【最終回】元発行人のローマ便り

元発行人のローマ便り 最終回

数年前に連載していたパリ便りの時もそうでしたが、6カ月というのはあっという間ですね。ローマ便りも6カ月目になり、最終回です。

昨年10月からローマにステイすることになったのですが、着いてすぐある日本食レストランでコメバ(COMEVA)という日本語新聞を手にしました。8ページのグロス・ペーパーを使ったカラー月刊新聞です。1カ月のイタリアの政治、経済、社会、文化のニュースが箇条書きでまとめられ、それに現地の新聞ならでの特集があり、とても興味深く読み、それからは、毎月新聞をピックアップするのを楽しみにしていました。


最後の号となった「COMEVA!」の3月号

今年に入って新年号を読むと、3月で20年近く続いた新聞が廃刊になるというお知らせが載っていて、びっくりしました。そこでローマの締めくくりというか、まとめは、発行者である笹尾真由美さんにお願いしたいと思い、お忙しい中、ローマを出る前に時間をいただき、中心部から地下鉄で約15分位のところの閑静な郊外の自宅兼事務所で、新聞のことを含めていろいろと話を聞かせていただきました。

笹尾さんはイタリア人と結婚され、ローマ在住23年を数える人。22歳の息子さんは、現在イギリスに滞在されているそうです。バイリンガルでイタリア語とフランス語の翻訳、通訳が本業だそう。

まず、新聞のことを聞いてみました。コメバというのはHOW ARE YOU? という意味。ミラノ在住の片岡純子さんと共同経営で発行してきたそうです。

「片岡さんが編集の責任者で、私が営業を担当するという分業制でした。ここは日本人が少ないので広告取りも難しくなる一方で、その財政的なことももちろん廃刊の理由の1つですが、一番の理由は、こういう形の新聞の時代はもう終わったということだと思います。プリント・メディアの衰退とよく言われますが、なくなるとは思ってません。プリント・メディアの良いところは、インターネットのようにだらだらしないところですから。20年やってきて、ある意味終わることにホッとする部分もあります。これで自分の時間を持てると(笑)。でも、全く終わったわけではなく、新しいカタチの何かをというプランと意欲はあります」ということだったので、将来新しく変わった「コメバ」の誕生が期待されます。

さて、ローマに6カ月滞在した個人的な印象は、街中に残る遺跡の類はいつ見ても圧倒されるが、あまりエネルギーの感じられない街だなというもの。

今回私用で、2度ばかりロンドン行きの予定があったのですが、ロンドンは街中がエネルギーに満ちてエキサイティング。で、ローマに帰って来るたびに、死んだようなとはもちろん言いませんが、何だか静かな街だなという印象を持ちました。有名な遺跡には、各国からのツーリストが群がってはいましたが。

しかし、20年以上住まれている笹尾さんは、もっと楽天的にローマ、そしてイタリアを見ています。

「イタリアは、国だけを見ていると遅れているように見えるかもしれませんが、とっても進んでいるものもあるんですよ。エレクトニクスとかコンピューターの部門など。外に出て活躍するイタリア人はいっぱいいます。国内でもホテルなど民間企業に勤める人は、一生懸命働いていますよ。失業率は高いんですが。雇用では問題があります。人を簡単には雇えない。すごくお金がかかるんです。雇った側の責任であるスーパーは33%! なんです。ですので簡単に辞めてもらえないなど、悪循環があります。


「COMEVA!」発行者である笹尾真由美さん

私にも息子がいますけど、彼の将来、仕事を含めて心配です。でも気候がとても良い国です。世の中上手くはいっていなくても、この青空を見てるとスカッとする、そういう国なんですイタリアは。そういう気持ちを持てますよ。それにイタリア人はヘルス・コンシャスが強く、衣食住はしっかりしています。人間のあるべき生き方というのはきっちり知っていて、それについては小さいころからしっかり教えられます。イタリア人のビジネスマン、日本人のビジネスマンとも仕事をしましたが、イタリア人は男でも夜の7時ごろになると子どもの面倒を見なければならないのでそれを気にします。しかし日本人にはそういうところは一切ないです」

イタリア人の良いところ、悪いところ、という質問を投げてみる。「そういう質問は好きじゃないです。一概には言えません。例えばイタリアの北と南のステレオタイプ的な見解、あるいは有名なマフィアでも、ひとくくりにはできないです。北の方が進んでいて南の方が遅れているとか。ナポリやシシリーで有名なマフィアは、ミラノにだって組織を作っていますよ。洗練されて目に見えないだけで。イタリア人は、今の状況が続くとは決して思っていません。ちょっと変われば、素晴らしい国になると思っています」

最後はやりたかった常套句で。ビバ・イタリーアーノ! アモーレミオ!(元発行人 坂井健二)

ローマ便り点描

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