2016年1月 ニュース/総合

12月18日、東京都内で日豪首脳会談を行ったマルコム・ターンブル首相と安倍晋三首相(Photo: AFP)
12月18日、東京都内で日豪首脳会談を行ったマルコム・ターンブル首相と安倍晋三首相(Photo: AFP)

イノベーションで日豪協力

ターンブル首相が初訪日

マルコム・ターンブル首相は2015年12月18日、首相就任後初めて日本を訪問した。同日午後、東京都内の迎賓館で安倍晋三首相と日豪首脳会談を行った。両首脳はイノベーション(技術革新)分野を含む経済、安全保障の両面で日豪関係を強化すること、南シナ海などでの現状変更の動きに反対すること、などで一致した。

会談で両首脳は、日豪経済連携協定(EPA)や環太平洋パートナーシップ(TPP)協定を通した日豪経済関係の強化を確認した。経済連携の一環としては、イノベーション分野の協力推進で合意した。日豪の研究者や学生の交流、共同研究を推進するとともに、日豪交流促進会議で具体策を検討する。ターンブル氏は資源ブーム後のけん引役としてイノベーション主導の産業構造多様化を掲げており、日本の先端技術を取り込むことで経済成長につなげる。

一方的な現状変更に反対

会談の冒頭、両首脳は、地域の安全保障に対する日豪協力の重要性を強調した。安倍首相は「日豪の特別な関係はこの地域(アジア太平洋地域)の平和と繁栄に中軸の役割を果たす」と述べた。ターンブル首相も「両国は地域の平和と安全を維持するコミットメントを共有している」と応じ、地域の経済成長と安定には法に基づく国際秩序が不可欠との認識を示した。

安全保障について両首脳は、日豪協力がアジア太平洋地域の平和と安定の要との認識を共有し、協力を加速させることで合意した。日本が共同開発を目指す豪州の次期潜水艦についても意見交換した。

地域情勢については、名指しこそしなかったものの、中国の海洋進出に懸念を表明した。共同声明(英文)は「南シナ海の現状を変更する力による一方的な行動に強く反対する。大規模な土地の造成または建設の停止、軍事目的に使用しないことを要請する」と言明した。

日豪間の数少ない争点である捕鯨問題では、ターンブル首相が南極海での日本の調査捕鯨再開に「失望」を表明した。安倍首相は、捕鯨船に対する過激な妨害活動や暴力行為に必要な措置を講じるよう豪州側に要請した。

対日重視の姿勢示す

首脳会談に先立ち、ターンブル首相は18日朝に政府専用機で羽田空港に到着。日本科学未来館(東京都江東区)を訪問した。同日午後には、裏千家東京道場(新宿区)で安倍首相とともに茶会に参加した。会談後は、迎賓館で開かれた安倍首相主催の晩餐会に出席した後、離日した。

日本で1泊もせず往路・復路ともに機内泊という強行スケジュールだったが、14年のアボット前首相と安倍氏の会談で合意した「両国首脳の毎年の相互訪問」を果たした。両首脳が顔を合わせるのは、15年11月にトルコで初の日豪首脳会談を行って以来、「過去1カ月間で5回目」(安倍首相)。

安倍首相と信頼関係を築いたアボット氏に代わって15年9月に就任したターンブル首相は当初、「中国寄り」との憶測も浮上していた。しかし、アボット氏に続いて安倍首相とひんぱんに会談を重ね、中国より先に日本を訪問したことで、対日重視の姿勢を示した格好だ。


12月15日夜、マーティン・プレイスで行われた追悼集会には多くの人が献花に訪れた(Photo:AFP)
12月15日夜、マーティン・プレイスで行われた追悼集会には多くの人が献花に訪れた(Photo:AFP)

犠牲者に追悼の祈り捧げる

シドニーのカフェ立てこもり事件1周年

人質2人が犠牲になった立てこもり事件から1年が経った2015年12月15日夜、シドニー市内中心部のマーティン・プレイスで追悼集会が開かれた。事件現場となったカフェが入るビルは壁一面が光のアートで照らされ、犠牲者の家族や関係者、市民ら数百人(国営放送ABC)が祈りを捧げた。出席したマルコム・ターンブル首相は「私たちを分断しようとする人たち、私たちに対峙するため暴力を使おうとする人たちよりも、私たちはより強くあり続ける。愛と団結が勝利する」と述べた。

事件発生は14年12月15日朝。銃で武装した男がカフェの客や店員17人を人質に取って立てこもった。事件発生から約16時間後の16日未明、警察の特殊部隊が突入し銃撃戦となった。カフェのマネジャー、トリ・ジョンソンさんと客で弁護士のカトリーナ・ドーソンさんの2人が死亡、立てこもったイラン人の自称イスラム教聖職者マン・ハロン・モニス容疑者は射殺された。モニス容疑者は自称イスラム国(IS)の過激思想に影響を受けた単独犯だったとされる。

