【保存版】オーストラリア在住日本人が生んだ“新方言”─現地で生まれる不思議な日本語とは?

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 オーストラリアに住んでいると「現地の日本人同士が使っている言葉って、独特だなぁ」と感じることが多い。言葉というものは、時代や地域、その言葉を使う人びとの特性によって常に変化し続けるものだ。そんな言葉が、特にもう1つの言語(オーストラリアであれば日本語が英語)に出合う時、更に大きな変化を見せ始める。在豪日本人が使用している面白い言葉などについてを連載した、ランス陽子さんによる「オーストラリア弁(新方言)を探せ」をまとめてご紹介。


「ハンジャ」って何?

 「ハンジャ」とは、オーストラリアならではのハンバーガーのチェーン店、「ハングリージャックス」の略称である。本家のアメリカでも、日本でも、このチェーン店は「バーガーキング」と呼ばれているのだが、オーストラリアには同名のバーガー店が既に存在していたため、「ハングリージャックス」という名称でチェーン展開することになったそうだ。

 日本人は、単語を省略するのが大好きだ。特に日常生活に身近なもの、よく行く店の名前は、格好のえじきとなる。日本でもハンバーガー店はもちろん、多くのコンビニの名称も省略され、愛称のように親しまれている。

詳しくは:https://nichigopress.jp/topics-item/36521/

「ロビタン」には日本語の面白さが凝縮

 ゴールドコーストでの調査で面白いなと感じたのは、「ロビタン」という単語だった。これは「ロビーナ・タウン・センター」、ロビーナという地域にあるショッピング・センターの略称だ。

 この「ロビタン」も、前回の「ハンジャ」のように各単語を省略し、くっ付けたケースなのだが、「タン」という省略の仕方が何とも面白い。普通は単語の最初の1~2拍を残すことが多いが、このショッピング・センター名では「ロビタウ」でも「ロビタセ」でも「ロビセン」なく、「ロビ+タ+ン」になっているのだ。

詳しくは:https://nichigopress.jp/topics-item/38274/

限定された意味の新語「ピッキング」

 オーストラリアの日本人社会でしか使われていないローン・シフトの代表と言えば、「ピッキング」という言葉ではないだろうか。日本では、倉庫業務などで商品をピックアップする仕事をピッキングと呼んだり、泥棒の鍵破りをピッキングと呼ぶことがあるようだ。

 オーストラリアの日本人社会、特にワーキング・ホリデーの人びとの間では、ピッキングといえばフルーツ・ピッキングのことを指す。マンゴーやストロベリー、グレープといった果物の収穫の仕事だ。

詳しくは:https://nichigopress.jp/topics-item/39693/

オーストラリアのこと、何て略す?

 日常生活でよく使われる言葉は、自然と略語になりやすい。英語の書き言葉では「AU」と2文字、または「AUS」と3文字に省略される。「Oz」と書き表すこともある。会話では「オズ」またはオーストラリアなまりで「Straya(ストラーィヤ)」と言うオージーも多い。

 調査してみると、こちらに住む日本人には「オース」という略語を使っている人がかなりいた。英語の書き言葉では「AUS」と省略されることが多いのもその理由の1つだろう。ただし、英語圏ではAUSと書いてオズと読む。オズという短く便利な言葉が既に存在しているのに、日本人は「オーストラリア」の最初の3文字を残して省略した「オース」という言葉を使い始めたのだ。

詳しくは:https://nichigopress.jp/topics-item/41781/

ガレージ? それともガラージ?

 オーストラリア英語の「garage」には実は4種類の発音がある。IPAという国際発音記号で書くと、イギリス風に頭にアクセントが来る場合には「/’gæraʒ/」または「/’gæradʒ/」。アメリカ風に真ん中の「ラ」にアクセントが来る場合には「/gəˈraʒ/」または「/gəˈradʒ/」。いずれにしても、カタカナにすると「ガラージ」という音に近くなる(ちなみに、イギリス英語での発音は「/ˈɡær.ɑːʒ/」または「/ˈɡær.ɪdʒ/」、そしてアメリカ英語での発音は「/ɡəˈrɑːʒ/」となり、いずれもオーストラリア英語とは若干異なる)。

詳しくは:https://nichigopress.jp/topics-item/43753/

山火事や森林火災のこと、何て言う?

