幸せワイン・ガイド@オーストラリア「バロッサ・ヴァレー」

ワインの産地、ブドウ品種名などの表記は、オーストラリア連邦政府のワイン振興団体であるワインオーストラリアの基準に合わせています。

今月の銘醸地:バロッサ・ヴァレー

世界的にも有名な銘醸地「バロッサ」

世界で最も有名なオーストラリアのワイン銘醸地は、恐らく南オーストラリア州のバロッサ・ヴァレーでしょう。州都アデレードから北に約70キロ、1時間ほど内陸に向かった所にあります。

気候は夏に乾燥し、冬に雨の集中する地中海性気候です。複雑かつ多様な土壌構成を持っているため、実にさまざまな生育環境でワイン用のブドウが作られています。


バロッサに降り立ち一面に広がるブドウ畑を見渡すと、ブドウの樹の多くがゴブレット状の形に仕立てられているのが印象的です。どっしりと太くうねった幹は、色濃い歴史を持つバロッサの象徴でもあります。

バロッサに最初に入植したのはイギリス人で、1842年、彼らによって牧羊や農業が始まりました。その後、シレジアより宗教的迫害から逃れたドイツ系移民が移り住み始め、その影響を強く受けながらバロッサは発展しました。そのため、バロッサのワイナリーにはヘンチキ(Henschke)やカレスキ(Kalleske)など、ドイツ系の家系が多く見られ、地名にもドイツ語が使われている場所が多くあります。

“世界最古”が多く残るバロッサ・ヴァレー

最初に、どっしりとしたブドウの樹がバロッサの歴史を象徴していると書きました。ブドウは一般的に、樹齢を重ねるごとに収量が絞られ、より凝縮した質の良いブドウが採れるとされています。

バロッサには、現存する世界最古と思われるブドウの樹が息づき、今も最高品質のブドウを実らせています。ラングメイル(Langmeil)に残る1843年に植えられたシラーズ、シリロ・エステート(Cirillo Estate)に48年に植えられたグルナッシュ、そして世界的なブランドであるペンフォールズ(Penfolds)のカリムナ・ヴィンヤードのブロック42のカベルネ・ソーヴィニョンは88年に植え付けられたもので、これらはそれぞれの品種の世界最古の樹だと思われ、現在もそれぞれのワイナリーが生産する最高品質のワインの原料となっています。

始まりは酒精強化ワインから

1888年に植え付けられたとされるペンフォールズのカルベネ・ソーヴィニヨン
1888年に植え付けられたとされるペンフォールズのカルベネ・ソーヴィニヨン

バロッサも、他の多くのオーストラリアのワイン産地と同様、元々は酒精強化ワイン(ポルトガルのポートやスペインのシェリーに代表される、醸造過程でアルコール「酒精」を添加するアルコール度数の高いワイン)の生産から始まりました。酒精強化ワインは、当時は貧血などの治療薬としても用いられていました。現在ではテーブル・

ワインの生産が主流となり、酒精強化ワインの生産はずっと少量にはなったものの、セッペルツフィールド(Seppeltsfield)やペンフォールズ(Penfolds)などで、現在でも最高品質の酒精強化ワインが作られています。こういったワイナリーのセラー・ドアを訪れると、酒精強化ワイン造りの歴史を今でも垣間見ることが出来ます。

力強いフル・ボディーの赤ワイン、エレガントな白ワイン

現在のバロッサは赤ワインの生産が主で、ワイン生産の8割を占めています。シラーズ、グルナッシュ、カベルネ・ソーヴィニョン、マタロ(ムーヴェドレ)などから、力強いフル・ボディーのワインが生まれます。中でもシラーズは、オーストラリアで最も多く植えられている品種でもあり、同時にバロッサを代表する品種でもあります。バロッサのシラーズは世界的にも有名で、リッチでフル・ボディー、柔らかなタンニン(渋味)が魅力です。

グルナッシュは、単一品種のワインも多く作られていますが、シラーズ、マタロとのブレンドされたワインでもよく知られています。「GSM」とラベルに書かれた赤ワインを見たことはありませんか?これは「グルナッシュ、シラーズ、マタロ」のそれぞれの頭文字を取ったもので、3種のブレンドです。テクスチャーとスパイス感のある赤ワインで、フランスの南ローヌ地方に倣ったワインのスタイルです。

一方で白ワインも、リースリング、シャルドネ、セミヨンなどが、特に標高が高く冷涼気候であるイーデン・ヴァレーなどの地区で、エレガントなスタイルのものが生産されています。リースリングは特に重要な品種で、10年以上熟成出来るものも多く生産されています。

センス・オブ・コミュニティー

バロッサの大きな特徴の1つに、地元愛を強く持つ土地柄があります。「センス・オブ・コミュニティー」が強く、地元の産業を盛り上げようという気概があちこちで感じられます。そして、その歴史の中では地元の人びとを助けた英雄的人物のストーリーも幾つか残っています。次回は、そんなストーリーを交えながら引き続きバロッサについてご紹介します。

バロッサを象徴する生産者の赤ワインを飲んでみよう

梅:平日のおうちごはんに

Torbreck Woodcutter’s Shiraz 2015/$25
Web: www.torbreck.com
焼き肉、すき焼きなどと

竹:週末デートに

HencshkeHenry’s Seven 2015/$37
Web: www.henschke.com.au
ラム・チョップ、ローストなどと

松:大切な人への贈り物に

Penfolds Bin 138 Shiraz Grenache Mataro
2014/$45
Web: www.penfolds.com
アイ・フィレ・ステーキ、上質なチーズなどと


<著者プロフィル>
フロスト結子
◎日本人としての合格者はまだ少ないワインの国際資格WSET® Diploma in Wine & Spirits及び日本酒のAdvanced Certificateを取得。日本でワイン関連商社の貿易業務に携わった後、2009年オーストラリア人の夫との結婚を機にシドニーへ移住。現在はオーストラリア国内大手オークション会社であるGraysOnlineのワイン部門でカテゴリー・スーパーバイザーとして勤務する傍ら、フリーランスとしてライティング、ワイン関連の翻訳、市場調査などで精力的に活動中。ワインのコメントは「とにかくおいしそうに書く」がモットー。Web: auswines.blog.jp

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