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「与党の再エネ全振りよりコスパ高い」と主張 豪野党の原発新設、コストは32兆円

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半年後の連邦選挙に向け試算公表

 オーストラリア最大野党の保守連合(自由党、国民党)は13日、原発建設のコスト試算を発表した。次期連邦選挙に向けたエネルギー政策の事実上の公約として、同国初となる原発を国内7カ所に新設する計画を先に公表していたが、具体的な費用を提示していなかったため実現性が不透明だった。

 経済コンサルティング会社フロンティア・エコノミクスに依頼してまとめた調査結果によると、7カ所に合計出力14ギガワット(1,400万キロワット)の原発を2050年までに稼働させた場合、電力インフラ全体のコストは24年時点の貨幣価値で3,310億豪ドル(約32兆円)かかるという。

 保守連合は、原発を新設せず再生可能エネルギーだけで50年までに「ネット・ゼロ」(温室効果ガス排出実質ゼロ)を目指す与党労働党の計画と比べ、「44%低く、2,630億豪ドル(約26兆円)を節約できる」と主張している。

 保守連合のピーター・ダットン代表(自由党党首)と国民党のデービッド・リトルプラウド党首は共同声明で「再エネに偏重した労働党のエネルギー政策が電気料金の高騰を招いた」と批判。「(火力発電所の廃炉によって)24時間稼働するベースロード電源が34年までに9割失われ、送電網が停電や供給不安に見舞われる」との見通しを示した。

 その上で保守連合は、今後廃炉となる石炭火力発電所を(運転時に)温室効果ガスを排出しない安定的なベースロード電源として原子力エネルギーを導入するとともに、再エネや天然ガス、二酸化炭素の回収・貯留などと組み合わせ、50年までにネットゼロを実現するとしている。

エネルギー問題は次期選挙の争点に

 しかし、オーストラリア連邦科学研究機構(CSIRO)は先に発表した試算で、原発は再エネの約2倍コストがかかると見積もっていた。費用対効果の高い解決策にはなり得ず、50年までのネット・ゼロへの貢献度も低いと結論付けていて、保守連合の主張とは大きく食い違う。

 原発導入に反対している労働党政権も保守連合の試算を批判している。公共放送ABC(電子版)によると、クリス・ボウエン気候変動・エネルギー相は13日、将来のエネルギー需要を低く見積もった保守連合の試算は「間違いだらけだ」と指摘。アンソニー・アルバニージー首相も「悪夢の政策だ」と切り捨てた。

 オーストラリアは世界有数のウラン輸出国で埋蔵量も最大だが、シドニー南方ルーカス・ハイツにある小規模な研究用原子炉を除き、商業用原発は1基もない。低価格で良質な石炭を豊富に産出するため、従来の電力構成は火力発電が大半を占めていた。

 しかし、連邦政府は温室効果ガスを大量に排出する石炭火力発電所を次々と廃炉にする一方、メガソーラーや大規模な洋上風力発電所の建設や、再エネを安定供給するための定置型蓄電池の設置を推進。現労働党政権は、30年までに送電網の電力の82%を再エネ由来とするという野心的な目標を掲げている。

 次期連邦選挙(下院の全議席と上院の約半数を改選)の実施は来年5月までと約半年後に迫っている。再エネに傾注する労働党が2期目の再選を図る一方、保守連合は原発導入を掲げて政権交代を目指す。

■ソース

OUR PLAN FOR ZERO-EMISSIONS NUCLEAR(AustraliaNeedsNuclear.org.au)

The question of nuclear in Australia’s electricity sector(CSIRO)

Coalition unveils nuclear costings, assuming smaller economy and higher emissions(ABC News)

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