 日本語で森林というと、つい広葉樹や針葉樹の緑豊かな森林をイメージしてしまう。ユーカリやワトルの乾いた緑の葉に覆われ、ボトルブラシやティーツリー、ランタナなどが生えているいわゆるこちらの森林や雑木林、藪のようなものは、やはりブッシュという単語を使った方がイメージしやすい。更に広大な平地が広がるオーストラリアでは、山以外の土地で火災が起きることも多いので、山火事という言葉でも表現しにくい。

 となると、英語の「bush fire」をカタカナ語として日本語に取り入れている在豪日本人が多いのもうなずけるのだが、このカタカナの使用方法には3種類の違いが見られた。これが冒頭に記載した「ブッシュファイヤー」「ブッシュファイアー」そして「ブッシュファイア」である。

詳しくは:https://nichigopress.jp/topics-item/46234/

「nab」 を「国民」と呼ぶ在豪日本人

 あまり多くはないが、ごくまれにたいへん面白いオーストラリア在住者の新語に出合うことがある。ゴールドコーストで行った調査では、「国民」という言葉が登場した。

 何のことか分かるだろうか。

 答えは「ナショナル・オーストラリア銀行」のこと。

 「national」という英語を「国民」と日本語に直訳し、更に省略して使用しているのである。英語の知識が広まっている現代では、英語を日本語に取り入れる時には、発音だけを日本語に変換してカタカナ語として取り入れることが多い。「ナショナル」も、「オーストラリア」も、どちらも日本語でもかなり浸透している言葉なので、そのままカタカナ語として取り入れれば良いようなものだが、やはりそのままだと言葉として長い。そこで短縮する方法として、「国民」という新語が生まれたのだろう。

詳しくは:https://nichigopress.jp/topics-item/48228/

明治時代から豪州に残る日本語

 日本人はアボリジニの言葉で、目が顔から突き出ていないことを意味する「ku’unkulu(deep eyes)」と呼ばれ、高い技術を持ち、勤勉に働き、アボリジニたちへの労働条件や賃金も公平で約束通り支払っていたことから、彼らに一目置かれる存在だったようである。

 チェイスの記録した、当時、船でアボリジニたちに使われていた古い日本語由来の言葉を紹介する。

Ikuramu(行く)
Umay(女性:「お前」から?)
Churuchuru(子ども:ちょろちょろから?)
Sagi(酒)
Kuyima(来い、今)


詳しくは:https://nichigopress.jp/topics-item/50632/

2022年オーストラリアの新語大賞は「Teal」

 さて、我が国オーストラリアでは。マッコーリー辞書のマクミリアン社が選んだ22年の新語大賞は「Teal(ティール)」であった。

 ティールとは、もともと緑がかった青い色の名前のこと。22年の選挙では政治の世界で頻繁にこの言葉が登場した。それまでの政権を握っていたのは、2大政党の1つであるオーストラリア自由党(Liberal Party of Australia)であり、そのイメージ・カラーは青。その青い色に緑を混ぜたのがティールである。

詳しくは:https://nichigopress.jp/topics-item/52973/

「スクホリ」はスクポリにあらず 

 そこで英語の「school holiday」をカタカナにしたスクール・ホリデーを在豪日本人同志の日本語の会話に使うことになるのだが、そうなると、よく使う長い言葉はつい省略したくなってしまうのが日本人である。

