豪の安全を守る「セコム・オーストラリア」

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第11回

セコム・オーストラリア

山下卓也 代表取締役社長

昨年創業50周年を迎えた日本最大の警備保障会社セコム。早くから警備の機械化に成功し、現在ではセキュリティー事業を中核に防災や医療、地理情報サービスなど様々な「安全・安心」のソリューションを提供している。在豪現地法人セコム・オーストラリアの事業戦略について、山下卓也・代表取締役社長に聞いた。(インタビュー=ジャーナリスト・守屋太郎)

●PROFILE
やました・たくや
セコム・オーストラリア代表取締役社長
<略歴>1990年青山学院大学経営学部卒業後、同年セコム(株)入社。現場や本社勤務を経て、社内制度で米国留学。2001年から6年間飯田・戸田両セコム創業者(取締役最高顧問)の秘書を務める。その後セコムグループの(株)パスコへ出向し、経営管理部長を経て国際事業部門の責任者を務め、2013年5月よりセコムオーストラリア代表取締役社長就任(現職)

 

豪州にも安全・安心を提供する
国防省から受注、高い信頼獲得

 

——最初にセコムとはどんな会社なのか教えてください。

創業者はともに取締役最高顧問を務める飯田亮と戸田壽一です。飯田が働いていた実家の酒問屋に戸田が訪ねてきては、「日本で誰もやったことのない事業を始めたい」と夢を熱く語っていたそうです。通信販売などさまざまなアイデアの中から最終的に「日本初の警備保障会社」に的を絞りました。

当時の日本では社会の安全を守るのはすべて警察の役割。警備サービスを提供する民間企業が存在しなかったので「これは行ける」と考え、欧州発祥の警備業を研究しました。日本でのビジネス・モデルを一から作り、1962年に「日本警備保障」を起業しました。

当時の警備は社員や職員が宿直などで行うのが一般的で、当初は事業を軌道に乗せるのに相当苦労したと聞いています。転機は64年の東京五輪開催でした。選手村の警備を無事やり遂げ、警備という仕事が社会に認められました。当社をモデルにしたテレビ・ドラマ「ザ・ガードマン」(65年〜71年)が大ヒットしたことも認知度の向上につながりました。ちなみに、ガードマンという和製英語はこのドラマが語源となっています。

早い時期から機械化を推進したことも追い風を吹かせました。66年に日本初のオンライン・セキュリティー・システム「SPアラーム」を導入しました。飯田が「機械にできることは機械にやらせ、人間は判断力や機動力、処置力などの人間にしかできないことに集中するべきだ」と考えたからです。利益率は格段に向上し、会社は飛躍的な成長を実現しました。

家庭向け安全サービスの開拓にも力を入れ、83年には社名をセコムに変更。「社会システム産業」を目指して情報や医療、保険などさまざまな事業に参入しています。現在のセコム・グループは、売上高の約5割強を占める「セキュリティー事業」を中心に、ビル・商業施設や住宅を災害から守る「防災事業」、病院運営支援や看護、介護などの「メディカル事業」「保険事業」「地理情報サービス事業」「情報系事業」「不動産事業」の7事業を展開しています。

 

——オーストラリア進出の狙いはどこにあったのでしょうか?

セコムは78年の台湾を皮切りに、アジアや欧米に積極的に進出してきました。現在、グループ全体で20カ国・地域に拠点を展開しており、中核のセキュリティー事業は11カ国・地域でサービスを提供しています。オーストラリアに進出したのは21年前の92年です。当初は日系企業を中心に活動を始め、現在では需要の中心は主に豪州政府関係機関や現地の企業、家庭などとなっています。

 

他事業とのシナジー効果に期待

——オーストラリア事業の現状と課題をどのようにとらえていますか?


