「学校付き聖職者制度は憲法違反」

連邦高裁が連邦政府敗訴の判決

 公立学校に宗教教育というのは敗戦後政教分離を徹底させられた戦後の日本人にピンと来ないことかも知れないが、政教分離を原則とする世俗国家オーストラリアでは公立学校付き聖職者制度というものがある。税金から費用が支払われる。トニー・アボット保守連合政権はオーストラリアの政教分離の理念をさらに後退させ、これまで聖職者と並行して公立学校が選べていた「カウンセラー制度」を廃止し、「学校付き聖職者制度」にのみ財政から支出する計画だった。

 ジョン・ハワード前保守連合政権時代に制定されたこの制度は、ケビン・ラッド、ジュリア・ギラード労働党政権になってもキリスト教信者票を失うことをおそれた政権はこの制度に手をつけなかった。しかし、QLD州で子供を公立学校に送っていた父親ロン・ウィリアムズさんがこの制度に挑戦、6月18日、連邦高裁が「全国公立学校付き聖職者制度は違憲」の判決を下した。

 ロン・ウィリアムズさんは労働党政権期の2012年にも訴えを起こしており、その時も、「同制度の政府交付金支出は合法性に欠ける」と、ウィリアムズさんの勝訴だった。しかし、判決後、連邦政府は直ちに新法を制定し、制度資金を合法化した。今年5月の予算案では保守連合がさらに上増しし、今後4年間に2億5,000万ドル近い額を公立学校聖職者制度に計上している。

 裁判の争点になったのは、連邦政府が問題の制度で州政府を飛び越えて直接地域団体に資金を支払うことができるかどうかで、アボット連邦政府は、他のケースでは、「州の責任」として連邦資金を拒否しており、一貫性に欠けている。各州政府は、「連邦政府が州政府の権限を飛び越えて州政府の管轄に介入している」として、両裁判でウィリアムズ氏を支持してきた。

 この判決に対して、「全国学校付き聖職者連合」は、「2012年の裁判では、高裁は資金の出方について違法判決を出したが、公立学校付き聖職者制度そのものは問題がないとした」として、今後、連邦政府が再び新法で合憲化することを期待しており、アボット首相も、「判決を検討し、制度持続の道を検討する」と発言している。

 保守連合政権は、無宗教の有資格者による学校カウンセリング制度予算を廃止しており、宗教が公立学校に介入するという問題は今後も尾を引くことになる。(NP)

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