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フィジオセラピストに聞こう!/歩数と食生活と死亡率

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フィジオセラピストに聞こう 体の痛み改善法

フィジオセラピストは、筋肉や関節の痛みや機能障害、神経系機能障害や呼吸器系疾患などの治療やリハビリを行う専門家で、必要に応じてMRIや専門医を紹介し、包括的な治療を行っている。さまざまな体の機能を知り尽くした奥谷先生に、体の痛みの原因や改善法について聞いてみよう!

第102回 歩数と食生活と死亡率

2020年3月号の『Journal of Science and Medicine in Sport』に、オーストラリアの55~85歳の被験者1,697人の毎日の歩数と食生活と睡眠を調べ、それらと死亡率の関係を約10年間にわたり調査した結果が発表されました。

結果として発表されたことは以下の通りです。

  1. 歩数が多いことと食生活の質の高さは共に死亡率を下げる要因である
  2. 寝つきの悪さや眠りの浅さは死亡率に関係がないが、睡眠と健康の関係、ひいては死亡率との関係は更に詳しい研究が必要
  3. コミュニティー内で励まし合うことで、より活動的に体を動かしたり健康的な食生活を送るよう心掛けたりするようになる

それでは、詳しく説明していきましょう。

  1. オーストラリアでは、人びとが1日に平均6,900歩を歩いているという結果が出ました。更に1,000歩増えるごとに7パーセント死亡率が減少するという結果が出ています。7,400歩を超えるとその効果がなくなるという研究もありますが、今回の研究では歩けば歩くだけ死亡率が低下したようです。

  2. 野菜、果物、肉、植物性たんぱく質の摂取量が死亡率の低い人では多く、死亡率の高い人では少なかったようです。また果物と野菜の量と種類を多くすることや、たんぱく質を多種類から摂取することで栄養価の高い食生活が死亡率を下げることも証明されました。グループ群で比較すると食品を8種目増やすと14パーセント死亡率が減少したと報告されています。

  3. 週に3日以上、寝つきの悪い日や眠りが浅い日があったとしても死亡率と相関関係は見られないものの、短い睡眠時間は6~13パーセント死亡率の増加につながるという結果が出ました。

この研究で、既に皆さんが思っていらっしゃるでしょうが、たくさん歩き、多品目を摂取して健康的な食生活を送っている人がより長生きしていることが分かりました。一般的な速度では1000歩を歩くのに約10分かかります。平均約7,000歩を1万歩に、つまり1日30分歩く時間を増やすことで21パーセント死亡率を下げられると思うと、体を動かすことの大切さを認識していただけると思います。現代に生きる我々はまさしく便利さと死亡率を取引しているのだと実感する研究結果でした。

皆さん、たくさん動いて健康寿命を伸ばしましょう!


奥谷匡弘(おくたに・ただひろ)
シドニー大学理学療法学科卒業後、西オーストラリア大学で理学療法修士号取得。ダーリングハーストのセント・ヴィンセント病院で5年間勤務し、プライベート・クリニックでは財界の著名人などの治療に多く携わる。オーストラリア・フィジオセラピー協会公認筋骨格系理学療法士。
Web: www.metrophysiotherapy.com.au

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