コロナウイルスは呼吸器だけでなく循環器も侵す

研究成果が疫病治療への手がかりにも

 これまでコロナウイルス感染で呼吸器系症状や肺の後遺症が大きく取り上げられてきたが、最近のオーストラリア国内の研究でも循環器系特に血管に後遺症を残すという証拠が挙がってきている。研究者はこの発見がコロナウイルス感染症治療の手がかりになることに期待をかけている。

 コロナウイルス治療に向けた研究が世界中で取り組まれており、研究者は、スタチンや抗凝固剤など、心臓疾患リスクを引き下げる既存の医薬がコロナウイルス治療に効果を持つ働きを突き止めようと努力を続けている。

 過去に遡って14,000人近いコロナウイルス入院患者を調査した新研究で、治療にスタチンを使って死亡リスクを引き下げられることを突き止めたが、コロナウイルス重症例でスタチンが大きな影響を持つと信じられない専門家も少なくない。

 専門家は、「コロナウイルスが広がり始めた頃、主として肺に重大な症状を引き起こしていたために肺疾患ウイルスだと思い込んでいた。しかし、やがて単に呼吸器系疾患というだけではないことが明らかになってきた。世界中で医療従事者は患者がしもやけや赤く腫れた指、つま先などの症状をみせていた。また、臨床検査技師らはコロナウイルスが肺その他の体の部位の血管に侵入することに気づき始めた。これまでSARSなどのコロナウイルスが全身に症状を見せることほとんどなかった」と語っている。

 ただし、コロナウイルス患者すべてが血管の症状を示すわけではなく、ほとんどの患者は呼吸器系の症状を見せるだけで身体本来の免疫系の働きで迅速に快復する。

 ところが、ごく少数ながら非常な重態になる患者がおり、その場合にはウイルスが循環器系も侵していることが明らかになってきた。ある患者では身体の免疫系が十分に働いておらず、基礎疾患を持った患者がコロナウイルスに感染するとリスクが大きくなっている。ただし、これだけでコロナウイルスの重症例の説明がつくわけではない。コロナウイルスと心臓疾患の関係はコロナウイルス大発生の初期から明らかになっていた。ただし、その理由は明らかではなかったし、オーストラリアでは患者そのものが少なかったため、目立っていなかった。

 さらに、コロナウイルス重態患者では、ウイルスが血管の内壁を形成している内皮細胞にとりつき、炎症反応を起こしていた。しかも、この内皮細胞はコロナウイルスが人体の細胞の細胞膜に侵入する際にとりつくACE2というタンパク質を発現することは分かっていた。しかも、人体には10万kmにのぼる血管があり、ウイルスにとっては別天地のような場所だった。

 炎症反応が起きると炎症性タンパク質が作られ血液の粘性が高まることから血液の流れが妨げられることになり、循環器系も侵すことにもなる。
■ソース
Coronavirus affects the blood vessels as well as the lungs. Understanding this may be key to treating it

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