 調査してみると「スクホリ」という言葉を使うと答えた人たちがいた。インターネット上でも、オーストラリア在住者のブログや、在住者向けのクラシファイドで見掛けることがある。「スクホリ オーストラリア」で検索すると「こちらのスクホリは」「スクホリ中の娘」「昨日でスクホリも終了し」「~のままスクホリ突入」「スクホリ企画」「毎度スクホリ中の予定作りに頭を悩ます親御さんにはもってこいの」といった文章が出てくる。

詳しくは:https://nichigopress.jp/topics-item/55681/

日本とは違う「ピックアップ」と「ピック

 ところが在豪日本人の間でよく使われる「ピックアップ」と言えば、お迎えの意味の名詞であることが多い。「子どもの学校のピックアップは何時?」や、「する」をつけて「空港から日本人スタッフがピックアップする場合は150ドルになります」といった動詞化した言葉として使われている。

 面白いのは、更にこれが短縮されて、「ピック」といった表現にもなること。「そろそろ子どものピックの時間だ」はお迎えの時間のことであり、「明日一緒に行こうよ。10時にピックするね」と言えば、車で迎えに行くね、という意味である。

詳しくは:https://nichigopress.jp/topics-item/58556/

私たちはなぜルー大柴化してしまうのか①

 日本にいる友人と会話する時、なかなか気が抜けない。文字だけでのやりとりならまだ良いのだが、音声でのチャットやミーティング、電話となるとかなり危ない。とっさにぱっと日本語が思い浮かばないことが多いからだ。先日も「背骨」と言いたかったのだが、ついうっかり「スパイン」と言ってしまって友人たちに笑われた。

 豪州に住む日本人同士の会話では、やはり無意識のうちに英語と日本語が混ざった状態になることが多い。

詳しくは:https://nichigopress.jp/topics-item/60277/

私たちはなぜルー大柴化してしまうのか②

 ゴールドコーストの調査では、無意識に日本語よりも英語の単語の方が先に口をついてしまうという人が80.6%もいたが、なぜ、豪州に住む私たちはそんなにもカタカナ英語を混ぜた日本語を使ってしまうのか。

 最も大きな原因は、やはりそれだけ毎日英語に囲まれた生活をしているから、ということが考えられる。調査の結果、71%が日本語より英語の方が日常的に使う場面が多いと答え、パートナーがいる人の場合は約半数の52.2%がパートナーと英語で会話をしていると答えた。

詳しくは:https://nichigopress.jp/topics-item/63217/

豪州英語のスラングを取り入れた言葉

 豪州に住んでいると、どうしても母国語の日本語さえ英語に影響されてきてしまう。それも、一般的な英語の言葉だけでなく、地元オーストラリアならではの独特の英語のスラングまで日本語に取り入れている人がかなり多いようだ。

 例えば、「モジー」。蚊は英語では一般的に「Mosquito(モスキート)」だが、オーストラリア人はこれを「mozzie(モジー)」と呼ぶ。蚊の多いQLD州などでは特に、こういった生活に密着した言葉は浸透しやすい。「夕方はモジーが多い」「モジーに刺された」など、「蚊」というたった1つの音の単語でさえ、わざわざもっと長い3拍の言葉に置き換えてしまうのである。

詳しくは:https://nichigopress.jp/topics-item/65857/

「ペイする?」「ファイナライズする」在豪日本人が使う新語?

 名詞に比べるとかなり少ないのだが、オーストラリアに住む日本人の間では、日本ではあまり使われていない英語の動詞も日本語の会話に取り入れてしまうことが多い。例えば「organise(オーガナイズ)」という言葉。組織する、計画する、催すといった意味があるが、こちらでは何かを手配したり、企画したりする時にかなり頻繁に使われる言葉だ。飲み会をオーガナイズしたり、家の修理をオーガナイズしたりすることもある。日本語ではなかなか直訳しにくい単語なため、これをそのまま「オーガナイズする」という形で日本語の会話に取り入れている在豪日本人が多いようである。

詳しくは:https://nichigopress.jp/topics-item/68645/

「テイクアウェイする」「キャッチアップする?」在豪日本人が使う新語?

