運行システム、開業時期は未定

オーストラリアの連邦労働党政権は13日、2026年に開港する西シドニー国際空港(WSI)と南西郊外を結ぶ新鉄道建設計画を発表した。ただ、新路線の運行システムやルートの詳細は明らかにしなかった。①完全自動運転の新鉄道システム「シドニー・メトロ」の西シドニー空港線(建設中)を南へ延伸するのか、②旧式の従来型鉄道網の一部とするのか、は未定だとしている。
開業時期も決まっていない。用地買収や建設のスケジュールは、ニューサウスウェールズ州政府が最終決定するとしている。現在建設中の「シドニー・メトロ西線」は、開業予定が2032年と着工から12年かかる。新線が実現したとしても、開業は30年代後半から40年ごろといった時間軸となりそうだ。
西シドニー空港は、シドニー都市圏で2番目の国際空港として14年に建設が決まり、18年に着工した。滑走路3本で飽和状態に近づいているシドニー国際空港(SYD)の輸送力を補完する。開港時は滑走路1本だが、もう1本増設する将来構想もある。
加えて、国家事業として、空港周辺を人口増加が著しいシドニー西部の拠点として整備する。空港隣接地に企業を誘致して住宅建設を進め、市内中心部と西郊パラマタに続くシドニー都市圏第3の都市を建設する。
新空港は中心部から車で1時間半
しかし、新空港の所在地は、シドニー市内から西へ直線距離で約45キロ離れている。現時点で直接アクセスできる公共交通機関はなく、車でも最短約60キロ、所要時間は約1時間30分かかる。ちなみに、東京都心と成田空港の間はおおむね同じ距離感だが、成田は上野駅から京成電鉄「スカイライナー」で最短36分で行ける。
シドニー中央駅から地下鉄に乗れば10分程度で行ける既存のシドニー国際空港と比べると、中心部からのアクセスは非常に不便だ。このため、公共交通インフラの整備が急務となっている。
ただ、連邦選挙(5月17日までに実施)を目前に控えたこの時期の計画発表は、露骨な選挙対策との見方も出ている。13日付のシドニーの日刊紙「デイリー・テレグラフ」は一面記事で、「無所属や野党候補が狙うシドニー南西部の選挙区を標的に、現金をばら撒くものだ」と評した。
オーストラリアの連邦選挙では、シドニー西部など大都市外縁の浮動票が、勝敗のカギを握るとされる。今回の新鉄道整備計画のルート上にあるウェリワとマッカーサーの2つの下院選挙区では、いずれも労働党議員が2016年初来以来、議席を保持している。しかし、同紙が労働党関係者の話として伝えてところによると、次期選挙では対立候補による追い上げが激しそうだという。特にウェリワ選挙区では、労働党の議席保持が危ぶまれているとしている。
労働党のアンソニー・アルバニージー首相は近く、選挙実施を発表する。今後の政治日程から、投票日は現時点で5月3日、10日、17日の3つの土曜日に絞られている。最新の世論調査では、労働党と保守連合(自由党、国民党)の2大政党のいずれも過半数に満たない「ハング・パーラメント」(少数政権)となる公算が高まっている。仮に労働党が下野することになれば、新鉄道計画も白紙になる可能性がある。
■ソース
Albanese Labor Government green lights new rail links to Bradfield(Prime Minister of Australia)
Rails Run for the West(The Daily Telegraph)