契約先をオンラインでモニターするコントロール・センター


日本国在外公館でも活躍する警備スタッフ

現地の株式市場に上場している台湾と韓国は非常に大きい売上規模があります。これらの2国・地域を除くと、売上高100億円規模となるオーストラリア事業はグループの海外拠点の中では最大級で、グループ全体に占める重要性も非常に高いものがあります。

オーストラリア国内では3大セキュリティー会社の一角を占めています。日本ではセンサーなど機器の開発から製造、機器の設置工事、センターでのモニタリング、警備員の対処まですべてセコム1社で包括的に受注しますが、オーストラリア市場は英国式で機器の提供や設置工事は別々の会社が行う慣習があります。当社はそれらをトータルで請け負うことができるのが強みです。

ただ、課題も少なくありません。日本では自社ブランドで機器も供給していますが、市場の性質が異なるオーストラリアでは汎用品を使用せざるを得ません。またコストのかかる常駐警備へのニーズが高いオーストラリアの警備業界はきわめて労働集約型で、機械警備によるモニタリングが日本やアジア市場と比べ相対的に少ないこともマイナス要素です。人件費など事業コストが高いオーストラリアでは、効率の高い機械警備に市場のトレンドをシフトさせていくことで、より適正な料金で良質なサービスを提供していきたいと考えています。

現状では企業向けのサービスが圧倒的に多く、家庭のニーズがまだまだ少ないのも課題です。家庭向けの安全サービスももっと普及させ、町中にセコムのステッカーを貼ってもらいたいですね。

 

——将来へ向けたビジネス戦略を聞かせてください。

セコムは2015年度までにグループ全体で売上高に占める海外比率を約2倍に引き上げる計画で、弊社はその中で重要な役割を演じることとなります。

セコムは今年、オーストラリア国防省から軍施設のセキュリティー向上を図る事業を約35億円で受注するなど高い信頼を得ています。現在、この国の市場で展開しているのはセキュリティー事業のみですが、今後は医療をはじめ他事業への参入も視野に入れています。日本市場では既に多業種展開によるシナジーが出ているので、オーストラリアでもさらに需要を掘り起こせる余地は十分にあります。

盗難や侵入者から身を守るだけがセキュリティーではありません。例えば、食品会社の冷凍庫にセンサーを設置して温度をモニタリングすることで、万が一冷凍庫が故障しても即座に対応して冷凍食品の損失を最小限にとどめることもできます。高齢者の自宅にセンサーを取り付けて異常があれば対応するといったサービスも可能です。オーストラリアでもより「安全・安心」な社会の実現に貢献していきたいと思います。

テイラーメイドで可能な限り対応しますので、日本人の在住者の皆さんも「こんなことできないの?」といった要望があればぜひご相談ください。

<会社概要>
●英文会社名:Secom Australia Pty. Limited
●企業形態:セコムの現地法人
●代表者:山下卓也・代表取締役社長
●拠点:シドニー、メルボルン、ブリスベン、キャンベラ、オークランド(NZ)
●従業員数:約480人(大半が有資格の警備スタッフ)
●主な事業:セキュリティー・サービス

<沿革>
1992年 シドニーに現地法人設立
2007年  セコム・テクニカル・サービス(キャンベラ)グループ入り
2011年 セコム・ガードオール(NZ)グループ入り
2013年 豪国防省のセキュリティー強化事業を受注


<トップに聞く10の質問>
1. 座右の銘:豁達(フータ)
2. 今読んでいる本:「アップル帝国の正体」後藤直義、森川潤・共著
3. 豪州の好きなところ:自然の中に街が共存しているところ
4. 外から見た日本の印象:宅配便などの非常に優れたサービスを生み出し、絶えず進化させる力のある国
5. 好きな音楽:サザンオールスターズ
6. 尊敬する人:飯田亮、戸田壽一
7. 有名人3人を食事に招待するとしたら誰?:決めきれません
8. 趣味:ゴルフ、日曜大工
9. 将来の夢:軽飛行機の操縦免許取得(パイロットになるのが子どものころからの夢でした)
10. カラオケの十八番:もう恋なんてしない

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