生体家畜輸出内部告発の獣医を時の労働党政府が罷免

「生体家畜輸出は今も動物虐待問題が解消されず」

 ABC放送(電子版)が入手した文書で、生体家畜運搬船の内部がおぞましい状態で、家畜が虐待されているとする証拠を発表した獣医が雇用者の連邦政府に罷免されていたことが明らかにされた。

 ドクター・リン・シンプソンは、2012年にABC放送の時事番組「Four Corners」が生体家畜の残虐性を報道したことを受け、事実調査のために連邦政府農業省に雇われた当時、生体家畜輸出の問題では経験豊かで尊敬を受ける国内有数の獣医だった。

 Animal Welfare Branchの技術顧問として、生体家畜輸出の国内基準見直しをする上で政府運営委員会に報告書を提出するよう要請されたシンプソン獣医は2012年11月に報告書を提出、この報告書は機密書類とされるはずだった。

 報告書は、家畜が狭く劣悪な環境に閉じ込められ、糞尿にまみれている。何週間も硬い床に立ち続けさせられているため、脚の負傷も多く、安楽死させるしかない状態になっている。また、積み込み前の検査がいい加減なため、仕向地までの航海に耐えられそうにない病気の家畜まで積み込まれることもあったと述べられている。

 シンプソン獣医は、「11年間、生体家畜運搬船の検査をして見聞きしたことをできる限り正直に書いたつもりだ。私が報告書に書いた運搬船の状況は毎回同じだった。脚の負傷、肺炎、糞尿にまみれた家畜を見続けてきた。

 しかし、報告書は農業省の手違いで、省のウエブサイトに掲載されてしまった。その時から、シンプソン獣医は他の職員から孤立させられ、報告書の証拠も書き替えられた。会議にも出席させてもらえず、オーストラリア海事安全局に提出する予定だった報告書も生々しい証拠はすべて削除するよう要求された。

 ドクター・シンプソンは、文書掲載から何週間かして解雇され、「打ちのめされた気持ちだった。生体家畜輸出業界が規制当局を牛耳っているのだった。政府の仕事で政府に雇われた人間を業界が追い出すことができるというのは腐敗行為だ」と語っている。

 また、当時農業省家畜部の政務次官補だったカレン・シュナイダー氏が、ドクター・シンプソンに宛てて、「業界が報告書を問題にしており、ドクター・シンプソンとは一緒にやれないと言ってきたために解雇された」ことを認め、ドクター・シンプソンの報告書は申し分ないようであり、省内でも貴重な資料だったと述べている。

 しかし、2014年からAustralian Livestock Exporters Council (ALEC) 会長を務めている元労働党党首のサイモン・クリーン氏は、業界が獣医を脅していることを否定し、さらに、「ドクター・シンプソンの報告書はすでに古くなっていた。業界は巨額を投資して生体家畜輸出問題を改善してきた。もう、報告書にあるような状態はなくなっているはずだ」と述べている。

 ドクター・シンプソンは獣医をやめているが、「生体家畜輸出業界は今も動物福祉の問題が大きく残っていることは疑えない。そうではないというのは誤った情報を信じているか、嘘つきか、仕事を失うのが怖くて口を閉ざしているだけだ」と語っている。
■ソース
Vet removed for exposing appalling conditions on live export ships

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