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オーストラリア人の対中感情が悪化した理由とは?

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有力シンクタンクが調査結果発表

グラフ1(出典:Lowy Institute Poll 2022)

 中国に対する豪州人の感情が悪化している。中国を従来の経済的パートナーから軍事的脅威ととらえる人の割合が増えている。豪州の有力シンクタンク、ローリー研究所が29日発表した国際情勢に関する世論調査で明らかになった。

 調査の中で「中国が今後20年以内に豪州の軍事的脅威になる可能性は?」(グラフ1)との設問では、「きわめて高い」と答えた人は32%、「ある程度高い」は43%となり、合計で75%に達した。4年前の2018年調査の合計45%から30ポイント上昇した。

 「中国は豪州にとって経済的パートナーか、安全保障上の脅威か?」との設問では、「安全保障上の脅威」と答えたのが63%、「経済的パートナー」が33%だった。2018年の同じ設問では82%が「経済的パートナー」と答えていたのに対し、「安全保障上の脅威」はわずか12%だった。

 さまざまな国際問題を例示して「今後10年間、豪州の死活的な国益にとっての脅威は何か?」を聞いた設問では、「非常に脅威だ」との回答が一番多かったのは、「ロシアの外交政策」(68%)だった。「中国の外交政策」(65%)、「台湾をめぐる米国と中国の軍事的衝突」(64%)、「海外からのサイバー攻撃」(64%)、「気候変動」(62%)がこれに続いた。

グラフ2(出典:Lowy Institute Poll 2022)

 一方、主要国について「世界で責任ある行動を取っている国として信用できるか」を聞いた設問(グラフ2)では、日本は「非常に信用できる」が27%、「ある程度信用できる」が60%だった。合計87%が信用できると見ており、例に挙げた8カ国のうち最も高かった。

 同研究所は今年3月15〜28日、豪州の成人2006年を対象に調査を実施。追加の電話調査を4月に成人3,583人を対象に行った。統計上の誤差は2.2%としている。

経済的パートナーから軍事的脅威へ

 豪州人の対中感情が悪化している背景には、豪州と中国の外交関係が冷え込んでいることがある。1990年代から2000年代にかけて、中国の急速な発展は、豪州の資源輸出の急増をもたらし、長年に渡る経済成長の原動力になった。このため、豪州ではおおむね2010年代前半まで、拡張主義や人権問題には目をつむり、中国を経済的パートナーとして重要視してきた。ところが、2010年代後半に入り、中国を見る目は大きく変わった。

 南シナ海などで海洋進出を進める中国に対する脅威論が高まり、豪州は18年に中国の工作活動を念頭に外国人の政治献金を禁止した。19年には中国通信大手2社を次世代通信「5G」整備事業から排除。これに対して中国は豪州産の石炭の通関を止め、大麦に高関税を課すなどして対抗した。

 20年にモリソン首相(当時)が新型コロナウイルスの起源を究明する独立調査を中国に要求すると、中国政府は激しく反発。豪州産の8品目について、禁輸または高関税をかけるなどして国内市場から締め出す報復措置を強行。2国間の亀裂は決定的なものとなっている。

 5月26日には、南シナ海で中国空軍の戦闘機が豪空軍の哨戒機の進路を妨害する一触即発の事態も起きた。中国機は豪機の前方に回り込み、レーダー探知を妨害する「チャフ」を散布し、豪機のエンジンに混入。豪政府は非常に危険な行為だとして中国を非難した。

■ソース

Lowy Institute Poll 2022

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