【特集】オーストラリアの不動産投資を解説 投資の基礎知識を学ぼう

オーストラリアの不動産投資を解説 投資の基礎知識を学ぼう

オーストラリアで「不動産投資」は、資産を築くための手段の1つとして関心を持たれているのではないだろうか。近年のシドニーやメルボルンといった人口増加が顕著な大都市の例と同様、今後も人を集める要素を包含する都市では不動産需要が高まると予想されており、不動産投資に興味を持つ人は多い。そこで、これから不動産投資を始めようと考えているビギナーに向けてまずは物件購入にスポットを当て、入門編となる基礎知識、メリットとデメリット、専門用語などについて紹介する。(文=堀千佐子)

取材協力=レイ・ホワイト・サーファーズ・パラダイス・グループ/グレッグ·ベル氏(ディレクター)、モト·ウォーターズ氏、ファイナンス・ブローカー/シュウ·ヤマナシ氏

不動産投資が注目される理由

不動産投資とは、利益を得ることを目的に不動産を購入し、そこからの家賃収入と不動産価値の上昇に伴う売却益を得ることである。オーストラリア人にとって、株式や為替などの金融商品よりも不動産、すなわち「家」はもっと身近で理解しやすい投資対象であると言われている。個人の資産ポートフォリオの中でも、不動産投資が大きな割合を占めている場合もある。

具体的に投資の収益とは、一軒家やユニット、店舗やオフィスなどを購入してレントと言われる家賃収入(キャッシュ・フローイン)を得たり、購入した物件の価値が上がった際に売却し、その差額で利益(キャピタル・ゲイン)を手にすることが挙げられる。現在は歴史的な低金利の時代にあって長期にわたり安定した家賃収入を得られるため、比較的投資リスクが低いと位置付けられている。更に不動産価値が上がると売却益も大きいため、新たに不動産投資を始めてみたいと考える人は多い。

オーストラリア不動産の動向について、ファイナンス・ブローカーのエキスパートであるシュウ・ヤマナシ氏からある興味深い話を伺った。その話とは、オーストラリアの主要都市の不動産動向を“プロパティー・クロック(不動産時計)”という時計に見立て、文字盤の上に置き換えると、針が指す時間によって現在の状況と、その前後の大局がつかめるというものだ。この不動産時計の針は1本で時間を指し、1周するのにおおよそ10年から15年掛かるという。針の進む速度は時間帯によって異なり、12時を不動産市場のピークと考え、加速状態で下落傾向が2時まで続き、2時以降は減速したまま下落傾向が底を打つ6時まで続く。6時以降は上昇傾向に転じるが、引き続き減速スピードのまま10時までゆっくり時間を掛けて上昇する。そして10時からは加速に転じて一気に上昇傾向がピークの12時まで続くという仕組みである。

オーストラリアの不動産時計
オーストラリアの不動産時計

シュウ氏の見解によると現在、時計の針が示す各都市の動向については、メルボルンとシドニーが2時から3時の減速の下落傾向にあるポジションにあり、パースは6時、アデレードは9時、ブリスベンは上昇傾向の11時から1時までの2時間の間を往復しているという。

統計局によるとオーストラリアの人口は2018年11月時点で2,500万人を超えており、50年までには1,000万人増の3,500万人に到達することが予測されている。このことから、雇用機会が多い大都市や、これから開発が予定される地域、あるいは暮らしやすく環境的に優れている都市などで今後もますます住宅需要が高まると考えられる。大手不動産会社レイ・ホワイト・サーファーズ・パラダイス・グループのディレクター、グレッグ・ベル氏によると、ブリスベンからメルボルンまでのコースト沿いの都市の不動産物件は、これからも大きな成長が期待できるという。その中でもバイロン・ベイやコフス・ハーバー、セントラル・コーストなど、特に東海岸ビーチ沿いのエリアは10~15年後には価値が上昇すると見込んでいる。

失敗をしないための不動産投資の心得

ビギナーにとって不動産投資は、他の資産運用に比べ「頭金」という初期投資が大きく、ローンを組む場合もまとまった金額を借り入れるため、やすやすと失敗に終わらせることができない。初心者の心得とも言える、必要不可欠な4つのポイントを以下に説明する。