 こういった動詞を副詞や前置詞に結合させたものの他にも、純粋な名詞形の単語に「~する」を付けるケースもある。日本で使われている一般的な例には「エントリーする」「ゴールする」などの言葉があるが、やはり語数は少ない。

 ゴールドコーストの調査では「仕事は、現在コンストラクション(建築の仕事)してます」という例が見つかった。これは、「サラリーマンしてます」といった用法と同じように「コンストラクション(の仕事を)して(い)ます」の省略形だ。

詳しくは:https://nichigopress.jp/topics-item/71886/

「スクホリ」「ロリポップ・レディ」「バブラー」? 学校に関するカタカナ語 在豪日本人が使う新語?

 まず、幼稚園や保育園は州や対象年齢などによって名称が違うのだが「チャイルド・ケア」「キンディー」「プレップ」「プリ・スクール」「プリ・プライマリー」といった現地での呼び名をそのままカタカナにして使用する人がほとんどである。小学校の準備学年があるなど教育制度が日本とは異なるため、そのまま日本語を当てはめることは難しい。

 小学校は「プライマリー・スクール」、中学校と高校は州によって名称が違い「シニア・スクール」「セカンダリー・スクール」「ハイ・スクール」などの呼び方をそのままカタカナにして使用することが多い。

 そして大学は英語での略称と同じ「ユニ」となる。

詳しくは:https://nichigopress.jp/topics-item/75106/

「ウーリー」「トローリー」「パークする」? スーパーマーケットに関するカタカナ語 在豪日本人が使う新語?

 豪州に住む日本人同士の会話では、スーパーマーケットに関わる単語も、日頃から利用頻度の高いカタカナ語として、英語からの借用が起こりやすい。

 まずは大手スーパーマーケットの「ウールワース(Woolworths)」。こちらは豪州英語での愛称「Woolies(ウリーズ)」を日本語流に少々変更した「ウーリー」という名称を使う人が多い。日本人にとって発音しにくいWの音は日本語の「ウ」の音となり、更にそれを長音の「ウー」という音に変化させている。原語にある最後の複数のs/esの音は、「Sunglasses→サングラス」など、日本語に取り入れる時には消えてしまうことも多い。

詳しくは:https://nichigopress.jp/topics-item/78727/

「アカウンタント」「プラマー」「コンストラクションやってます」? 職業に関するカタカナ語 在豪日本人が使う新語?

 「プラマー(plumber)」は、カタカナ語の方がはるかに言いやすい言葉の1つである。オーストラリアでは、上下水道の詰まりや修理などで何かとプラマーを呼ぶ機会がある。オーストラリアと比べて日本ではそういった機会が少ないせいか、この職業に従事している人を日本語で言い表そうとすると「水道屋さん」「水道の業者さん」などといった、少々あいまいな言い方になってしまう。そのため、在豪日本人同士の会話では、この職業の呼び方は「プラマー」となることが多い。

詳しくは:https://nichigopress.jp/topics-item/81410/

オーストラリアでは耳慣れない!? ユーキャン新語・流行語大賞─在豪日本人が使う新語?

 英語をそのまま取り入れた「I’m wearing pants!」という言葉が挙がっているのも興味深い。概念や物を表す名詞ではなく、そっくりそのまま英語の文章が、アルファベットのまま流行語となるケースはかなり珍しい。豪州の日本人社会の日本語の会話でも、英語の影響はまず単語、それも多くの場合、名詞を日本語の発音のカタカナに変換して、日本語の文法に基づいた文章の一部として取り入れているケースが多い。

詳しくは:https://nichigopress.jp/topics-item/85571/

「アレ」がまさかの大賞!? ─ハルシネーションなど、2023年新語に垣間見える外来語の影響

 前回取り上げた「『現代用語の基礎知識』が選ぶユーキャン新語・流行語大賞』」の結果が発表された。2023年の大賞に選ばれたのは、「アレ(A.R.E.)」。38年ぶりに優勝した、プロ野球の阪神タイガースの「アレ=優勝」は、日本中の注目を集めた。

