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タスマニアを除くオーストラリア本土全州で政権掌握へ 中道左派の労働党

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NSW州議会選挙は生活コスト問題が争点に

シドニー市内サセックス・ストリートにあるオーストラリア労働党ニュー・サウス・ウェールズ州支部(Photo: 守屋太郎)

 3月25日投票のオーストラリア東部ニュー・サウス・ウェールズ(NSW)州の州議会選挙。最大野党の中道左派・労働党が勝利すれば、昨年5月の連邦選挙に続き、経済の中心地シドニーを抱える最大州でも政権交代を実現し、タスマニア州を除くオーストラリア本土すべての政権(連邦政府と7つの州・準州政府)を握ることになる。

 選挙戦では、インフレや利上げで生活コストが上昇している問題が、主な争点となっている。労働党はこれまでに、通勤者の負担を減らすため道路通行料金の合計額を1週間当たり最大60豪ドルに抑えることや、与党が推進してきた州営企業の民営化中止などを公約している。

長期政権に「飽き」、スキャンダルも多発

 オーストラリアでは2大政党制が定着しており、中央の連邦政府、地方の州政府ともに、財界や経営者が支持する保守連合と、労組を支持基盤とする労働党が数期ごとに政権交代を繰り返す。グリーンズなどの少数勢力がキャスティングボートを握るケースも、しばしば見られる。

 オーストラリアには「野党が勝利するのではなく、与党が敗北するのだ」という言葉がある。つまり、野党が国民的な人気を集めて選挙に勝つのではなく、長期政権に対する飽きが与党を敗北に導く傾向が強い。珍しい罰則付きの義務投票制を採ることから、投票率がおおむね90%前後と高いため、岩盤支持層の組織票よりも支持政党を持たない浮動票の「風」が勝敗を左右する。

 NSW州与党保守連合の支持率が低下している背景には、こうした長期政権に対する有権者の「そろそろ潮時だ」との評価があると見られる。

 加えて、スキャンダルも相次いだ。自由党のバリー・オファーレル元州首相は2014年、民間企業から贈答された3,000豪ドルの高額なワインを申告していなかったことが発覚したため辞任。グラディス・ベレジクリアン前首相も21年、元交際相手のダリル・マグアイア州議員の不正疑惑に絡み辞任に追い込まれた。今年1月には、ドミニク・ペロテ現州首相が、20年前の21歳の誕生日の仮装パーティーでナチス・ドイツの制服を着ていたことが明るみに出ている。

保守票が第3勢力に流れている!?

 最近では、2大政党離れと第3勢力の台頭という新しい流れも強まっている。

 22年5月の連邦選挙では、アンソニー・アルバニージー現首相が率いる労働党が9年ぶりに政権を奪回したが、一次票では保守連合が大幅に得票率を減らす同時に、労働党も小幅に得票率を減らした。一方、温室効果ガス削減などを唱える第3勢力が一次票の約3分の1を得て台頭した。2大政党がいずれも得票を減らしたにもかかわらず、労働党が勝利したのは、2大政党に有利な特殊な投票制度「優先順位付連記投票制」により、第3勢力への得票が労働党に配分されたからだ。

 第3勢力の台頭というトレンドは、NSW州の世論調査にも表れている。調査会社ロイ・モーガンのミシェール・レビーン最高経営責任者(CEO)によると、保守連合の政党別支持率は前回19年選挙の一次票得票率と比較して8.1ポイント減らしたが、労働党はほとんど変化がなかった。一方、グリーンズは2.4ポイント、その他の政党は5.5ポイント、それぞれ支持を増やした。このため、保守連合への支持が第3勢力にシフトしている可能性があるという。

「12月の最新の世論調査では、NSW州の有権者の約3分の1が、2大政党以外に投票すると答えた。昨年の連邦選挙で、労働党の一次票得票率が32.6%と保守連合の35.7%より少なかったにもかかわらず、勝利したのと全く同じ現象が起きている。連邦選挙では一次票の3分の1近い31.7%が少数野党や無所属に流れた」(レビーンCEO)

■ソース
NSW Voting Intention: ALP increased their lead over the L-NP to end 2022: ALP 55% cf. L-NP 45%(Roy Morgan)

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