第55回 NAT 特需

 

第55回 特需

文・植松久隆 Text: Taka Uematsu


決勝会場で、豪州に感謝のメッセージを掲げる辻前斉昭さん(筆者撮影)

1月のアジア・カップ特需が終わって、ほっとひと息を付いている。日頃は、本紙で日豪のサッカー・シーンを取り上げ、日本には不定期で豪州サッカーを切り取ってきた。「豪州サッカーの発信」というニッチをケアするのは、どちらかというと地味な役回りだが、当連載を開始以来4年半、地道にその活動を続けてきた。

しかし、アジア・カップ期間中は、そのニッチにアジア中が注目するわけで、今までにない程の忙しさを経験した。日豪両代表の取材で、セスノック、ニューキャッスル、ブリスベン、シドニーと飛び回りつつ、多くの原稿も書いた。さらには、大会組織委にブリスベン日本人コミュニティのアンバサダーに任命されていた関係で、ブリスベンの試合での動員にも微力ながら貢献した。

今大会の期間中、日本からの豪州サッカーへの関心の度合いが上がっているのを実感できたことは得難い経験だった。1つ例を引こう。この大会の活躍でスターダムにのし上がったサッカルーズの攻撃の要、マッシモ・ルオンゴ。豪州国内でも、大会前にはサッカー好きでないと知らない名前だった彼は、大会の活躍でサッカルーズの新しい顔の1人に育った。大会前までは、自国でも全国区の知名度がなかったのだから、彼の日本での知名度は推して知るべしだ。実際のところ、大会前の段階では、ほぼなかったと言って良いだろう。それがどうだ、アジア・カップが終わって約1カ月が過ぎた今、試しにグーグルで彼の名前を打ち込んでみると、拙稿も含めていくつもの彼に関する記事が上がってくる。これは、大会MVPに輝く活躍で、大会期間中にルオンゴへの興味を持つ人がかなり増えていき、その知名度が定着したことを意味する。

豪州代表の愛称「サッカルーズ」も、同じようなケース。その呼び方自体も、今大会を経て、日本でもかなり人口に膾炙(かいしゃ)してきたようだ。サッカー・メディアだけでなく大手マスコミが記事内で使用する事例も見られるなど、誰も活字にしていない中を意地になって使ってきた身としては隔世の感しきりだ。

今大会をきっかけに豪州のアジア・サッカー界でのプレゼンスが高まっていくことを素直に喜ぶ身には何とも解せないのが、大会期間中に降って沸いた「豪州アジア追放」騒動。この話題の詳細に触れるには、残念ながら紙幅が足らない。とにもかくにも、アジア・カップ特需が終わった。今までにない素晴らしい経験ができたことを何よりも感謝したい。


【うえまつの独り言】
今年もACLの季節がやってきた。既にCCMは初戦を終え、ブリスベンとWSWが当稿の締め切りの翌日に初戦を控える。まさかの(?)WSWのアジア制覇に続いて、豪州勢がどこまでやれるか注目だ。小野伸二に続いて、高萩洋次郎、田中裕介の日本凱旋の結果はどうだったかな。

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