有効な遺言書がない場合の相続手続き – 身近な法律問題

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法律は何となく難しいもの――そう思ってはいませんか?しかし法律は私たちの日常生活と切っても切り離せないもの。このコラムでは毎月、身の回りで起こるさまざまな出来事を取り上げ、弁護士が分かりやすく解説を行います。

第15回:有効な遺言書がない場合の相続手続きについて

オーストラリア国内に不動産や銀行口座などの資産を残したまま、オーストラリアの遺言状を残されずに亡くなられる状態をIntestate(無遺言)と言います。この場合、亡くなられた方の相続手続きにあたって、親族の方が高等裁判所に遺産管理人として認めてもらう旨の申請(Letters of Administration)を行う必要があります。

無遺言の相続手続きでは、遺言状が存在しているケースのように遺言執行人が指定されていませんので、原則として、親族で一番血縁関係が近い方が遺産管理人として申請を行う形となります。

高等裁判所によって遺産管理人が選任されると、遺産管理人は相続の分配をSuccession Act 1981(クイーンズランド州の場合)に基づいて行わなければなりません。相続における配分は最初に生存配偶者が被相続財産のうち最初の15万豪ドルと家財道具(Household Chattel)を取得し、それ以外に遺産がある場合は親族間で分配する形となりますが、生存している親族によって分配方式は異なるため計算式は少し複雑です。

この場合、予期せぬ人にも相続権が発生したり、デファクト関係の間の子どもが相続人として認められるに当たって裁判が必要となったり、予想していなかった問題が起きる場合があります。

本コラムの掲載時点では日本とオーストラリア間には相続法に関する国際協定が批准されていませんので、日本人の方に注意していただきたいのは、仮に日本で遺言公正証書が存在していたとしても、その内容がオーストラリアの裁判所で考慮されるとは限らないということです。日本では遺産分割協議がまとまっていたり、仮に遺言公正証書が存在しているために親族全員が相続に納得されていても、オーストラリアでは無遺言だったために予期せぬ相続紛争が起きる場合があります。

ですから、オーストラリア国内に不動産や銀行口座などの資産がある場合には、オーストラリアで有効な遺言状を作成しておかれるのが無難です。

なお、「オーストラリアでは遺言書が無いと財産が政府に没収されてしまう」と勘違いをされている方にお会いすることがあります。これは特に昔からオーストラリアに長く住まれている日本人の方がそのように認識している場合が多いのですが、オーストラリアも日本と同様で遺言状が無くても相続の手続きを行うことは認められています。

政府に没収されてしまうケースというのは、基本的には日本のそれと同じで遺言状がなく、亡くなられた方の親族が1人も居ないような状況に限られます。ただ、遺言状が無い場合は相続に際して必要な手続きが増えますし、遺族間のトラブルの原因になりますので、遺言状を作っておいた方が良いに越したことはありません。


弁護士:神林佳吾(神林佳吾法律事務所代表)
1980年東京生まれ。95年渡豪、2004年クイーンズランド大学経営学部・法学部、同大学大学院司法修習課程修了後、弁護士登録。以後12年以上にわたって訴訟を中心に応対

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