きそうだ。

森林火災から所有地を守ろうとする住民=2019年11月12日、シドニーから北へ350キロ離れた町タリー近くのヒルズビルで(PETER PARKS / AFP)
森林火災から所有地を守ろうとする住民=2019年11月12日、シドニーから北へ350キロ離れた町タリー近くのヒルズビルで(PETER PARKS / AFP)

09年以来最大の火災に

一連の火災は2019年9月から続いており、折からの干ばつによる極度な乾燥と高温で東部一帯の広範囲で同時に多発した。同年11月から新年にかけて、被害が急激に広がった。1月22日付の日刊紙「デイリー・テレグラフ」によると、NSW州とVIC州、SA州、首都特別地域で29人が死亡した。このうちNSW州では最多の21人が犠牲になった。

スコット・モリソン首相によると、17日の時点で「2,800戸以上」の家屋が火事で失われた。英紙「ガーディアン豪州版」(電子版)によると、1月8日の時点で「ポルトガルの面積より広い1,070万ヘクタール(10万7,000平方キロ)が焼失した」という。

現時点では被害の全容は分かっていない。犠牲者数、焼失した家屋や森林の面積はさらに増える可能性がある。豪州の森林は油を多く含むユーカリ林が主体で、高温と乾燥、強風の条件が重なると自然発火しやすく、一気に燃え広がる。

VIC州で2009年2月に起きた「ブラック・サタデー」(暗黒の土曜日)の森林火災では、史上最多の173人が犠牲になった。今回はブラック・サタデー以降の11年間で最大の被害が出ている。

東部一帯に恵みの雨

NSW州東部を中心とした広い地域で1月17日から18日にかけて、待望のまとまった降雨があり、被害の拡大はようやく食い止められた格好となった。豪気象局(BOM)によると、シドニー市内の観測所では18日、30.6ミリと9月中旬以来4カ月ぶりの降水量を記録した。

しかし、NSW州地方消防隊によると、22日の時点で州東部を中心に82カ所(森林以外の火災も含む)で、依然として火の手が上がっている。現時点で州内に緊急警報が発令されている地域はないものの、乾燥した危険な状態が2日間の雨で解消されたわけではない。

BOMが1月16日に発表した2~4月の長期予報によると、渇水の解消には「数カ月間にわたって平年以上の降水量が持続する必要がある」という。同州で森林火災のシーズンが終わる3月末くらいまでは、安心できない状況が続きそうだ。

モリソン政権への批判強まる

森林火災への対応を巡っては、スコット・モリソン首相の保守連合政権への風当たりが強まっている。既に被害が深刻化していた昨年12月、ハワイでクリスマス休暇を取っていた首相は強い批判を浴びた。首相は21日、消火活動中にボランティアの消防士2人が死亡した事故を受け、休暇を切り上げて急きょ帰国し、「豪州国内に大きな不安を巻き起こした」と謝罪した。

加えて、「火災の原因は気候変動」と主張する世論が高まりを見せ、モリソン首相の温暖化対策にも批判の矛先が向かった。シドニーやメルボルンなどの主要都市では1月10日、モリソン政権の対応に抗議する大規模な集会が開かれた。

こうした世論の高まりを背景に、政権支持率は下落した。調査会社「ニューズポール」の世論調査(1月12日付の全国紙「オーストラリアン」掲載)によると、与党保守連合の2大政党別支持率は前回12月の調査から3ポイント下落して49%となり、最大野党労働党(3ポイント上昇の51%)を下回った。「どちらのリーダーが首相にふさわしいか?」の質問では、モリソン首相と答えた人の割合は前回の48%から39%に急落した。一方、アルバニージー労働党党首は34%から43%と支持を大きく伸ばした。

被災地の支援が本格化

失地回復を図るモリソン首相は年明け以降、被災者への支援策を矢継ぎ早に打ち出している。1月6日には、被災した家族や農業生産者、事業主を財政支援する総額20億ドルの「全国森林火災復興基金」と、同基金を管理する「全国森林火災復興庁」の設立を発表した。被災地の農林水産業の従事者に最大で7万5,000ドルの補助金を提供することを柱とした農業支援策(14日)、被災地の16歳以下の子どもに1人当たり400ドルの給付金を支払う追加支援策(15日)も発表した。

19日には、火災のマイナス・イメージで打撃を受けている観光業への総額7,600万ドルの支援策も明らかにした。国内市場向けに2,000万ドル、海外市場向けに2,500万ドルの販売促進費を補助する他、被災地でのコンサートなどの文化イベント開催費用として1,000万ドル、海外メディアの招聘(しょうへい)に950万ドル、観光業の見本市への海外バイヤー招聘に650万ドルを拠出する。

シドニー西方の景勝地ブルー・マウンテンズ国立公園では、総面積の8割が焼失したと報じられるなど観光業への被害は甚大だ。国内や海外から旅行者を呼び込んで復興につなげる。

海外からの支援部隊も次々と到着している。日本政府も国際緊急援助隊を編成し、航空自衛隊のC130H輸送機2機と隊員約70人が16日、シドニー北西郊外のリッチモンド空軍基地に降り立った。同基地を拠点に人員や支援物資の輸送を行う。

豪州は2011年3月11日の東日本大震災の直後、空軍のC17A輸送機3機と警官、消防士、救助犬を日本に派遣して救援活動を行った。今回の日本の救援隊派遣は「恩返し」となる。

一般市民による支援の動きも活発化している。主要慈善団体のオーストラリア赤十字、地元のボランティア消防士に支えられているNSW州地方消防隊には、次のウェブサイトから寄付することができる。

オーストラリア赤十字 災害復興・支援義援金
RED CROSS DISASTER RELIEF AND RECOVERY

Web: redcross.org.au/campaigns/disaster-relief-and-recovery-donate

NSW州地方消防隊への支援
NSW RURAL FIRE SERVICE
SUPPORT YOUR LOCAL BRIGADE

Web: www.rfs.nsw.gov.au/volunteer/support-your-local-brigade

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