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「緑の党」の石炭・天然ガス新規開発凍結要求 オーストラリア与党労働党は「受け入れられない」

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セーフガード・メカニズム法案は上院で審議難航か

オーストラリアの石油・天然ガス開発大手「ウッドサイド・エナジー」が操業する西オーストラリア州北西部沖の天然ガス田。オーストラリアはカタールを抜いて世界最大の液化天然ガス(LNG)輸出国となったが、化石燃料の開発プロジェクトには逆風が吹いている(Photo: Woodside Energy)

 オーストラリアの与党労働党が温室効果ガス削減策の柱と位置付ける「セーフガード・メカニズム」法案の審議は、「グリーンズ」(緑の党)が主導権を握る上院で、審議が難航しそうだ。温室効果ガス削減と経済成長の両立を図りたい労働党政権としては、石炭・天然ガス新規開発の全面凍結というグリーンズの急進的な要求を簡単に呑めないからだ。

 連邦産業・資源・エネルギー省が現時点で把握している石炭・天然ガス開発プロジェクトの計画や構想は、30年までに100件以上を数える。この中には、スカボローやブラウズ(いずれも西オーストラリア州北西部沖の海底ガス田プロジェクト)といった過去最大級の事業も含まれている。与党は再生可能エネルギーの拡大を目指しているものの、オーストラリアの経済成長のエンジンであるエネルギー輸出を手放すわけにはいかない。

 与党労働党のクリス・ボウエン気候変動相は「我々はグリーンズと良い関係を築いており、議論することはできる。しかし、それは我々が選挙で公約したことに対して(有権者から)信任を得た範囲内での協議になる」と語り、石炭・天然ガス新規開発の凍結要求を受け入れない方針を改めて示した。

ねじれ議会でグリーンズが存在感

 与党労働党は22年5月の連邦選挙で、下院で過半数を制して政権交代を果たした。しかし、上院(定数76議席)は、労働党26議席、最大野党保守連合(自由党、国民党)32議席、グリーンズ11議席、その他勢力7議席と、与党が過半数に満たない「ねじれ状態」が続いている。

 このため、与党が同法案を成立させるためには野党の協力が不可欠だが、より緩やかな排出削減を訴える保守連合は反対を表明。過半数の39票を獲得するには、上院でキャスティングボートを握るグリーンズの11票に加え、少数勢力から少なくとも2票を取り込む必要がある。

 グリーンズは石炭・天然ガス新規開発の凍結のほか、「35年までに温室効果ガス排出実質ゼロ」(オーストラリア政府の公式目標は50年)、「石炭火力発電所の即時停止」、「30年までに燃料炭の輸出停止」、「40年までに製鉄用一般炭を除く全化石燃料の輸出停止」などの政策を掲げている。

 こうした急進的な主張は、環境保護に熱心な都市部のインテリ層や若者を中心に支持を広げ、各種世論調査では10%前後の支持率を獲得している。上院では11議席(世住民政策をめぐり対立したリンダ・ソープ上院議員は2月に離党して無所属に)まで議席を増やし、昨年の連邦選挙では下院でも3議席増の4議席と党勢を拡大している。

 なお、昨年の選挙では、左派のグリーンズとは別に、保守系ながら温室効果ガス削減に積極的な無所属議員の一派、通称「ティール」が下院で新人6人を含む10人、上院で新人1の合計10人を当選させた。温暖化対策に関する有権者の関心の高さを改めて印象付けている。

■ソース
Greens offer support for safeguard mechanism on condition it blocks new coal and gas(ABC News)

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