  1. 投資の目的をはっきりさせる

    不動産では購入が「入口」、売却は「出口」と言われ、「出口」が何か明確な買い方をすることが重要だ。人によって投資のやり方や目的は異なるが、初心者にとって節税効果のある赤字投資は投資とは言えない。

  2. ファイナンスを整える

    自分の収入と資産が幾らあるのか、実際に生活するための費用は幾ら掛かっているのか、そしてローンやクレジット・カードなど負債は幾らあるのかを把握すること。自分の経済状況をしっかり認識することで、頭金や投資予算が見えてくる。

  3. 勝因はリサーチ次第

    人口の増加、人の流れ、産業の成長、都市の開発、交通の至便性、賃貸料や固定資産税などについて、統計局のデータやカウンシルのタウン・プランニング・サーチを利用したり、新聞や不動産雑誌、書籍を読んで、しっかりとリサーチを行うこと。先見性のあるエリアで自分が「住みたい」「買いたい」と思える物件を見つける。

  4. 投資は長期で待つ

    長期にわたって安定した家賃収入が得られると共に、市場の伸びに応じた売却益を出すには、最低でも5年から10年間の長期的な投資が必要とされ、15年を越えると売却益は大きくプラスに転じる。

投資物件を購入するまでの手順

ローンを組むと仮定した場合の投資物件購入までの主な流れは、下の表の通りである。その中でも重要なポイントは大きく2点に絞られる。契約条件とファイナンスだ。いくら良い物件を見つけても、買い手側の条件が不利であったり、ローン決済を遂行できなければ契約は成立しない。費やした時間と労力は全て無駄に終わってしまう。そのためには、早めの資金調達の手配と確かな契約アドバイスができる法律家が必要となる。

■投資物件購入の一般的な手順

①リサーチ(情報収集)
どの場所にどのような物件を購入するか、ローンの種類やどの金融機関を選ぶか、契約に当たっての弁護士、家屋査定をどの業者へ依頼するかなど、情報を集め検討する。

②プレ・アプルーバル準備
幾ら借り入れることができて、幾ら支払いをしていくのか、ローンを組むための事前の仮審査を行う。

③物件探し
インターネットなどを使って探し、オープン・ハウスに積極的に参加する。バイヤーズ・エージェントを利用する場合は、希望する条件を伝え物件を紹介してもらう。

④交渉
購入依頼のオファーを出して値段交渉や買い主側の条件を提示する。

⑤契約準備
交渉が成立すると売り主と買い主の弁護士が契約条件を確認して、内容を詰める。

⑥契約
条件付きの購入契約書を交わし手付金を支払う。この契約日からセトルメントまで通常約30~45日掛かる。

⑦ローンの申請
モーゲージ・ブローカーや銀行へローンの申請を行い、家屋査定が行われローン額が決定する。

⑧インスペクション/プレ・セトルメント
専門業者に依頼して、建物の不具合や問題、白アリの被害などがないかをチェックする。

⑨セトルメント
物件に異常がなく、ローンの手続きも問題なければ、弁護士による登記変更の手続き、金額の支払いをしてもらう。

⑩引渡し
物件に異常がなく、ローンの手続きも問題なければ、弁護士による登記変更の手続き、金額の支払いをしてもらう。

特にローンを組む場合は、物件探しを始める前もしくは同時に、銀行やファイナンス・ブローカーに連絡して、自分が果たして幾ら借りることができるのか、そして幾ら返していくことができるのかを事前に確認する「プレ・アプルーバル」(ローンの仮審査)を取る必要がある。この「プレ・アプルーバル」の審査は2週間ほど掛かり、有効期間は3カ月と決められている。公的調査機関ロイヤル・コミッションからの金融機関への規制が加わり、以前よりも査定が厳しくなって融資が制限される傾向にあるので、その分準備する頭金も増えるということを覚えておこう。

もしも、他州にわたっての物件を探す場合や、日本など海外から物件を探す場合は、「バイヤーズ・エージェント」を利用して、自分の予算、条件、希望を伝えて物件を探してもらうことができる。情報収集から値段交渉まで、買い手の代理人として働いてくれる。売買が成立した場合、金額やエージェントによって前後するが、購入費用の約2%を手数料として「バイヤーズ・エージェント」に支払う。それ以外に、永住権や市民権がない人が物件を購入する場合は、FIRB(外国投資審議会)が定めた新築物件のみとなり、FIRBへの申請手続きも必要となる。

