資産売却益や不動産投資の節税策見直し 富裕層にはより厳しく

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ジム・チャーマーズ連邦財務相は12日、連邦議会で行った予算案演説の冒頭で「過去数年間で最も重要かつ野心的な予算案だ」と強調した。オーストラリアは中東の戦争を制御できないとした上で、「この試練を経て、より強くより公正で、より生産的で、より強靭な国として立ち上がれるかどうか、決めることはできる」と予算案の施策に胸を張った。
同財務相が演説で示した予算案の5つの指針は次の通り。
◇世界的な石油危機を乗り越え、経済の強靭性を高める
◇可能な限り国民の生活コストの負担を軽減する
◇経済の生産性を向上させ、長期的な生活水準を引き上げる
◇働く全納税者への新たな減税を含む、労働者・企業・将来世代に向けた税制改革を実行する
◇歳入に対して歳出を抑制することで、インフレ圧力を緩和しつつ、財政をより健全かつ持続可能な姿に立て直す
予算案に盛り込んだ生活関連施策の要点は次の通り。
「オイルショック」対策
◇燃料・肥料の安定供給策 75億豪ドル
◇燃料の国家備蓄拡大 32億豪ドル
◇影響を受けた製造業・物流企業への無利子融資 10億豪ドル
◇国産天然ガスの20%を国内に振り向けること
物価高対策の減税
◇勤労者のための所得税額控除 1人当たり最大250豪ドル(27年7月以降)
◇低所得者層(年収1万8,201豪ドル〜4万5,000豪ドル)の所得税率(現行16%)引き下げ→26年7月から15%、27年7月から14%
◇所得税減税 26年7月から最大268豪ドル、27年7月から最大536豪ドル
◇所得税の課税所得 26-27年度から一律1,000豪ドル即時控除 平均205豪ドルの減税に
◇標準的な勤労者の場合、一連の措置で合計2,816豪ドル(約32万円)の減税に
◇燃料税率半減 総額29億豪ドル 今年4月〜6月末の3カ月間限定
住宅問題対策
◇総額20億豪ドルの「地域インフラ基金」創設 水道や電気、下水道、道路などのインフラ整備の資金を州や地方自治体に支援することで、10年間で最大6万5,000戸の新築住宅を供給。開発許可の迅速化・簡素化、建築基準の簡素化も
◇キャピタルゲイン税制の変更 資産を1年以上保有した後に売却した場合、売却益の50%を非課税にする現行の優遇措置を廃止し、インフレ上昇分を除いた利益について税率30%を適用→節税目的の不動産投資を制限し、住宅価格の高騰を抑制
◇「ネガティブ・ギアリング」優遇措置の見直し 投資用不動産の経費が家賃収入を上回る赤字の場合、他の所得と相殺して課税所得を減らせる優遇措置を27年7月以降、中古住宅について規制→新築住宅の供給を促進
富裕層への課税強化
◇節税目的の家族資産管理信託(トラスト)からの分配金に最低30%課税 一般の給与所得者と、トラストからの分配金で生活する富裕層の不公平感を解消
一般的にオーストラリアでは、時の政権の方針や経済・財政をめぐる変化に応じて、連邦予算案で税制や施策をひんぱんに変更する傾向がある。新制度を過去にさかのぼって適用したり、法改正前に前倒ししたりするケースもある。複数会計年度にまたがる予算配分も多い。
こうしたことから、連邦予算案の施策が生活やビジネスに影響を与える振れ幅は、日本の国家予算案よりも相対的に大きいと言える。事業主だけではなく、所得がある在住者はすべて確定申告(タックスリターン)を行う必要もあり、注視する必要がある。
◼️ソース
2026–27 Budget speech, Parliament House, Canberra(The Hon Dr Jim Chalmers MP Treasurer)