この他にも、オーストラリア国内ではイスラム過激思想に感化された人物によるテロ事件が相次いでいる。メルボルン郊外で14年9月、18歳の少年が警官2人をナイフで刺し、重傷を負わせた。シドニー西郊パラマタにあるNSW州警察本部では15年10月、15歳の少年が警察職員を銃で殺害した。いずれも容疑者は射殺されている。

カフェ立てこもり事件を機に、連邦政府はテロ対策をさらに強化した。15年12月3日には、テロに関与した二重国籍者のオーストラリア国籍をはく奪できるテロ対策強化法が連邦議会で成立した。一方、オーストラリア国防軍はテロ勢力との戦いを続けている。14年10月からイラク領内で有志連合による空爆作戦に参加し、15年9月からは空爆対象をシリア領内にも拡大した。

なお、日本の外務省は11月のパリ同時多発事件を受けて、海外に住む邦人にテロへの注意喚起を発出した。緊急時に速やかに連絡が取れるよう、3カ月以上海外に滞在する人は在留届を提出すること、3カ月未満の旅行者や出張者は「たびレジ」に登録することを呼びかけている。詳細は外務省のウェブサイトを参照する。


南シナ海のスプラトリー諸島周辺を飛行した豪空軍の哨戒機AP-3C「オライオン」の同型機(Photo: Australian Defence Force)
南シナ海のスプラトリー諸島周辺を飛行した豪空軍の哨戒機AP-3C「オライオン」の同型機(Photo: Australian Defence Force)

国防相、空軍機の派遣認める

航行の自由、中国軍に通告−南シナ海

中国が南シナ海の環礁に人工島を建設している問題で、豪国防軍が空軍機を偵察飛行させ、米軍の「航行の自由作戦」に事実上、参加していたことが明らかになった。マリース・ペイン国防相が2015年12月16日、訪問先のWA州で記者団の質問に答え、公式の場で初めて参加を認めた。

国防相は作戦について「驚くべき新事実ではない」と述べ、航行の自由を確保するために1980年から実施している「ゲートウェイ作戦」の一環との立場を強調した。豪州にとって最大の輸出相手国である中国を刺激するのではないかとの指摘に対しては、「国際法に基づく航海の自由と飛行の自由をオーストラリアが支持していることについて、中国が驚くとは思わない」と指摘した。

英BBC放送は15日、豪空軍の哨戒機AP-3C「オライオン」が11月25日に中国が領有権を主張する南シナ海・スプラトリー諸島付近を飛行したと報じていた。BBCが傍受したとされる無線通信では、同機の乗組員が「国連海洋法条約と国際民間航空条約に則って、オーストラリアの航空機が航行の自由の権利を行使している」と中国海軍に通告した。BBCによると、繰り返し通告したが、中国側から応答はなかったという。同機が中国が領有権を主張する環礁から12カイリ以内の空域に入ったかどうかは、明らかではない。

南シナ海では、米海軍のイージス駆逐艦が10月27日、中国が滑走路や灯台などの建設を進める環礁から12カイリ以内の海域に進入し、緊張が高まった。以来、豪州は米国の「航行の自由作戦」への参加を公表しておらず、中国への一定の配慮を示した格好だ。しかし、報道をきっかけに空軍機派遣の事実が明るみに出たことで、中国は反発を強めている。同盟国として絆が深い米国と経済の依存度が高い中国との狭間で、ターンブル政権は難しい舵取りを迫られている。


非資源部門の成長をけん引する国内最大の都市シドニー
非資源部門の成長をけん引する国内最大の都市シドニー

景気に回復の兆し

成長率と雇用改善もマクロ要因に依然不安

足踏みを続けていた豪州経済に、わずかながら回復の兆しが見え始めている。豪統計局(ABS)が2015年12月2日に発表した同年7〜9月期のGDPは前期比0.9%増、前年同期比2.5%増(いずれも季節調整済み)となり、4〜6月の前期比0.2%、前年同期比2.0%から加速した。資源部門が前期の落ち込みの反動で急回復したため商品・サービス輸出が前期比4.6%増と大幅に伸びるとともに、建設2%増、個人消費(家計最終支出)が0.7%増と内需も好調だった。

GDP統計について、スコット・モリソン連邦財務相は2日、声明で「豪年間成長率は(同じ資源国の)カナダの2倍で、先進7カ国(G7)や経済協力開発機構(OECD)加盟国の平均も上回っている。各部門の成長の内容を見ると、(資源輸出から他産業への)経済構造の転換が進行している」と指摘した。引き続き成長戦略に注力することが需要だとしている。

