オーストラリアで話す日本酒のお話【第3回】仕込み水の話

オーストラリアで話す日本酒のお話

第3回仕込み水の話

今回は、米以外の非常に大事な日本酒の主原料「仕込みの水」についてです。

硬い水と柔らかい水

水には「硬度」があり、これは1リットル中に含まれるカルシウムとマグネシウムの量により決まります。日本酒の世界では、硬水であれ軟水であれ、地元の名水を生かした造りが蔵の特徴となって現れます。

その土地の名水が生かされ、個性ある日本酒が生まれる
その土地の名水が生かされ、個性ある日本酒が生まれる

「灘の宮水」は硬水の代表格

硬水には上記以外のミネラル分も多く含まれ、普通に飲んでも口の中にややしっかりした印象が残ります。この味わいに加え、ミネラル分は酒造りの際に活躍する酵母の栄養となって発酵を促進するため、硬水で仕込んだ酒は切れのある引き締まった味わいに仕上がります。日本では、兵庫県西宮に湧き出る六甲山からの伏流水が硬水の代表的存在として名高く、灘は江戸時代から清酒の一大生産地として日本酒産業を支えてきました。

辛口、男酒などの代名詞でくくられることも多い兵庫県のお酒ですが、ドライな切れとうまみが共存・共鳴する純米酒、更にアプリコットやフルーティーな香りと辛さ、酸味のバランスがすばらしい吟醸酒など、その魅力には奥深いものがあります。いろいろな表現を考えながら楽しみたいのが硬水のお酒です。

新潟の淡麗柔らかな味わいの代表格「吉乃川」
新潟の淡麗柔らかな味わいの代表格「吉乃川」

柔らかなお酒は軟らかな水から

日本の水道水の硬度は他の多くの国に比べ低めであるため、私たちの体が通常慣れ親しんでいるのも軟水です。硬度が低くミネラル分の少ない軟水を仕込みに使うと、発酵はゆっくり進み、柔らかい優しい印象のお酒ができます。

軟水の銘酒産地として名高い県は、新潟、秋田、広島、愛知などです。この柔らかい水に加え、米、精米歩合、酵母の選択など、どのような選択を重ねるかによって仕上がりは多種多様。軟水+端麗辛口=すっきり・スマート、といった独自の柔らかさを表現するのが蔵の腕の見せ所です。

「日本酒度」もありますが……

よく耳にする「日本酒度」は、お酒を日本酒度計という計器で測定した結果を指します。プラス数値が高いほど糖分が少ない、つまり辛口とされます。1つの目安ですが、同時に香り、酸、味の複雑さなどにより、お酒の印象はかなり変わります。硬水・軟水の違いが何となくつかめたら、次は「甘口・辛口」だけでない日本酒の選択をしてみましょう。例えば、グリルした豚肉などを切れの良い辛口で楽しみたい時は灘の吟醸など、料理とのマッチングにも選択肢が広がります。


雄町稲穂
在シドニー歴20年。日本での仏・独・豪ワインの輸入販売を経て、シドニーのブティック・ワイン専門会社に入社、日本やアジア諸国へ豪州プレミアム・ワインを輸出。現在は豪州食材を世界に広める企業に勤務。日本酒は勉強不足を痛感し、2017年にTAFEのWSET(Wine & Spirit Education Trust)SAKEコースを受講。レベル3を「優」で卒業したものの、テイスティングは「良」に留まったため、スキル・アップのため実技に励んでいる

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