 また、三省堂による「辞書を編む人が選ぶ今年の新語2023」では、「地球沸騰化」が大賞に選ばれた。これは、グテーレス国連事務総長の発言から生まれた、地球温暖化の深刻さを表現した言葉だ。

詳しくは:https://nichigopress.jp/topics-item/90496/

オーストラリア人、そして英語圏の人びとが選んだ2023年の言葉とは?

 オーストラリアのマッコーリー辞書が選ぶ2023年の言葉が発表された。2023年の言葉として選ばれたのは「cozzie lives (コジー・リブズ)」。これは生活コストという意味の「cost of living(コスト・オブ・リビング)」をスラング化したもの。近年の物価の上昇を受けて、豪州での生活に掛かる費用は年々上昇する一方だ。そんなネガティブな状況をスラング化して皮肉ることで、深刻さを和らげるような表現として使われている。

 一方、同社が募集した一般の投票によって選ばれたのは、生成AIを意味する「generative AI(ジェネレイティブ・エーアイ)」だった。昨年は、人工知能にコマンドを与えることで文章や絵画、写真を生成するサービスが加速度的に一般の人びとへ浸透した年だった。

詳しくは:https://nichigopress.jp/topics-item/97938/

「アウチ」「ウープス」「ヤミー」━ 無意識に出るとっさの一言

 「痛っ」という代わりに「アウチ」と言ってしまったり、日本人ばかりの集まりなのに、誰かにちょっとぶつかってしまった時に「すみません」と言わずに「エクスキューズミー」と言ってしまったり。

 在豪日本人同士の会話でつい出てしまう言葉を調べてみると、他にも「本当に?」といった場面で使う「リアリー?」「ワーット?」「シリアス?(またはシリアスリー?)」などが頻繁に使われているようだ。

 驚いた時や失敗してしまった時にとっさに発する言葉には「オーマイゴッド(またはオーマイガー、オーマイゴッシュ、オーマイグッドネス)」「オーノー」「ウープス」「オ、オー」「オーディア(またはディアディア)」「ホーリーカウ」「ジーザス」「ワーオ」「ブラディヘル」「ノーウェイ」「ダム」「クライキー」なども使われていた。

詳しくは:https://nichigopress.jp/topics-item/103288/

「メイビー」「ソーソー」「アクチュアリー」━ 無意識に出るとっさの一言②

「明日〇〇するの?」といった質問に対してあいまいな返事をしようとして、「メイビー(maybe)」と答えてしまうケースや、「大丈夫だよ」という意味合いで「ノー・プロブレム(no problem)」と答えてしまうケースなどが見られた。このような場合、とっさに言ってしまうだけではなく、意識的に英語で(ただし、日本語のカタカナ英語の発音で)返事をしていることも多いようである。短い一言で返事をする場合は、日本人同士の会話であっても英語を混ぜて会話することに対するハードルが少し下がるのかもしれない。そして「多分」や「大丈夫です」などと日本語ではっきり答えるよりも、少し砕けた言い方や柔らかい言い方をしたい時にもカタカナ英語が適宜使われているようだ。

https://nichigopress.jp/topics-item/109332/

在豪日本人のユニークな新語「ドニシー」

 「シドニー」が「ドニシー」になるのは、「シ+ドニ+伸ばす音」をそれぞれの塊として分解し、入れ替えているからだ。ここで面白いのは、「ニーシド」ではなく、3つに分解して最後の伸ばす音をオリジナルの言葉と同じ位置に残している点だろう。このことで、各音の入れ替えが起こっても、元の「シドニー」という言葉と同じような印象を残したままとなっている。

 似たような例には、複合語でたまに見られるように、野球のイチロー選手の父が「父+イチロー」で「チチロー」と呼ばれたケースなど、後半の音を残して同じ印象の言葉にする手法が英語にも日本語にも存在している。

詳しくは:https://nichigopress.jp/topics-item/112756/

「ブロビ」ってなに?