非資源部門の成長けん引に期待

一時は景気のテコ入れを図るため年内の追加利下げも予想されたが、ここに来て利下げ圧力は後退している。中央銀行の豪準備銀(RBA)は1日に開いた15年最後の理事会で、2.0%と史上最低の水準にある政策金利の据え置きを決めた。据え置きは5月以来7回連続だ。1月の理事会は例年通り休暇のため開かず、年初の理事会は2月5日に開催する。

RBAのグレン・スティーブンス総裁は1日の声明で、据え置きの理由に「過去数カ月間に景気回復への期待が高まった」ことを挙げた。また、豪州経済の現状について総裁は「資源部門の設備投資が大幅に落ち込んでいる中で、堅調な経済成長が続いている。成長率は依然長期トレンドを下回っているが、非資源部門の事業環境が改善しているとともに、雇用も力強く拡大している」と指摘した。

来年度は緩やかな成長拡大見込む

雇用情勢も好転している。ABSが12月10日に発表した11月の雇用統計によると、失業率は5.8%と前月比で0.1ポイント下落した。失業率は2014年6月以降ほぼ毎月6%以上で高止まりしていたが、2カ月連続で6%を下回った。就業者数は前月比7万1,400人増と、前月比1万人減の市場予想に反して大幅に拡大した。労働参加率は前月比で0.3ポイント上昇して65.3%に回復した。

一方、連邦財務省は15日に発表した年央経済・財政見通し(MYEFO)で、2015/16年度の実質GDP成長率を2.5%と5月の予算案発表時の予想を据え置いた(表参照)。失業率は6%、物価上昇率は2%、賃金上昇率は2.5%とおおむね現状維持か緩やかな回復基調となる見込み。MYEFOは「資源輸出主導から多様な原動力を持つ経済成長への構造転換」により、16/17年度の成長率は2.75%に加速すると予想した。

ただ、回復の兆候がどこまで持続的な成長に結び付くかは見通せない。最大の輸出先・中国の景気先行きへの不安は依然として払拭されていない。一段と加速している原油安も個人消費にはプラス材料だが、液化天然ガス(LNG)事業への投資縮小など企業や株式市場には打撃になる。最大の輸出商品である鉄鉱石の価格も足元で下げ幅を拡大している。米利上げが新興国経済に与える影響も注視する必要がある。中東情勢や南シナ海の緊張、米大統領選の混迷などの要因も、確率は低いが発生すれば大きな損失を生む「テールリスク」になりうる。こうした外的要因は、新年の豪州経済にとって引き続き大きな懸念材料となりそうだ。

主な経済指標の予想(2015年12月年央経済・財政見通し)

14/15年度(実績) 15/16年度 16/17年度
実質GDP成長率 2.20% 2.50% 2.75%
失業率 6.00% 6.00% 6.00%
消費者物価指数 1.50% 2.00% 2.25%
賃金上昇率 2.30% 2.50% 2.75%

オーストラリア国内ではスマホ普及率が約8割まで上昇
オーストラリア国内ではスマホ普及率が約8割まで上昇

スマホ普及率、大人の74%に
携帯のみのユーザーも約3割に

連邦政府の規制当局、オーストラリア通信メディア局(ACMA)は2015年12月2日、14/15年度版通信報告書を発表した。これによると、国内でスマートフォン(スマホ)を使用している18歳以上の大人は推定1,341万人と前年度の1,207万人から11.1%増加した。18歳以上の人口に占めるスマホ・ユーザーの割合は74%となり、前年度の67%から7ポイント上昇した。

18歳以上で携帯電話を使用している人の割合は94%に達しており、携帯電話ユーザーだけで見るとスマホ普及率は約8割まで上昇したと見られる。携帯電話全体の普及率はここ数年頭打ちとなっているが、「フィーチャーフォン」(従来型携帯電話)からスマホへの買い替えは依然として衰えていない。

スマホの普及が進む一方、フィーチャーフォンの退潮は鮮明だ。国内通信最大手テルストラ、2位オプタス・シングテル、3位ヴォーダフォン・ハチソン・オーストラリアの携帯大手3社は既に、契約プランとのセット販売でフィーチャーフォンの取り扱いをやめている。フィーチャーフォンの需要は現在、低価格のプリペイド端末やSIMフリー機に限られるが、プリペイド市場でも100ドル台の格安スマホが存在感を増している。いわゆる「ガラケー」の需要が根強い日本とは対照的に、オーストラリアではフィーチャーフォンが急速に市場から姿を消しつつある。

なお、固定電話の回線を契約せず、携帯電話だけを使う18歳以上のユーザーの数は536万8,000人と全体の29%まで拡大した。携帯電話、通信機能が付いたタブレット、モバイル通信専用モデムなどモバイル通信サービス加入者の総数は延べ3,177万人と全人口の1.3倍以上に増えた。一方で、固定電話の加入者数は908万人とモバイルの3分の1以下まで縮小した。

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