不動産投資のメリットとデメリット

不動産投資を行うメリットは、まとまった額の家賃収入が得られることと、不動産価値が上がるとキャピタル・ゲインと呼ばれる売却益を生むことが挙げられる。その他に、不動産収入から必要経費を差し引き税額控除をするネガティブ・ギアリングと呼ばれる節税効果を挙げる投資家もいる。

ギアリングとは元々、投資のための出資と借入資本との比率を意味し、借りる額が大きければ、必然的に返す額も大きくなる。従って収入から借り入れ利息を含む全ての経費を差し引いた課税所得(taxable income)がマイナス(赤字)であればネガティブ・ギアリング、プラス(黒字)であればポジティブ・ギアリング、プラス・マイナス・ゼロの場合はニュートラル・ギアリングと言われる。なぜネガティブ・ギアリングの赤字状態がメリットとされるのか。簡単に説明すると、不動産投資の経費による損失分を大きくして投資家の課税所得を減らすことにより、税金の負担を減らし節税効果を果たしているのだ。

不動産投資の経費として控除可能とされる主な項目は下記の通りだ。この他にも多数、国税局(ATO)のウェブサイトで認められているレンタル・プロパティー経費がリストになっているので確認しよう。

  • ローン利息、借入れに掛かる諸費用
  • 保険費用
  • 減価償却費(Depreciation)、減価償却表作成費用
  • 土地代(Rate)
  • 不動産会社管理代行費用
  • 共同住宅やユニットの場合、ボディー・コーポレート管理費用
  • 修理費(購入2年目以降)
  • 水道費(Water Rate)
  • 備品代

しかし、ネガティブ・ギアリングはあくまでも赤字収支。マイナス分は持ち出し分として補わなければならない。収入を経費で抑えることで、税額を最小限にすることはできるが、経費として支払う額はその分大きいということを覚えておこう。そして、損失分を将来的に売却時のキャピタル・ゲインで補おうとしても、不動産価値の下落によるキャピタル・ロスが発生する恐れがあることも忘れてならない。

一方、デメリットしては、テナント不在で安定した家賃収入やキャピタル・ゲインが得られない場合が起こり得ることである。また、不動産投資には購入から運用、そして売却までにさまざまな費用が掛かることを理解しておこう。

購入の際には、契約に関わる弁護士などへ払うリーガル費用、所有権など調べるサーチ料、家屋の調査費用、印紙税などが掛かる。運用中は前述の一連の経費が掛かること、売却時には、売却を依頼する不動産エージェントへの費用、契約に関わるリーガル費用、キャピタル・ゲインが出た際の税金(キャピタル・ゲインズ・タックス)を支払わなければならない。長期で持ちこたえられる資金繰りで、収入と支出のバランスを考えた不動産投資を行うことが大切である。

■投資物件購入の一般的な手順

メリット デメリット
家賃収入:借り手がいる限り、安定した収入が得られる 空室:借り手が不在の間、投資に掛かるローン利息や費用は持ち出しとなる
キャピタル・ゲイン:物件価値が上昇して、売った際に利益を得ることができる キャピタル・ロス:物件価値が購入時より下がり、資産査定額が低下する
節税効果:投資物件に掛かる経費やローン利息が家賃収入から税控除される 経費:ローン利息の他、土地税、水道代、修繕費、管理費など経費が掛かる
形ある不動資産:自分の目で見て触れられる物であり、日本と違い地震などの影響がない 柔軟性に欠ける:至急に売却したくても、即現金に替えることができない
- 売買の際の費用:物件の検査費用やリーガル費用、印紙税やエージェントへ払う手数料などが高額

知っておくべき不動産用語(基礎編)

不動産売買に関する専門用語は、プロの不動産業者でも難しいと言われている。少しでもスムーズに不動産投資を始めていくために、知っておくと役立つ専門用語を場面に分けて紹介する。