 ビーチやホテル、カジノがあり、更に大型ショッピング・センターのパシフィック・フェアもあるゴールドコーストの「ブロードビーチ」という地域は、ゴールドコースト周辺の住民にはたいへんなじみのある場所である。

 この「ブロードビーチ」は、地元の英語のスラングでも特に省略形がなく、英語ではBroadbeachとそのまま呼ばれている。英語の場合は2音節(シラブル)で、音としてはそれほど長い単語ではないからかもしれない。ところが、日本語でこの言葉を発音してみると「ブロードビーチ」は7拍(モーラ)となる。7拍ともなると、ゴールドコーストに住む日本人たちの間で、自然と短縮語が生まれていっても不思議ではない。

 あまり多くの在豪日本人に使われているわけではないが、一部の在住者にはこの「ブロードビーチ」は「ブロビ」と呼ばれている。これは1つの単語を「ブロード+ビーチ」と2つに分け、更にそれぞれの最初の音をとって「ブロビ」となった短縮語だ。似たような例には、日本でもアドビ社の「イラストレーター(lllustrator)」というソフトウエアの名前を2つに分けて「イラスト+レーター」 とし、最初の音をとって「イラレ」と略すケースなどがある。

詳しくは:https://nichigopress.jp/topics-item/115568/

「コンセント」「アルバイト」「ホスピタリティー」こんな和製英語は通じない?

 しかし、英語から取り入れたカタカナ言葉(借用語)をよく見てみると、この和製英語というのは実に面白いのだ。

 例えば、「ホスピタリティー」という言葉。これは、日本では「おもてなし」という意味で使われることが多い。日本でよく使われているオンライン無料英和辞典の「Weblio」にも、「Hospitality:親切にもてなすこと、歓待、厚遇」という意味しか掲載されていない。

 ところが、オーストラリアに住む日本人同士の会話で日本語としてこの単語を使うのは、こちらで多くの日本人が従事しているホスピタリティーという業種について話す場面が多いのではないだろうか。つまり、ホテルや旅行業、レストランなどの「サービス業」という意味で、この「ホスピタリティー」という言葉が使われているのである。

詳しくは:https://nichigopress.jp/topics-item/119804/

田んぼ、畑、果樹園、牧畜全部ひっくるめて「ファーム」─便利な言葉

 この農地や農園、農場という言葉。日本語ではそれぞれの言葉で思い浮かべる場所が、田んぼ、畑、果樹園、牧畜などに分かれている。ところが、これを全部ひっくるめて短い言葉で言い表せる便利な単語が、「ファーム」という英語からの借用語だ。

 日本でも「ファーム」という言葉は既にある程度浸透していることもあって、オーストラリア在住の日本人同士、特にワーホリ(ワーキング・ホリデー・メーカー)の若者の会話でもかなり頻繁に登場する単語の1つだ。

詳しくは:https://nichigopress.jp/topics-item/127831/

寿司=SUSHI、英語化した日本語「寿司」にまつわる言葉あれこれ

「Sushi(スシ)」という言葉は、すっかり地元のオーストラリア人にも定着し、英語化している。都市部では、手軽に巻き寿司が買えるテイクアウェイ(テイクアウトの豪州流の呼び方)店がショッピング・センターに並び、回転寿司店も多い。

 こういった寿司店で働く日本人も多く、現地在住の人びとならではの会話にも寿司に関する単語が生まれてきているようだ。

 日本語では寿司を握る人といえば「寿司職人」という言葉を使うが、これが現地で寿司を提供する人びとの名称となると、「寿司シェフ」となる。日本の寿司職人のような修行を経ていない人びとのことを「職人」と呼ぶのはどうかという気持ちが働いていることもあるだろう。

詳しくは:https://nichigopress.jp/topics-item/131213/

オウン・ルーム、オウンバス、オウン冷蔵庫─「オウン」とは?

