連邦議会の式典から退場させられる
オーストラリア訪問中のチャールズ英国王を迎える公式行事が21日、首都キャンベラの連邦議会議事堂で開かれたが、先住民アボリジナル出身のリディア・ソープ上院議員が国王に「あなたは私たちの王様じゃない。ここはあなたの土地ではない」などと詰め寄る一幕があった。
公共放送ABC(電子版)によると、ソープ議員は式典中、国王の数メートル手前まで迫り、「あなたは私たちにジェノサイド(大量虐殺)を行った。私たちの土地を返せ。あなたが盗んだ私たちの骨、骸骨、幼児、人々を返せ」と罵声を浴びせ、「私たちが求めているのは(政府と先住民とのトリーティー=条約)だ」と主張。警備スタッフに連れられて会場から退場させられながら、「ファック・ザ・コロニー」(植民地よ。糞食らえ)と罵った。
チャールズ国王とカミラ王妃からは、抗議行動への反応は特になかったという。2人は式典の参加者と歓談を続け、大きな混乱はなかったもようだ。
先住民はオーストラリア大陸に数万年前から居住していたとされるが、18世紀以降の英国の植民地建設によって駆逐された。欧州由来の疫病や虐殺で人口が減り、弾圧や人種差別政策が行われた。その後、先住民の土地権を認める判決(1992年)、先住民の子どもへの過去の強制隔離政策に関するケビン・ラッド首相(当時)による謝罪(2008年)など和解が進み、植民地建設は先住民への侵略だったとの歴史認識が定着している。
ただ、英国王がオーストラリアの元首を務める立憲君主制は続いており、欧州系オーストラリア人を主体とする現在の政府が統治する国家体制も変わらない。一方、ソープ議員ら一部の急進的な勢力は、あくまでも現政府と先住民が対等な立場で、トリーティーつまり国家間に相当する取り決めを締結するよう求めている。
ソープ議員は、これまでもたびたび過激な言動や行動で物議を醸してきた。2020年に左派グリーンズ(緑の党)の上院議員に就任。しかし、トリーティーを求める先鋭的な立場から、先住民の地位を明記する憲法改正(23年に国民投票実施。結果は否決)に反対したため、改憲に賛成した同党を離党し、無所属議員となっている。
■ソース
Senator Lidia Thorpe interrupts royal reception for King Charles and Queen Camilla(ABC News)