セトルメントまで

  • プレ・アプルーバル(pre-approval):ローンを借り入れる予定の場合に、金融機関から幾ら借り入れることが可能かどうかの指標を示すもので金融機関が発行する。収入や生活費など経済状態を証明する証拠書類が必要となる。3カ月間のみ効力を持ち、その額を借りられるという保障はない。
  • デュー・ディリジェンス(due diligence):契約を結ぶ前に、購入しようとしている物件について、さまざまな方向から事前の調査を行うこと。
  • バリュエーション(valuation):不動産の価値を査定すること。資格を持ったバリュアー(valuer/不動産鑑定士)が執り行う。
  • ビルディング・インスペクション(building inspection):物件購入を決定する前に、資格を持った専門の調査士へ依頼して、物件の構造上の問題や白アリ、水漏れなどの欠陥がないか調査をすること。
  • タイトル・サーチ(title search):売り主が物件の所有権を持っているかどうか、物件に法的制限が掛かっていないかなどの確認を行うためのもの。弁護士及びコンベイアンサーに依頼する。
  • コンディショナル・オファー(conditional offer):買い手側が条件付きで物件の購入希望を申し出ること。売り手がこの条件を了承した時点で、条件に沿って購入を進めることができる。
  • サブジェクト・トゥ・ファイナンス(subject to finance):クーリング・オフ後、契約が執行されるため、もしもローンが組めなかったなどファイナンスが成立しなかった場合に備えて、ファイナンスの条件を契約書に盛り込むことをいう。
  • クーリング・オフ・ピリオド(cooling-off period):いったん売買契約書にサインをした後でも、数日間であればキャンセルできる期間。契約書内容や州によって規定が異なる。オークションの場合はクーリング・オフはない。
  • コントラクト・オブ・セール(contract of sale):売買契約書。購入価格やセトルメントの日時、クーリング・オフや修理必要箇所、確約されている設備や物件の備品などが明記されている。内容を見直し用語を理解するために弁護士などに依頼することが望ましい。
  • オフ・ザ・プラン(off the plan):プラン上の完成前の物件を購入すること。
  • タイトル・ディード(title deed):不動産の所在地、所有権を証明する法的書類。物件の引渡しの際に必要とされる。
  • コンベイアンサー(conveyancer):不動産売買に関わる、法律の手続きから不動産代金の受け渡し、最終のセトルメントまで代理人として契約の手続きを行う人。弁護士を同様の仕事を受け持つが、費用が弁護士よりも安い。
  • ベンダー(vendor):不動産売り主のこと。
  • スタンプ・デューティー(stamp duty):不動産購入時に払う印紙税のこと。購入価格によって税金が分かれていて、州によって多少異なる。
  • セトルメント(settlement):売買が最終的に決済されて、物件の所有権が売り主から買い主へ譲渡されること。

    ローンを組む

  • バリアブル・レイト(variable rate):時と共に金利が変わる変動金利。
  • フィックス・レイト(fix rate):通常1~10年の期間で、固定された金利が付く。変動金利よりも金利が低いことが特徴。
  • インタレスト・オンリー・モーゲージ(interest only mortgage):インタレスト・オンリー・ローンとも言う。ある一定の期間、借りた額の利息のみを返済する融資のこと。通常、最高5年間までとされている。
  • オフセット・アカウント(offset account):借りている変動金利ローンと連動している口座。オフセット口座にある金額に応じて金利を節約できる。オフセット口座にある額が、ローンの残金からマイナスされ、その分の利息が減る計算となる。
  • リドロー・ファシリティー(redraw facility):毎回の返済金額以上の返済を行った際、その余分に返済をした同額を引き出すことができる機能。ローンの種類によってこの機能があるものとないものがある。
  • リファイナンス(refinance):ローンの組み換えや切り替えを行うこと。
  • ディスチャージ・フィー(discharge fee):借り入れしているローンを終了するには、完済、リファイナンス、売却などの場合がある。変動型金利ローンの場合、管理手続き費用として300~400ドルの費用が掛かる。別途、固定型金利ローンの中途解約は高額のペナルティーが課せられるので注意が必要。
  • ドローダウン(drawdown):ローンの借り入れが承認され、その後セトルメント当日に売り主の口座に借入金の全額が振り込まれること。
  • レンダーズ・モーゲージ・インシュランス(LMI):頭金を2割以上用意できず、8割以上を銀行及び金融機関から借りなければならない場合、借り手が返済不可能になった際、金融機関側が負債を負うことがないように入る保険で、借り手が借りる際に保険料を支払う。

    その他

  • エクイティー(equity):返済が残っている借り入れ金額や諸経費を差し引いた不動産物件の純資産額のこと。
  • キャピタル・ゲインズ・タックス(capital gains tax):投資不動産を売却して利益が出た際に払う税金。
  • ディプリシエイション(depreciation):減価償却費のこと。

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