 同居する人びとが何を共有して何を自分専用に使えるかというのは、各シェア・ハウスによって異なる。こちらの家やユニット(マンション)では、複数のバスルームやトイレがある場合や、各部屋全てにシャワー・ルームが付いていることもある。そんな時に在豪日本人たちが便利に使っている言葉が「オウン・バスルーム」という現地の英語からの借用語だ。略して「オウンバス」と言われることもある。バスタブという意味ではなく、シャワー・ルームも含めたバスルームという意味の単語をバスと縮めてしまうこの略し方は英語にはなく、こちらに住む日本人同士の会話の独特な用法である。

詳しくは:https://nichigopress.jp/topics-item/137283/

“眉毛waxing”、”プライベートNailサロン”─英語をそのまま日本語に混ぜてしまうケース(美容編)

 現地で日本人向けの広告に使われている美容に関する言葉を調べてみると、日本語か英語でまず説明してから、もう1度、2つ目の言語で説明しているケースには「マツエク eyelash extensions(編注:まつ毛のエクステンション)」「Hiar Cut ヘアカット」「Massage マッサージ」などが見られた。

 また、言葉を繰り返さずに2言語を使用するケースも多く見られた。まるで、日本語も英語もどちらも理解できることが当然であるかのように両方の言葉を混ぜているケースだ。「プライベートNailサロン」「眉毛waxing」「Massage Therapist募集」など(意味は順番に、プライベート・ネイル・サロン、眉毛のワックス脱毛、マッサージ師募集)。

詳しくは:https://nichigopress.jp/topics-item/143278/

2024年のユーキャン新語・流行語大賞に見る英語からの借用語

 ユーキャン新語・流行語大賞にノミネートされた30語の内、今年は外国語からの借用語または借用語を含む言葉が13語、アルファベットまたはアルファベットを含む言葉が3語あった。ちなみに昨年は、借用語が同じく13語、アルファベットを含む言葉は9語。2022年は借用語15語、アルファベット8語。過去2年と比べると、今年は若干アルファベットを含む言葉が減っているようだ。

 面白いのは、借用語を使って日本独自に発展させた言葉が数語あること。特に「インバウン丼」「カスハラ」「ソフト老害」といった複合語は興味深い。

詳しくは:https://nichigopress.jp/topics-item/147870/

オーストラリア版流行語大賞 !? 2024年は「enshittification(エンシティフィケイション)」

 オーストラリアのマッコーリー辞書が、2024年の言葉を発表した。今年の言葉に選ばれたのは「enshittification(エンシティフィケイション)」。製品やサービス、特にオンライン・プラットフォームが、始めは良かったもののだんだん利益を追求する姿勢が強くなっていき、質が低下する様子を表す新語だ。

 ガーディアン紙はこの言葉が生まれた背景として、X(旧:ツイッター)ではポスト真実時代の疑似科学や陰謀論が氾濫(はんらん)するようになっていったり、フェイスブックが友人たちとのつながりよりも某ショッピング・サイトの製品を見せることを重要視するようになっていったり、インスタグラムも理解不能なアルゴリズムでバズっている投稿を見せることが多くなってきていると指摘する。

詳しくは:https://nichigopress.jp/topics-item/151595/


著者プロフィル

ランス陽子

フォトグラファー/ライター、博士(美術)。現在、グリフィス大学の大学院でオーストラリアの日本人コミュニティーにおける日本語変種を研究中。ゴールドコーストでの調査を手始めに、今後はオーストラリア各地での調査を予定している。在豪日本人が使用している面白い言葉についての情報を募集中。情報やメッセージはFBコメント欄かFBメッセージまで。「オーストラリア弁を探せ!プロジェクト」
(Web:www.facebook.com/JapaneseVariationInAUS

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